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北海道文学を中心にした文学についての研究や批評、コラム、資料及び各種雑録を掲載しています

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シネマミーハーらくがき帳 1999〜2003
 なんというか、映画に嵌まっていた頃があり、雑文を書きまくっていた。

 シネマ・グラフィティ・ノート 2003年 前期  

*1<563>「ギャング・オブ・ニューヨーク」
マーティン・スコセッシ監督。レオナルド・ディカプリオ。キャメロン・ディアス。ダニエル・デイ=ルイス。リーアム・ニーソン。
 期待を持たせての超大作。なにしろ、2001年9月11日のニューヨーク・テロで公開が遅れたとの話。「タクシー・ドライバー」の巨匠と「タイタニック」の若者の顔合わせも前評判を呼んだ。さて、そんなこんなが大きすぎて映画のポイントがなんだったか見失いそうだ。
 1861年。南北戦争のさなかのニューヨーク。町は混沌の中にあった。徴兵制を急ぐ連邦政府とそれをせせら笑う大衆。そして、最底辺にはネイティブとデッドラビットという2種類のギャングたちがうごめいていた。
 青年は父をたおされたデッドラビット組織の末裔。今はボスに収まっているネイティブの親玉の命を狙っている。復讐の時を待っている青年の前には、ボスとも交渉のある女が現れた。燃え上がる恋の一方、対決の時は迫る。だが、その戦いに決着を付けるのはどちらでもなく、連邦政府の公暴力だった。地を這う大衆がいたことを忘れて、権力は町を作り上げていく。
 映画はテーマが散漫になっているが、常に置き去りにされる大衆の血を公暴力に対峙する形で描いている。これは、一種の残侠伝である。アメリカという国家をひっぱがせば顔を出す暴力の地下水脈である。

*2<564>「シベリア超特急3」
水野晴郎製作・監督・主演。三田佳子。宇津井健。大浦みずき。西田和明。大塚ちひろ。
 おなじみ山下奉文大将がシベリア超特急で移動中に遭遇する難事件とその解決劇。
 今回はそれに現在(2001年)に起きた洋上殺人事件を絡ませ60年の時空を超えた真実が明かされていく仕掛け。で、現代は成功したマスコミ王の誕生クルーズに次々と怪事件が起こる。それはかつてのシベリア超特急での事件をなぞっていた。欧州から逃げ延びる途中のユダヤ人らしき一群。東洋のマタハリなど謎の人物たち。そしてソ連の機密文書を巡って殺人事件が起こる。首謀者の女は列車から自殺を図る。亡命のための資金を得ようとした少女の父親は自殺する。そのように事件は終わるが、その背後に少年の秘密も隠されていた。その秘密を老嬢となった少女が暴露する。
 さて、三田佳子の熱演が光ります。なんか大女優が復活した感じです。そして、死んだ女が生きていたどんでん返しもいいです。なにより戦争の<魔力>を揺るぎなく描いています。まあ、戦争の形を借りた反戦映画です。
 ちなみに、新宿のシアターアプルには水野監督が来てトークしていました。ツーショットも、お願いされました。なんでも第6作までいくとか。「シベリア超特急2」より、パワーアップしていました。

*3<565>「運命の女」
エイドリアン・ライン監督。リチャード・ギア。ダイアン・レイン。オリヴィエ・マルティネス。
 ビジネスマンの夫、8歳の息子と、NY近郊に住む平凡な美人妻。ある嵐めいた日に買い物に出かけたNYのソーホーでフランス人の美青年に会ってしまう。で、口のうまい彼にころりと参って、あとはセックス三昧。ひどい女です。夫はなまめいてくる妻に気づき、探偵を雇って情事をつかむ。で、のりこんでいって、目まいに襲われ青年を殺してしまう。ゴミ捨て場にポイ捨てして知らん顔。警察の追及をかわした妻は夫の犯行に気づく。でも、私たちなんとか切り抜けましょう。って、警察の前ではショーシャンクじゃないが、メキシコ逃避を考える。
 おいおい、アメリカ! 結局、自分たちの勝手で、いい思いして、邪魔になったら相手を捨てて、知らん顔を決め込む。それって、米国とイラクの関係じゃん、まるで。身勝手な夫婦とお調子者の青年。なんだか今世紀の悪い比ゆだぜ。

*4<566>「壬生義士伝」
滝田洋二郎監督。中井貴一。佐藤浩市。夏川結衣。村田雄浩。中谷美紀。三宅裕司。
 浅田次郎の原作の映画化。
 新撰組の剣術師範・吉村貫一郎。彼は食うがために南部藩を抜けて京へ来ていた。田舎には妻と子供たちが待っている。だから、新撰組のお勤めは武士として厳格に果たしながらも、吝嗇であった。その吉村を見下しながらも気にせずにはおれない男がいた。左利きの剣士・斎藤一である。
 二人の対立と信頼を軸に騒擾とした幕末の荒波が描かれていく。ほかの新撰組隊士が享楽と死に急ぎの道を歩む中、吉村は武士の美知を貫く。とりわけ、薩長の手に錦の御旗が移ろうとも、徳川武士としての先駆けの戦いを続ける。最後は親友にみとられ自決する。
 物語は斎藤の目と親友の息子の医師の目で描かれる。はからずも泣いてしまう瞬間がある。しかし、後半の独白部分は長い。

*5<567>「黄泉がえり」
塩田明彦監督。草g剛。竹内結子。石田ゆり子。哀川翔。伊東美咲。忍足亜希子。
 死んだ人が戻ってきたら? そのあり得ない話を、心温まる物語として作り上げた。地殻の変動によって、ある村で死者が蘇り始めた。それは死んだ人を思う気持ちによって可能になるらしい。
 草g剛は幼友達と、その村で会う。2人には共通の友人が死亡していた。女の子(竹内)は、その元彼を蘇らそうとするが、できない。なぜか? 体の一部が残っていないと難しいらしい。だが、違った。なぜなら、彼女は実は……だったからだ。
 そこのトリックが切ない。サブストーリーで展開される石田ゆり子と哀川翔、そして山本圭壱の三角関係もありがちなだけにリアリティがある。

*6<568>「ボーン・アイデンティティー」
ダグ・リーマン監督。マット・デーモン。フランカ・ボテンテ。クリス・クーパー。
 マルセイユ沖で漁船が漂流している男を助けたら記憶喪失だった。だが、尻にはスイスの銀行の口座を書いたカプセルが埋め込まれていた。彼は銀行でいくつものパスポートと現金、銃を見つける。自分の名前はボーンというらしいことを知り、ボーンのアイデンティティー探しが始まる。相棒は領事館でひょんなことから出会ったマリー。だが、待ち受けているのはCIAの刺客たち。実は彼もまたそうした人間兵器の一人だったというわけだ。
 ハード・ボイルドじゃないが、甘いスパイ映画にはない緊迫感がいい。ロングからショートヘアになるフランカ・ボテンテは「ラン・ローラ・ラン」の彼女だった。男顔だが結構かわいい。
 
*7<569>「ケミカル51」
ロニー・ユー監督。サミュエル・L・ジャクソン。ロバート・カーライル。エミイ・モーティマー。リス・エヴァンス。
 天才的なドラッグ・ブレンダーのエルモ。最高のドラッグを発明したのはいいが、アメリカで売人グループをぶっ飛ばし英国へ。リバプールで待っていたのは風采のあがらないやくざのフィリークス。そして、あたりには謎の美人殺し屋もつきまとう。せっかく結ぼうとした2000万ドルの商売もいかれた若造や悪徳デカらに邪魔される。だが、得意のブレンド技術で窮地を切り抜ける。最高のドラッグが実はプラーボというオチまでつけて。それにしてもサミュエル・L・ジャクソンはかっこいいが、ロバート・カーライルが冴えないのはえこひいきか。

*8<570>「T.R.Y.」
大森一樹監督。織田裕二。黒木瞳。渡辺謙。
 戦前の上海で活躍する国際的ペテン師の伊沢周。彼を狙う赤眉と、助力を得ようとする黎明会の革命家たち。そして日本軍の高級将官と息詰まる戦いが続く。
 伊沢は革命家に武器を渡すことに失敗するが、心に新中国の夢が生まれるというラスト。なんとも都合のいい結末だわい。

*9<571>「レッド・ドラゴン」
ブレット・ラトナー監督。アンソニー・ホプキンス。エドワード・ノートン。レイフ・ファインズ。エミリー・ワトソン。
 「羊たちの沈黙」そして「ハンニバル」と悪名高い犯罪者にして犯罪心理の天才・レクター博士。その博士が病院に収容されるまでの事件と龍になろうとした劣等感の塊のような男が引き起こした猟奇事件。それに対決する想像力豊かなFBI捜査官の戦い。
 病院にいるレクター博士、そしてレッド・ドラゴン、FBIのグレアム。この三つどもえの人間関係と、頭脳戦が面白い。特にレッド・ドラゴンの狂気を浮き彫りにするところが説得力ある。鏡を割るほど自分の顔を見られるのが嫌なドラゴンが心を通わせるのが、目の見えない女性リーバ。彼女に人間らしさを見せながらも、やはり龍の狂気を捨てないのがわかりやすい。
 死んだと思わせながら、ラストの戦いに向かうのも優れたストーリー展開だ。主役に加え、「ほんとうのジャクリーヌ・デュ・プレ」のエミリー・ワトソンなどがいい。

*10<572>「戦場のピアニスト」♂♂
ロマン・ポランスキー監督。エイドリアン・ブロディ。トーマス・クレッチマン。フランク・フィンレイ。
 2002年カンヌ映画祭パルムドール受賞。
 1939年ワルシャワ。ナチスのポーランド侵攻とユダヤ人の悲劇が始まる。ゲットーを脱出したピアニストのシュピルマンがレジスタンスの助けを得て一人生き延びる。みな虐殺されるために消えてしまった廃墟の町。残された1台のピアノで弾くショパンとベートーベン。ひょんなことから音楽のわかるナチス将校によって彼は永らえることができた。
 物語は音楽と人間。強いて言えば、ユダヤ人の中にもろくでもない奴はいるという当たり前の認識。ドイツ人の中にもまっとうな人間はいるという当たり前の認識を示したことがよい。
 戦争はいやなものだ。こんな愚行を許すべきではない。そのことがわかっているのか。廃墟の中に流れるショパンと砲声を聞きながら悲しくなるのはなぜか。

*11<573>「007 ダイ・アナザーデイ」
リー・タマホリ監督。ピアース・ブロスナン。ハル・ベリー。トビー・スティーブンス。ジュディ・デンチ。
 なんだかんだ北朝鮮は悪役だ。その末裔が起業家を装って世界征服を企んだらどしましょう。そんな共和国愚弄(ぐろう)映画です。時節柄だからしょうがないが。
 で、北朝鮮の収容所から出てボンド。立ち向かうは若きダイヤモンド王。その実態は。そこに助っ人として登場するののは「チョコレート」のハル・ベリーだわさ。スレンダーだけれどダイマイトボディで暴れまくる。北朝鮮からキューバ、アイスランド。そして宇宙までにぎやかです。ついでながら主題歌はマドンナ。 

*12<574>「刑務所の中」
崔洋一監督。山崎努。香川照之。田口トモロヲ。松重豊。大杉漣。窪塚洋介。椎名桔平。
 花輪和一原作。漫画家の花輪が銃刀法不法所持で懲役3年。
 そこで、北海道の刑務所で暮らすことに。そこは不条理な規律の支配する、とんでも空間であった。担当さんの許可がなければ、何も許されない。とはいえ、この世界になじむとやめられないのかもしれない、と思ってしまうのは作品としては成功なのかどうか。

*13<575>「ニュー・シネマ・パラダイス」♂♂
ジュゼッペ・トルナトーレ監督。フィリップ・ノワレ。ジャック・ペラン。サルヴァトーレ・カシオ。
 第2次大戦後まもないイタリア・シチリア島。そこの小さな映画館パラダイス座は村人にとって唯一の娯楽だった。老映写技師と少年の映画への愛情物語。少年は村を出て一流の監督になるが、一つの死が彼の胸の中に大切なものを蘇らせる。
 名作。旭川では旭劇のラスト上映作だったそうだ。DVDを購入した。なんという優しさがあふれた物語だろうか。あらてめて思った。

*14<576>「シカゴ」
ロブ・マーシャル監督。レニー・ゼルウィガー。リチャード・ギア。キャサリン・ゼタ・ジョーンズ。
 にぎやかなショービズ映画だ。しかもミュージカルは刑務所の中で展開される。なんともスキャンダラスではないか。愛人殺しの売れない女性が、歌姫を見倣ってスターを目指す。そのためには敏腕弁護士の、大衆受けするドラマづくりが必要だというわけだ。そして、2人は見事にゴシップを逆手に取ったアイドルとなる。シカゴにはなんでもありというところが、批評と言えば批評か。

*15<577>「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ栄光のヤキニクロード」
水島努監督。共同脚本・原恵一。原作・臼井儀人。声・矢島晶子。
 いつもクレヨンしんちゃんはおもしろい。
 今回はロードムービーだ。貧しい朝飯が夜は栄光の焼き肉だと思ったのもつかの間。変な奴がやってきて、いつのまにか悪人に追われることになる。ところが、敵はしんちゃん一家を指名手配犯にしちゃったから大騒ぎ。熱海まで決死のロードウォーズが始まるのだ。またDVDを買おう。

*16<578>「デアデビル」
マーク・スティーブン・ジョンソン監督。ベン・アフレック。ジェニファー・ガーナー。マイケル・クラーク・ダンカン。コリン・ファレル。
 目が見えないけれど、他の感覚と超能力に恵まれた男マックス。彼は昼は盲目の弁護士だが、夜は悪人を裁くヒーローとなる。見たことがないけれどアメコミだそうだ。いかにもありがちなストーリー。そこをいかに見せるかが作品の技か。なにしろハンディがある分、結構しんどい。いろんな作品のいいとこ取りですが、ヒーローが今一つ可愛くないのは好みの問題か。

*17<579>「Xメン2」
ブライアン・シンガー監督。ヒュー・ジャックマン。ハル・ベリー。ファムケ・ヤンセン。ジェームズ・マーズデン。
 前作では、世界征服を企むミュータントとの内ゲバでした。今回はマッドサイエンチスト登場。本拠地を奪われたX−MENたちが大統一戦線を組んで反撃する。
 アクションいっぱい。何にでも変身するミスティークやテレキネシスの能力を持つジーン・グレイらの女性が格好いい。ハル・ベリーが結構おしゃれでいい。正直言って、こうしたコスプレに惑わされて、映画の本当の表現したいことが何なのか伝わらない。面白いんだけど。で、終わってしまうのだ。

*18<580>「アイ・スパイ」
ベティ・トーマス監督。エディ・マーフィ。オーウェン・ウィルキンソン。ファムケ・ヤンセン。
 「X−MEN2」で活躍したファムケ・ヤンセンがセクシーな女性スパイで活躍。なぜか同じ女優が続く。敏腕スパイに、ボクサーがコンビを組んで盗まれた新型ステルス戦闘機の行方を追う。例によって、「48時間」ふうのおしゃべりでコンビが動き回る。なんともぬるいスパイ映画である。
 
*19<581>「魔界転生」
平山秀幸監督。窪塚洋介。佐藤浩市。杉本哲太。麻生久美子。中村嘉葎雄。
 山田風太郎の原作の映画化。昔、沢田研二で見たような。
 天草四郎が蘇って、荒木又衛門やら宮本武蔵らを操って徳川打倒を目指す。立ちはだかるは柳生十兵衛。最後は父親柳生但馬守とまで戦うのだが、なかなか渋い。
 平山秀幸監督の「愛を乞うひと」はつらかったが、こちらは軽快だ。魔界に生きている者たちはそれぞれに訳ありというのがいい。これは原作の発想の素晴らしさ素晴らしさなのだが。
 はやりのCGで十兵衛に斬られた者たちは消えてゆく。なんだかそれがはかなくていい。

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