見逃しミーハーシネマ館 1999〜2003
なんというか、映画に嵌まっていた頃に、ビデオも借りまくっていた。
ビデオ・グラフィティ・ノート 1999−2 17~32
*<17>「スクリーム」
ウェス・クレイヴン監督。ケビン・ウィリアムス脚本。ネーブ・キャンベル。スキート・ウーリッチ。ドリュー・バリモア。
「スクリーム2」はじっくり騒がせてもらった。「パラサイト」もさっき見せてもらった。それならば本家本元へ、と「スクリーム」に戻ったわけだ。
いやあ、面白い。良くできている。しかも映画で映画を皮肉っているというか、たぶん批評しているところもオタク的か。
ドリュー・バリモアの女子高生殺人から始まって、ネーブ・キャンベルの主人公周辺で起こるシリアルキラーによる殺人事件。ハロウィン・マスクが暴れ回っているというに、例によってアメリカの学生どもはバカ騒ぎをやっては次々と殺されていく。
最後の最後まであきさせずにひっぱていく脚本もよくできている。スクリーム2はさらにパロディなのもわかる。
*<18>「トレインスポッティング」
ダニー・ボイル監督。ユアン・マクレガー。ユエン・ブレナー。ロバート・カーライル。ジョニー・リー・ミラー。
96年イギリス。ジャンキーのレントンを主人公に行き場のないスコットランドの若者を描く。シャープな映像、卓越した物語センスが光る。イギリス映画の重さが、ここでは「終わりなき日常」を生きる若者のフットワークによって浮力を獲得している。
麻薬漬けの日々、幼子の死という悲劇、それから抜け出そうとする葛藤。つかの間の市民社会復帰、逆戻り、仲間を裏切っての再出発。その先にあるのが、結局、どこにでもある我々のくそ面白くもない社会的日常というわけだ。だが、それに耐えていくことの重さを見事に描き出している。
今やスターウォーズのスーパースター、ユアン・マクレガー。「フル・モンティ」のロバート・カーライルのキレた演技もイカす。まさに現代青春映画だ。
*<19>「ライアー」
ジョナス&ジョンシュ・ベイト監督。ティム・ロス。レネー・ゼルウィガー。クリス・ベン。マイケル・ルーカー。
娼婦切断殺人の犯人にされかけた富豪の息子。彼はゴッホと同じアルコール中毒と奇病を得ている。取り調べに当たるのは借金と家庭に問題を抱えた2人の刑事。3人の心理戦を通じて事件の真犯人を捜していく。
映画は隙のない見事な作品に仕上がっており真相ははっきりとは示されない。はっきりしたことは富豪の息子は死んだように見えて実は生きていたところで物語は終わる。
当然だれかが彼の死を偽装したわけだが、どちらかの刑事であることは間違いない。救急隊が裏社会の人間だってことからギャンブルに負けていた男のはずである。さて、もう一人の刑事はどうか。ここが難しいところだが、彼もまた証拠を隠滅した。とすれば3人ともクロとなる。
それでいいのかなあ。
*<20>「ノーマ・ジーンとマリリン」
ティム・フェイウェル監督。ミラ・ソルヴィーノ。アシュレイ・ジャッド。ジョッシュ・チャールズ。ロン・リフキン。
96年米国。ハリウッドのスーパースターであり、アメリカのセックスシンボルだったマリリン・モンローの伝記ドラマ。没後30年企画とか。
孤独な少女ノーマからスター・モンローへの歩みをアシュレイ・ジャッドとミラ・ソルヴィーノが熱演する。個人的にはワシはアシュレイ・ジャッドのほうが好きです。2人が自己批評する形で人生を歩んでいく訳です。
少しだけ泣けます。でも、ジャンキーになっていくのはなんとも論評のしようがありません。私は薬漬けに現代病として済ませたくない個人の問題を感じるからです。
懐かしいというか有名なシーンが次々と登場します。ディマジオもケネディもアホです。モンロー以上に。モンローと寝た時代のやりきれなさが、この悲しさにはあります。
*<21>「マッド・シティ」
コスタ・ガヴラス監督。ジョン・トラヴォルタ。ダスティン・ホフマン。アラン・アルダ。ミア・カーシュナー。
左遷されたTV記者がたまたまミュージアムの取材に訪れたところ、ガードマンを解雇された男が銃を持って踏み込んできたため大事件に。おなじみのマスコミが単純な男を凶悪な犯人にしたてあげていくというメディアの物語が描かれていく。テレビ局から警察、さらには人質の子供たちや周囲のものまでテレビを意識して事件を語る。
ダスティン・ホフマンは自分たちが犯人を殺したことを最後に叫ぶ。とはいえ、一番の下手人は彼自身なのだから困ったものだ。上昇志向の強いアシスタント、あくまでも主役でありたいスター・キャスターたち。マスコミの人間はいかにも困った奴ばかりだ。
結末まで見えている映画だったが、トラヴォルタとダスティン・ホフマンの2人の演技が見事で十分楽しめる。
*<22>「コップランド」
ジェームズ・マンゴールド監督。シルベスター・スタローン。ロバート・デ・ニーロ。ハーベイ・カイテル。
ニューヨーク市警の警官たちが住む町は実は不正のまかりとおる腐敗した街だった。そこでコンプレックスを持ちながら保安官を務めているのがスタローンだ。彼はずっと警察ボスのいいなりだったが、最後に怒りの戦いを挑む。
権力は腐敗する。職業倫理を失った権力はこわい。もちろん架空の話でしょうが、ありそうな気もするのはどんなものか。恋心を絡めながら男の生き様を描き出す痛快映画でしょう。
*<23>「ウワサの真相/ワグ・ザ・ドッグ」
バリー・レビンソン監督。ダスティン・ホフマン。ロバート・デ・ニーロ。ウッディ・ハレルソン。
犬が尾を振る、ってか。例のモニカ・ルインスキさんの事件そのまま?に、強引な戦争政策をデッチあげる選挙参謀たち。
歴史は映画プロデューサーによって作られる。これって、ハリウッドのマスターベーションじゃないのか。発想は面白いけど飽きるな。次から次のデッチ上げキャンペーンも「サムライ」スピリットじゃ泣ける。それにしても、ロバート・デ・ニーロさんはうまいなあ。ダスティン・ホフマンもだけど。
*<24>「愚か者 傷だらけの天使」
阪本順治監督。真木蔵人。鈴木一真。大杉漣。
人生オチこぼれコンビが繰り広げる人情喜劇。内容はともかく、真木蔵人がいいな。徹底的にお人好しで、憎めないやつを自然に演じている。どうしょうもないけど、でもいいんだ。いっやあ、なんか不幸でいいなあ。
*<25>「ディディエ」
アラン・シャバ監督・脚本・主演。ジャン・ピエール・バクリ。イザベル・ジュリナス。
ある朝、目覚めたら私は醜い虫になっていたのはカフカの世界。犬が人間になっていたのが本作だ。困ったことに、主人がサッカーのマネージャーをしているため、人間ディディエはサッカー選手に。そして大活躍。主人は恋人とハッピーエンドへ。
考えればばかばかしいストーリー。だけどアラン・シャバがまじめに犬をやっているのがおかしい。映画ってのはそこが面白い。
*<26>「シャイニング」
スタンリー・キューブリック監督。ジャック・ニコルソン。シェリー・デュバル。ダニー・ロイド。
1980年米国。原作スティーブン・キング。
小説家のトランス一家がロッキーの巨大ホテルの管理人に雇われる。だが、そのホテルは前の管理人が妻と2人の娘を惨殺し、自分も自殺したいわくつき。超能力を持つ少年ダニーは早くにその危険を察知するが、トランスはいたって楽観的。しかし、彼は次第に狂い始めていく。
ジャック・ニコルソンが凄い。気の触れた人間を演じさせたら最高ですね。なんか本当に一線を超えた感じを醸し出します。三輪車や生け垣の幾何学的模様、タイプライターなど。それに触れているとたちまち魔界に歩み出すのだから怖い。
ホテルの宴会場のシーン。これがなんか先日の「アイズ・ワイド・シャット」によく似ているのだ。キューブリックはこの陰影のあるライティングが好きだったのだな、と納得する。イメージ性豊かなホラー映画で、なんかちょっぴり豪華さも感じた。
*<27>「気狂いピエロ」
ジャン・リュック・ゴダール監督。ジャン・ポール・ベルモント。アンナ・カリーナ。サミュエル・フラー。レイモン・ドボス。
「見つかった! 何が? 永遠が。海と溶け合う太陽」だって。ランボーだね。
フェルディナンはスペイン語の教師で詩人?。イタリアの女と結婚。パーティでアメリカ人の映画監督に会い「映画は戦場・・愛・・死・・感動だ」と聞かされる。昔の恋人マリアンヌと再会。アパートに泊まるが、殺人事件に巻き込まれる。逃避行を始める2人。絡む武器密輸。そして裏ぎられたピエロ=フェルディナンは愛人といるマリアンヌを殺し自殺する。
ミュージカル風のノリもあれば、演劇風の間と音楽、絵画を挟んだコラージュ風の展開もあり、とにかく実験的作品。映画の色も単純な原色が多く、印象的だ。短い言葉の速射砲がイメージを喚起させるのに狙い通り成功している。可能性を教示している作品であることを改めて知った。
*<28>「バウンド」
ラリー&アンディー・ウォシャウスキー監督。ジーナ・ガーション。ジェニファー・ティリー。ジョー・パントリアーノ。
コーキーとヴァイオレット。女2人。レズビアンである。コーキーは5年の刑を終えて出所してきたばかり。マフィアのボスからアパートの修理を頼まれた。そこにヴァイオレットはシーザーの愛人として暮らしている。出会った時から女同士の恋に落ちる2人。これが激しい。おりから200万ドルをめぐるトラブルが発覚。2人はそれを奪うべく準備を進めたが・・。
女同士の香りがする映画である。別段フェミニズムとは違うのだろうが、その感覚が底流にある。ヴァイオレットは言う。「男とのあれは仕事よ」と。なかなか怖い。本当のセックスはあなたとよ、というわけだ。
200万ドル強奪作戦は難航するが、そこに2人の「信頼」が勝ち取られていく。それって、フェミニズムの勝利。たぶん。でも大切なのは人間同士の信頼だよ、っていうところか。それって、現代の最先端の性思想そのものだな。うーむ。「SHE IS A LADY」(BY TOM JHONES)って最後に流れるのが渋い。
*<29>「ブラック&ホワイト」
ユーリ・ゼルスター監督。ジーナ・ガーション。ロリー・コチラン。アリソン・イーストウッド。
「バウンド」のジーナ・ガーションが良かったので、彼女をチェック。随分活躍していることがわかった。でも「ブラック&ホワイト」は日本ではちゃんと公開されたのだろうか。シネデータを作ろうとしても書籍やインターネットでも説明がない。やむなくビデオを見直して書いたので正しいかどうか怪しい。ことほど左様に本作はパッとしない。
いわくありげな女性警官と組んだ新人警官が謎の連続殺人鬼を追う。犯人はジーナが一番あやしい。でも愛しているし。彼女には父親を殺して自殺した弟がいて、それがトラウマになっているらしい。その辺の謎は最後に一挙に氷解するわけで、物語的にはよくできていると思う。だが、何か盛り上がりに欠ける。それは神を信じる新人警官が余りに感情移入できない役だからではないか。
*<30>「G.I.ジェーン」
リドリー・スコット監督。デミ・ムーア。ビゴ・モーテンセン。アン・バンクロフト。
デミ・ムーアがスキンヘッドになって海軍大尉の役で大活躍。キャッチコピーに曰く「彼女は、そして、女性を超えた」。
でもなあ、体育会系ののノリで頑張っているけど共鳴するものないなあ。裏では政治家の婦人が暗躍したり、例によって鬼の上官(でも本当は人情家)が登場したり、はおきまりパターン。女も男のように戦場で戦って死ぬ、のが男女平等なのかなあ。女権にもジェンダーにも無関心のワシには倒錯と誤謬しか感じなかった。そこまでしてどうするの? なにかスカッとする解放感もないし。彼女に共感し憧れる女性って本当にいるのかなあ。そんな疑問だらけの映画でした。
*<31>「大いなる遺産」
アルフォンソ・キュアロン監督。イーサン・ホーク。グウィネス・パルトロウ。アン・バンクロフト。ロバート・デ・ニーロ。
原作はディケンズの小説で、過去に映画化されているが、完全に設定を替えてリメイクした。
物語はフロリダの漁師で便利屋に育てられている少年が地域で一番の富豪の女性の邸宅にいる女の子の遊び友達となる。2人は好意を持っているが、家柄の違いから別々の人生を進む。ある時、少年にニューヨークで絵の個展をやるように善意が届く。新しい運命が開けるのだが、しかし・・・。
善意の主が不幸な老富豪だとみんな思っているのですが、実は全然違うのが、ポイントね。だけど、それを富豪のおばさんはどうして言わなかったのか。謎だ。映画は面白くないことはないのですが、大時代的すぎるの。ここまで大ロマンに仕立てるのかヨー、って感じがしちゃうのね。まあ、いいけど。「文芸大作」ってみんなそおだけど。そのシッポが切れなかったのね。
緑の中を走り抜ける真っ赤な車じゃなかった。緑の少女。これがなかなか可愛い。パルトロウになるとちょっとエラがはっちゃうのだなあ。でも、それが上流の雰囲気を伝えているが。アン・バンクロフトのお化けぶりが楽しめる一品ということで、おしまい。
*<32>「ポストマン」
ケビン・コスナー監督、主演。ウィル・パットン。オリビア・ウィリアムス。
未来の話。アメリカ合衆国も戦争でなくなって辛うじて人々が集落ごとに生きている。そこを支配しているのは8つの掟を持ったナチス軍団的組織だ。シエイクスピアをやってみせたりしている風来坊。ひょんなことからアメリカ合衆国の郵便配達人の制服を見つけてしまった。でっち上げで政府を語ったら本物にされ、仲間も増え、結局、悪の軍団と闘うという約3時間の大作である。
テーマはユナイテッド・ステーツ・オブ・アメリカ。すなわち「希望」。それをポストマンは運ぶっていうわけ。マルクスは左様、交通こそ生産関係の鍵である、と喝破していた。長いから悪いのではない。悪い上に長いから困るのだ。あたしゃところどころテープを早送りしてみました。
■
1999年 見逃しビデオ館 3 へ ■
見逃しシネマ館 1999〜2003 トップへ
■
シネマサイトのトップページに戻る
■トップページに戻る