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北海道文学を中心にした文学についての研究や批評、コラム、資料及び各種雑録を掲載しています

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シネマミーハーらくがき帳 1999〜2003
 なんというか、映画に嵌まっていた頃があり、雑文を書きまくっていた。

 シネマ・グラフィティ・ノート 2002年 その6  

*76<546>「たそがれ清兵衛」
山田洋次監督。真田広之。宮沢りえ。田中泯。小林稔侍。丹波哲郎。
 藤沢周平のいくつかの作品を映画化した。
 ぼけた母親と二人の娘を持ち、妻には先立たれた貧乏武士。仕事が終わるとさっさと帰るため、ついたあだ名が「たそがれ清兵衛」。世の中は徳川の時代が変わろうとし、藩主の死去でお家騒動の権力争いがあろうとも愚直に生きている。その男が出戻りの幼なじみの女に出会い、そして、藩命により反対派の武士を斬ることになったことから、運命は大きく変わる。といっても、彼の愚直さは変わらないのだが。
 山田・朝間義隆コンビは相変わらずヒューマニズムな脚本を書いている。でも、何かもの足りない。状況現代に似せようとするから、つまらなくなってしまったか。宮沢りえは、天女のような美しさ。真田君は相変わらず肉体派ぶりを披露して、いささか食傷。
 
*77<547>「9デイズ」
ジョエル・シューマッカー監督。アンソニー・ホプキンス。クリス・ロック。ガブリエル・マクト。
 ポータブルの核爆弾の売買。それを阻み、手に入れるCIAの作戦が進行していた。ところが、かなめの男が打たれて死んでしまう。やむなく見つけてきたのが、彼と生き別れていた双子の弟。取引期限の9日間に男を替え玉に仕立て上げる。
 例によって裏切りあり、ガールフレンドを人質に取られたりのドタバタ。そしてにぎやかなアクションが続く。でも、なんか一丁上がり的な安易さが気になる。

*78<548>「OUT」
平山秀幸監督。原田美枝子。倍賞美津子。室井滋。西田尚美。香川照之。間寛平。
 桐野夏生原作。
 家庭崩壊、借金苦、暴力亭主、老人介護。それぞれに最悪の人生の中にいる女たち。ひょんなことから身重の妻が暴力夫を絞殺したことから、女たちの苦境脱出の戦いが始まる。それは死体をバラバラにする完全犯罪。弁当会社の流れ作業に慣れている女たちは、弁当でも詰めるように死体を刻み梱包する。いつの間にか生きている実感を手にするが、やくざが絡みその夢も次第に崩壊に向かっていく。それでも彼女たちは見果てぬ夢へ進んでいくのだ。
 思ったよりも明るい映画。元気な女は楽しい。でも、最初から最後まで妊娠妻のアホらしさ。これですべては崩れてしまっている。

*79<549>「トリプルX」
ロブ・コーエン監督。ヴィン・ディーゼル。アーシア・アルジェント。サミュエル・L・ジャクソン。
 これは、007を超える痛快アクション・スパイ映画である。ともかく冒頭から最後まで、スカイダイビングありスケートボードあり、モトクロスあり。それがなんとも快感なのである。007の向こうを張って、特別仕様の武器もてんてこ盛り。だが、ボンドのように横着じゃなく、体張って任侠の世界を生きてます。
 物語は、悪には悪をとスカウトされたアウトローのトリプルX。ロシア軍からあぶれたアナキストグループが企てる生物兵器によるチェコのプラハ壊滅作戦を阻止する。そういえば、「9デイズ」でもプラハが舞台だったが、この百塔の街はいまや映画のメッカらしい。いずれにしろ、このニューヒーロー映画。いけてます。

*80<550>「チェンジング・レーン」
ロジャー・ミッチェル監督。ベン・アフレック。サミュエル・L・ジャクソン。トニ・コレット。シドニー・ポラック。
 財団の利権をめぐる裁判に勝つための書類を持って車を走らせるやり手の青年弁護士。子供をつれた妻との離婚を食い止めるためローンでアパートを買う手続きをし調定に向かうアル中の黒人。その2人が急いでいるあまりに道路の車線を変更したために接触事故を起こしてしまった。弁護士は小切手を渡して先を急ぐが、貴重な書類を忘れてしまう。そこから人間の醜い姿が次々と確執のなかに繰り広げられる。
 法律家が示す正義とは何か。財団がいかに法の抜け穴の上に偽善の花を咲かせているか。ニューヨークで法律家として活きていくには相手の弱みを握ることだ。黒人は家族を回復する。弁護士は魔のときを克服して洋々たる未来が待っている。意外というか、アメリカ映画らしい結末。

*81<551>「TRICK 劇場版」
堤幸彦監督。仲間由紀恵。阿部寛。伊武雅刀。山下真司。芳本美代子。野際陽子。
 監督は「ケイゾク」でメガホンを撮った人だそう。そういわれると、ちょっと風変わりなおもしろさが共通しているか。こちらもテレビで人気の作品だったそうだが、残念ながら見ていない。天才奇術師(女性)と天才物理学者がさまざまなトリックを見破っていく仕掛けらしい。
 今回は糸節村で神様が蘇って大騒動になるとの伝承を青年団から吹き込まれる。奇術師の山田奈緒子は神様の身代わりとなるように要請される。いざ村に行ってみると様々な神様がきていた。彼らとの本物合戦、そして村長らの無理難題、徳川埋蔵金探しやらさまざまな事件が絡み合う。スケールの大きな共同幻想に対して、人間のすることはせこい。
 そのせこさを笑って楽しむ映画のようだ。
 
*82<552>「Dolls(ドールズ)」
北野武監督・脚本・編集。菅野美穂。西島秀俊。三橋達也。松原智恵子。深田恭子。武重勉。
 世界の北野が「BROTHER」に次いで放つ愛の物語。今回はおなじみの痛い暴力シーンは極力排除されている。かわりに、日本の四季がどこまでも美しく描かれる。そして人形浄瑠璃が最初と最後を飾り、「HANA−BI」以降の世界の中の日本を意識した作画となっている。
 映画には3つの純愛の物語が描かれる。一つは裏切ったことによって自殺未遂で気の触れた女の子を連れてあるく青年。二つは土曜日には弁当を作って待っているという娘を置き去りにした、やくざの親分。三つは再起不能になったアイドルのために、自ら目をつぶす青年。菅野美穂−西島秀俊の二人は運命の赤い糸を模したロープでつながれて歩く。三つの愛はそれぞれ報われない結末で終わる。
 いずれも<死>が待っているのは、いかにも北野流である。「あの夏いちばん静かな海」の言葉にならぬ思いがここではリフレインされ、転調している。この作品は上映前からすこぶる不評だ。しかし、決してそんなことはない。北野武らしい映画だ。素人っぽさが出ているので、それが不満に見えたとしても。
 純愛は貫くことに意味があるが、報われるとは限らない。運命に操られているだけ。ちょうど、親鸞が<わがこころのよくて殺さぬにはあらず>と説いたように関係の絶対性が、そこには露出している。少なくとも傑作ではないが、佳作である。

*83<553>「凶気の桜」
薗田賢次監督。窪塚洋介。高橋マリ子。原田芳雄。江口洋介。RIKIYA。須藤元気。
 渋谷の町で堕落した日本人の根性を立て直すべく暴れるネオ・トージョーの3人組。リーダーの山口はナショナリストとしてイデオロギーを磨いている。しかし、やっていることは所詮、暴走族と変わらない。そこに伝統右翼が接近してきて、彼らは結局、抗争のサクラに使われ破滅していく。
 日本日本と言っている右翼の親玉が在日朝鮮人だったり、インテリ・ヤクザがいかにろくでもない者かをうまく描いている。和太鼓に日の丸を重ね、そして和製ヒップホップで時代を歌う。任侠映画の現代版は、理屈がうざい。ナショナルなものが状況を擬似的には射つことはある。だが、そこに普遍性はない。

*84<554>「ロード・トゥ・パーディション」
サム・メンデス監督。トム・ハンクス。ポール・ニューマン。ジュード・ロウ。
 米国版の子連れ狼。だそう。
 アイリッシュ・マフィアの用心棒をしているサリバン。父親がいないため、ボスを父親と思い渡世に励んでいる。しかし、ボスの実子と一緒の殺しの現場を息子マイケルに見られたことから悲劇が始まる。ボスの実子はサリバンを陥れ、妻と下の子を殺す。辛くも生き延びたサリバンとマイケルは四面楚歌の中で復讐の道を進む。
 男はつらいなあ。結局、「凶気の桜」の窪塚君も殺されちゃってるし。任侠道は救いがないなあ。

*85<555>「ショウタイム」
トム・デイ監督。ロバート・デ・ニーロ。エディー・マーフィー。レネ・ルッソ。フランキ・R・フェイズン。
 ロサンゼルス警察でしがないパトロール警官をしているエディー・マーフィー。いっぽう、28年間の刑事人生で楽しいことなど何もなかったという刑事のロバート・デ・ニーロ。この2人が警察の汚名を返上するために、コンビを組み、テレビ実録番組に出演することになった。その名も「ショウタイム」のプロデューサー役はレネ・ルッソ。視聴率をとるために、2人を大衆に親しまれる刑事コンビに仕立てあげようとする。
 目立ちたいことが好きなエディーと地道な捜査こそ命のデ・ニーロ。そんな2人が侃々諤々とやりながら、最後は名コンビになるのがこの映画のみどころ。最初から、そんな結末が予想されながら、2人の演技力に引き込まれてしまう。なんか、ジャッキー・チェンとクリス・タッカーの「ラッシュ・アワー」「ラッシュ・アワー2」 みたいだな。NG集もあるし。

*86<556>「ピーターパン2 ネバーランドの秘密」
ロビン・バッド監督。ドノヴァン・クック共同監督。テンプル・マシューズ脚本。
 ディズニー漫画です。
 大人にならず不思議の世界で暮らしているピーターパンと妖精ティンカーベル、ロストボーイズ。第2次大戦下のロンドン。ウェンディの娘ジェーンは夢見ることも信じることも忘れていた。ある日、フック船長がジェーンを誘拐してネバーランドに連れ出した。ピーターパンをやつけようとする作戦だった。
 ジェーンは大人にならないピーターパンにうんざりするが、最後は一緒に戦って大切なものを発見する。よかった。よかった。とりあえず、それだけのアニメです。 

*87<557>「ハリー・ポッターと秘密の部屋」
クリス・コロンバス監督。ダニエル・ラドクリフ。ルパート・グリント。エマ・ワトソン。ケネス・プラナー。
 おもしろいおもしろいと妙な人気だが、映画的にはいまいち。だいたい2時間40分、長いよ。
 どうもいじめ役やらかたき役やらが、ハリーの周りにはあふれているらしい。秘密の部屋の陰謀もなんか、すがすがしさがない。第1作の 「ハリー・ポッターと賢者の石」 のほうが、新鮮だったか。

*88<558>「とっとこハム太郎 幻のプリンセス」
河井リツ子原作。出崎統監督。ミニモニ。
 ハム太郎が砂漠のお姫様を救いにハムちゃんずと出かける。そこで、楽しくもにぎやかな大活躍。論評は必要ないす。

*89<559>「ゴジラ×メカゴジラ」
手塚昌明監督。釈由美子。宅麻伸。中尾彰。水野久美。
 今回のゴジラは1954年のデビュー作を意識した作品だ。なにしろ海底に沈められたゴジラの骨格を回収して最新のロボット工学でメカゴジラ(機龍)を作ってしまう。そして、そのクローンゴジラでゴジラを倒そうというのだ。パイロットに釈由美子が扮する。自衛隊が出ている場に警視庁のパトカーが来たり。自衛隊の指揮を科学技術大臣がとったり。間抜けなところがいっぱいある。
 なんか物足りない。過去の「ゴジラ2000ミレニアム」「ゴジラ×メガギラス G消滅作戦」「ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃」に比べてもかなり落ちる。

*90<560>「K−19」
キャサリン・ビグロー監督。ハリソン・フォード。リーアム・ニーソン。ピーター・サースガード。
 1961年、米ソ冷戦下で起こった秘めたる緊迫の物語。ソ連の原子力潜水艦は未完成のまま航海に出た。案の定、放射能漏れ事故を起こす。艦長はソ連の機密と乗員の安全の狭間で、ぎりぎりの選択をする。っていうか、それ以上の内容は全くないのだ。
 ハリソン・フォードとリーアム・ニーソンの対立にしても紳士的。英雄的な乗員たちの姿も、なぜパニックに至らないのかもわからない。物足りない潜水艦クライシスである。

*91<561>「マイノリティ・リポート」
スティーブン・スピルバーグ監督。トム・クルーズ。コリン・ファレル。サマンサ・モートン。
 2054年の未来社会。そこでは、プリコグという3人の予言者によって犯罪の未然防止が図られていた。すなわち3人の予知能力によって、まだ起きていない殺人事件の犯人を逮捕してしまうのだ。だれもがその機能を完璧と思っていた。ただ、自分が犯人にされるまでは−−。主人公の警官は自分にかかった容疑を「冤罪」として逃げる。その過程で3人の予言が一致しないときがあり、少数意見がマイノリティ・リポートとして残っていることを知る。
 真相を探っていくうちに、案の定、システムの責任者が陰謀に加担していることを知る。予想した颯爽とした未来社会ドラマとは反対の人間くさい心理劇である。しかも、<目>に対する拘りが異様なほどにあふれている。おまえが見ているものは、真実か? と問うているかのように。おもしろいか、と言われると、おもしろくない。では、だめな映画か、と言われると、そうではない。不思議なスピルバーグである。

*92<562>「犬夜叉 鏡の中の夢幻城」
篠原俊哉監督。高橋留美子・原作。声・山口勝平。雪乃五月。
 宿敵・奈落を倒した犬夜叉とかごめたち。ところが、あらたな敵かぐや姫が現れる。かぐや姫の野望と戦ううちに奈落の陰謀も明らかになる。最後に勝つのは愛である。いろいろな伏線が楽しい。

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