シネマミーハーらくがき帳 1999〜2003
なんというか、映画に嵌まっていた頃があり、雑文を書きまくっていた。
シネマ・グラフィティ・ノート 2001年 その3
*33<407>「ザ・セル」
ターセム監督。ジェニファー・ロペス。ヴィンス・ヴォーン。ヴィンセント・ドノフリオ。
「ザ・セル」は今年の4月に見ており、2回目です。映像の美しさは目を見張ります。
それに、物語の展開が中盤まで本当にムダがありません。でも、一番の見どころの容疑者の精神世界に入り込んでから冴えません。
なんとも、勝手なところで一人楽しんでいる感じなのです。でも、衣装や色彩感覚を楽しむだけでも、面白いですね。
*34<408>「ムルデカ17805」
藤由紀夫監督。山田純大。保坂尚輝。榎木孝明。六平直政。津川雅彦。夏八木勲。藤村志保。
蘭領ジャワに侵攻した日本軍。これは実は欧米に対するアジア解放の戦いだったのだそうだ。圧政を敷くオランダに対して、日本は現地の民衆のことを思いやっていたのだそう。彼らは日本の敗戦後も民族主義者たちとともに戦い独立を導いたのだとか。本作はそうしたプロパガンダの映画である。
ひどい、の一語に尽きます。インドネシア民衆の自発性を全くバカにしているところが不快です。そして義勇兵としてゲリラとともに武器を取ったとしたら、やはり違反でしょう。もちろん私はナショナリストでもありますから、日本人の心に打たれます。
だけど、こんなストーリーを作っては卑怯です。アジアを解放するという高貴な志を受け継ごうというなら、インドネシア民衆をこういう形で政治利用してはならないはずです。ちなみにムルデカとは「独立」という意味だそうです。
*35<409>「ガールファイト」
カリン・クサマ監督。ミシェル・ロドリゲス。サンティアゴ・ダグラス。ジェイミー・ティレリ。
2000年サンダンス映画祭グランプリ作品。
高校生のダイアナは学校では授業も友達も気に入らない。問題生徒の彼女はひょんなことから弟の通っているボクシングジムへ。そこで、内なる闘争心に火がついた。親の目を盗んで、女だてらに格闘技にのめり込んでいく。次第に訪れる達成感。ジム仲間の男の子にも恋をする。そして、ニューヨークのアマ大会で勝ち抜き、決勝戦で対決するのは、皮肉にもボーイフレンドだった。
逃げるな! 運命のゴング鳴る。
ファイティング・スピリッツがストレートに響いてくる快作。
監督の息遣いが伝わってくる。
関係ないが、第9回ナンバー・スポーツノンフィクション新人賞作を読んだばかり。早川竜也「SOUL BOX あるボクサーの彷徨」という作品だ。これはろうあのハンディを背負った板谷出支のファイト魂を追っている。ボクシングというのは、物語を背負っているようだ。
*36<410>「百合祭」
浜野佐知監督。山崎邦紀脚本。吉行和子。ミッキーカーチス。正司歌江。白川和子。
原作は桃谷方子。99年の北海道新聞文学賞受賞作品の映画化である。
主役は老いを迎えた女性たち。彼女たちはアパートで寂しく暮らし、静かに死を待っているだけだった。だが、そこに元演劇青年の老人・三好さんがやってくる。三好さんはちょっと調子が良く、だが誰にもわけへだてなく接する。そうしたうちに彼女たちの<性>がもういちど動き始める。
要所要所に笑いあり、それでいてほろっと来る演出は見事。出演者の老女たちも個性的に描かれている。これまでタブー視されてきた高齢者の性、性を通じたコミュニケーションをしっかりと掴みだしている。
残念ながら、これは完成試写会での感想であり、劇場公開はまだ決まっていないという。
*37<411>「ベティ・サイズモア」
ニール・ラビュート監督。レニー・ゼルウィガー。モーガン・フリーマン。クリス・ロック。
カンザスの田舎でろくでなしの亭主にうんざりしているベティ。それでも「昼メロ」のハンサム医師に夢中になってウエートレスをしている。ある日、麻薬をくすねた夫を2人組の殺し屋が惨殺する。偶然それを目撃したベティはテレビドラマと現実の境を忘れてしまう。そして、青年医師を追ってハリウッドに旅立つ。2人組に追われているとも知らず、ドラマの一員になりきってしまうベティ。目が覚めたとき、危機が迫っていた。
レネー・ゼルウィガーはなんか今回はいいですね。そして、モーガン・フリーマン。いつしか純粋な彼女に惹かれていく殺し屋が面白いです。荒唐無稽(むけい)なドラマがそれでも切実なのは米国にはいっぱいの「ベティ」がいるからでしょうか。
そしてジョン・C・リチャーズの脚本は女の自立を高らかにうたいます。アホな亭主やハンサム男なんかクソだ。君は一人で生きられる。不思議な気分になる映画です。
*38<412>「JSA」
パク・チャヌク監督。ソン・ガンホ。イ・ビョンホン。イ・ヨンエ。キム・テウ。
朝鮮半島を分断する38度線。そこは共同警備区域(ジョイント・セキュリティ・エリア)。そこで韓国軍兵士が拉致され、北朝鮮兵士2人が殺害されるという事件が起きた。真相を調査すべく中立国スイスから一人の女性将校ソフィーがやってくる。だが、双方の証言は食い違い、すべては藪の中。
彼女が自分の出自が北朝鮮の亡命将校の娘であることを知るころ。容疑者たちは次々と命を断っていくのだ。なんで彼女は来たのだろうか? こんな演技は大根っぽくで、災いの神が主役の映画なんてどうなのだろう。
韓国軍兵士と共和国兵士がまるで北野武映画のように戯れるのはいい。だけど、彼らの友情を見守ってやらず、彼らを破滅に追い込む主人公なんて変だ。素材が素材だけに批判しづらいが、この映画は失敗作に近い。不遇の共和国の士官(ソン・ガンホ)を中心にすれば、もう少し面白くなったろうに。メロドラマのようなテーマ曲もいただけない。
*39<413>「リトル・ニッキー」
スティーブン・ブリル監督・脚本。アダム・サンドラー。パトリシア・アークェット。ハーベイ・カイテル。
アダム・サンドラーが地獄の王子になって活躍するコメディです。2人の兄貴たちは魔王があと一万年もその座を譲らないというので、怒り心頭。地上に降りていって悪魔パワーをまさに悪用して暴れまくります。ピンチの魔王を救うため、ニッキーは後を追います。そこで、しゃべるブルドッグとコンビを組んでどたばた劇が展開します。
それにしても、アホな映画です。ここまでアホでいいのかと言うほど徹底します。それが好きな一部の人を除けば大半の人はアホらしいと感じるでしょう。
*40<414>「ザ・ダイバー」
ジョージ・ティルマン・Jr監督。ロバート・デ・ニーロ。キューバ・グッディング・Jr。シャーリズ・セロン。
米国海軍で最初の黒人ダイバーとなったカール・ブラシアの伝記映画だそう。
海軍は良い伝統もあれば悪い伝統もある。だが、一番大切なものは名誉だよ。
これって、軍事宣伝映画ですよね、やっぱり。様々な差別や困難に打ち克っていく姿は感動的ですし、その差別と翻って優しさの象徴である古参ダイバーもわかりやすい。
だけど、60年代から70年代の米国海軍って、どうなんでしょう? 核弾頭を公海に落としてのんびり探している姿なんて、いかせません。シャーリズ・セロン。好きなんですが、いい人なのか変な人なのか、この役は。
*41<415>「メトロポリス」
りんたろう監督。大友克洋脚本。名倉靖博総作画監督。手塚治虫原作。
素晴らしい画像だ。この世のものとは思えないというのは大げさか。
未来都市メトロポリス。そびえ立つジグラット。そこに臓器売買のマッドサイエンティストを追ってやってきた2人。ヒゲオヤジとケンイチ。ファシストのレッドシャツ党が闊歩、地底ではゲリラたちが抵抗している。その中で産み出された人造人間ティマ。彼女は人類とロボットの未来を決める超人だった。
仕組まれたプログラムや策略とは別に信頼を深めるケンイチとティア。だが、ティアは最後に苛酷な運命にさらされる。昨年見た「人狼」のリリシズム。本多俊之のジャズはこれに通じる。だが、残念ながら物語は届かない。ロボットにも人間にも希望を見いだせない時代の反映だろうか。
*42<416>「マレーナ」
ジュゼッペ・トルナトーレ監督。モニカ・ベルッチ。ジュゼッペ・スルファーロ。
音楽はエンニオ・モリコーネ。
「ニュー・シネマ・パラダイス」「海の上のピアニスト」の名匠の最新作。イタリア・シチリア島を舞台に少年レナートが抱いた淡く切ない恋。人妻マレーナは町に越してきたものの夫は戦争に取られた。ラテン語教師の父親は耳が悪い。余りに美しすぎるその姿は男たちの視線と羨望を集め女たちの嫉妬を買う。
戦争は彼女の運命をもてあそぶ。彼女は身を落とし、戦争の終結は女たちによるリンチを招く。だが、死んだはずの夫は戻ってきて、彼女を捜し出す。広場を海岸をいつも一人で歩いていた彼女は初めて夫と歩く。
少年は「あなたを僕が守る。オトナになるまで待って」と誓う。だが、戦争や大人の世界の前に無力だ。それでも少年は必死に彼女を見守る。なんという純情物語か。音楽は美しい。が、うるさい。
*43<417>「デンジャラス・ビューティー」
ドナルド・ピートリー監督。サンドラ・ブロック。マイケル・ケイン。ベンジャミン・ブラット。
ファイト満々、男勝りのFBI女性捜査官。爆弾犯人の脅迫状がミス・コンテストを標的にしていた。そこで、内部潜入のため、コンテストに出ることになったから、さあ大変。 男みたいな女がいかに、レディに仕上がるか。そこが見物です。一方、怪しげなウブな代表者や主催女性が彼女の回りをうろつく。真犯人は? そんなことは結局、どうでもいいのです。サンドラ・ブロック、ちょっとパワフルすぎます。そして、自分をゴージャスといいます。なんか叶姉妹を連想しちまった。
*44<418>「みんなのいえ」
三谷幸喜監督・脚本。唐沢寿明。八木亜希子。田中邦衛。田中直樹。
「ラヂオの時間」で異才ぶりを遺憾なく発揮した三谷幸喜。
今回は人間にとっては一生に一度の大事業ともいうべき家づくりに注目。モダンなインテリア・デザイナーと昔気質の大工の棟梁の対立を軸にその間で一喜一憂する若夫婦を狂言回しにしてコメディが展開する。
ツボを抑えた笑い、コントラストの妙と、よくできている。それ以上に期待通りの演技をみせる田中邦衛が最高。まあ、最後は「お互いにいい奴だなあ」という分かりやすいオチになるが。ココリコの田中君の2人の間での嫉妬もうまい。
*45<419>「ハムナプトラ2 黄金のピラミッド」
スティーブン・ソマーズ監督。ブレンダン・フレイザー。レイチェル・ワイズ。ジョン・ハナ。アーノルド・ボスルー。
「THE MUMMY」のリターンです。
今回は邪悪神のしもべになったスコーピオンとその軍隊がカギ。例によって呪術師のイムホテップが大英博物館の館長の手で甦る。彼らの試みを阻止しようとするおなじみのフレイザー&ワイズ。コンビ。これに息子も加わりエジプトを舞台に激しいバトルと冒険が繰り広げられる。
前作「ハムナプトラ」に比べ、おいしいところだけをいただこうという野心作。CGも派手に使われ、美しい場面もありますが、なんか軽いんですよ。砂のように。最後に愛は勝つ、というのが教訓です。
*46<420>「ウェディング・プランナー」
アダム・シャンクマン監督。ジェニファー・ロペス。マシュー・マコナヘイ。ブリジット・ウィルソン・サンプラス。
葬儀屋さんもいることだし、ずーっと冠婚葬祭にはプロがいると思ってきた。案の定いるんだなあ。結婚屋さんが。こんなコーディネートあんどカウンセラーは日本にもいるのかしら。いて欲しくないなあ、というのが、私の感想です。
あたしゃ結婚式というのはきらいだけに、こういう訳知りは困るんです。もっとも主役のジェニファー・ロペスは一生懸命です。だから憎めないけれど、設定も派手な外面、地味な私生活といいのですが。迷惑な虚栄の世界ですよ。これは。確かに結婚のためのいろいろな道具立ては勉強になりますが。豊かさの反映なのかもしれませんが、あたしゃダメですね。
*47<421>「沈黙のテロリスト」
アルバート・ピュン監督。トム・サイズモア。スティーブン・セガール。デニス・ホッパー。
「沈黙の−」とタイトルがついていますが、主人公はセガールじゃありません。爆弾事件で妻と子を失い、捜査中に相棒を失った刑事です。彼が「芸術的な」爆弾犯・ミケランジェロ一行と戦いながらいかに自己を取り戻していくかです。
セガールはプロの爆弾処理班として彼を助ける役です。もっとも脚本の出来が悪いのか、主人公へのシンパシーがわきません。同じように元IRAにしても、夫を失った謎の女にも今一つ背景がありません。
とりあえず爆弾が意味もなく次から次と爆発する迫力満点のシーンとセガールの相変わらずのスーパーパワーぶりが目立ちます。まあ、楽しめますが。
*48<422>「クロコダイル・ダンディー in L.A.」
サイモン・ウィンサー監督。ポール・ホーガン。リンダ・コズラウスキー。サージ・コックバーン。
原始のパワーが文明と遭遇して起きるズレを笑いのめすおなじみシリーズ。
ダンディーとスー、それにジュニアのマイキー。ひょんなことからロスにある新聞社の仕事のために移住した3人。そこで相変わらずワイルドぶりを発揮するダンディー。スーの前任者の不審死にからみ、映画会社で何かが起きている。早速、ロケ現場に乗り込むダンディー。私立探偵として事件解決ができるか?
一応、予想された範囲内の笑いばかりだが、それでも笑えるのは一種の伝統芸(ネタ)的なものか。
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