シネマミーハーらくがき帳 1999〜2003
なんというか、映画に嵌まっていた頃があり、雑文を書きまくっていた。
シネマ・グラフィティ・ノート 2000年 その12
*150<363>「カル」
チャン・ユニョン監督。ハン・ソッキュ。シム・ウナ。ヨム・ジョンア。チャン・ハンソン。
バラバラにされた人間の遺体が次々と見つかる。それらは6等分され体の一部分を失っていた。殺されたのは謎の女性スヨンの元恋人たちだった。チョ刑事は真相に迫ろうとするが。スヨンの親友の女医、失踪中の偏執的な父親など影を持った人物がちらつく。
「八月のクリスマス」 の名コンビによるスリラーか。「カオス」は日本の失敗作だったが、韓国の「カル」もひどい作品だ。無内容に響く音楽と思わせぶりのシーンの連続。最終的な犯人にしても「ちぇっ」というレベルだ。発展途上国的なまじめコピーだけじゃだめだなあ。女優合戦的には、中谷美紀よりシム・ウナのほうがいいけど。
*151<364>「世にも奇妙な物語 映画のための特別編」
落合正幸、鈴木雅之ほか監督。矢田亜希子。武田真治。中井貴一。稲森いずみ。
テレビの人気番組で実現できなかった題材による映画化とか。オムニバスで4編が並んでいる。
「雪山」「携帯忠臣蔵」「チェス」「結婚シミュレーター」。それなりに面白く仕上がっている。
発想と主役の演技いう点では「携帯忠臣蔵」と大石内蔵助役の中井貴一か。携帯ならずとも何者かに動かされて大事を為すと言うことはあるわけで。タイムマシンを携帯にしたところが今風か。稲森いずみと柏原崇の「結婚擬似体験」はこの2人がなんか青春していて笑える。
*152<365>「ことの終わり」
ニール・ジョーダン監督。レイフ・ファインズ。ジュリアン・ムーア。スティーブン・レイ。
高級官僚とその妻、それに作家の三角関係。だが、愛人である作家は人妻が新たな恋をしていると思う。探偵を雇い真相を探ろうとするのだが。第3の男とは、まあ気高い男であったのさ。
グレアム・グリーンの原作を映画化した。なんというか大人の映画です。人間いかに真実を見ていないかよくわかるわけです。だからといって、崇高なるものなんて僕は信じませんが。本当にお話がうまく転がっていって、見事だなあと思いました。
*153<366>「チャーリーズ・エンジェル」
McG監督。キャメロン・ディアス。ドリュー・バリモア。ルーシー・リュー。
ファラフォーセット・メジャーズが懐かしい天使たちの復活。今回はチャーリーに復讐しようとする連中との戦いだ。「マトリックス」以降のカンフー移入で銃器を余り使わないのが本編の特徴。
しかし、物語はなんともぎくしゃく面白くない。この種の映画は筋よりも場面ですから、それはいいのですが。印象に残るのはキャメロン・ディアスばかり。ドリュー・バリモアもルーシー・リューもいささか落ちる。ディアスを楽しむだけという作品である。
*154<367>「漂流街」
三池崇史監督。TEAH。ミッシェル・リー。及川光博。吉川晃司。野村祐人。
原作は馳星周。
全くの無国籍映画である。ロスを埼玉にしゃうんだからな。でもって暴力に憑かれている。それは生き方のスタイルでありアナーキズム的だ。惜しいことにラディカルなエロスがない。ブラジル娘たち、中国女、突き上げるものがない。
及川ミッチーの変態ぶり。吉川の無思考暴力。野村のキレた世渡り。あっと驚くカンフー闘鶏。いずれも印象的だ。盲目の美少女カーラ(勝又ラシャ)もいい。涙の結晶にして無垢なる聖母。これはドストエフスキーの世界だな。ボーダレスな世界が生む新たな国境。それを突破するのは愛か暴力か?
*155<368>「悪いことしましョ!」
ハロルド・ライミス監督。ブレンダン・フレイザー。エリザベス・ハーレー。フランシス・オコーナー。
コンピューターおたくのもてない男。彼には4年前から思いを懸けている女性がいる。その心のスキに入り込んできたのが悪魔だ。これがセクシーな美女ときている。悪魔に魂を売って七つの願いを叶えてもらい幸せを手に入れようとするが。でも、うまい話にゃ裏がある。結局はドジ続き。牢獄の中で、まあ無私の精神に気づくことになる。
所詮はオトボケ映画ですが、私は結構気に入りました。コカインありバスケヒーローありゲイありで米国を笑っているところがあります。それにブレンダン・フレイザー。「ハムナプトラ」でもそうでした。今や二枚目のアホ役では追随を許しませんね。
*156<369>「タイタス」
ジュリー・テイモア製作・監督・脚本。ジェシカ・ラング。アンソニー・ホプキンス。アラン・カミング。
シェイクスピアの原作を「ライオンキング」の女性演出家が映画化。
古代ローマ。ゴート族を打ち破った将軍タイタス・アンドロニカス。捕虜に女王タマラを連れてくるが、長男は殺してしまう。ここに恨み発生。ひょんなことから新ローマ皇帝の寵愛を得たタマラは復讐開始。タイタスの一族は皆殺しの対象に。そりゃあ手首は落とす舌は切る。残酷です。
凄い作品です。現代と過去、未来を一瞬にしてつなぐ演出です。昔の話は今の物語なのです。そして、映像美がコスチュームやシーンに満ちています。人間はなんという生き物なのか。
*157<370>「シャフト」
ジョン・シングルトン監督。サミュエル・L・ジャクソン。ヴァネッサ・ウィリアムズ。ジェフリー・ライト。トニー・コレット。
ニューヨーク市警の敏腕刑事その名はシャフト。こいつを怒らせると怖いぜ。で、逆りんに触れたのが不動産王のドラ息子。黒人青年を撲殺して、反省の色なし。そしてマフィア、悪徳警官とつるんで証人女性を脅して殺そうとする。
アルマーニのレザー・コートを翻してシャフトが駆けると嵐が起こる。なんか、アメコミでも見ているようなテンポの映画だな。テンポがよすぎてなんとも軽い。大騒ぎして、あっけない結末一発。ヒーローはいいが、ヒロインがいないのも不満だぞ。
*158<371>「バーティカル・リミット」
マーティン・キャンベル監督。クリス・オドネル。ロビン・タニー。ビル・パクストン。
標高8000メートルを超える高度限界にあるK2。そこに無茶な登山をしようとして案の定遭難する米国金持ち隊。ならば誰かが救いにいかねばならない。たださえ危険な上に、ニトログリセリンを担いでの行動となる。
遭難者の一人にアニーがいた。彼女は兄ピーターと登山中に2人が助かるためにロープを切って父親を失う経験をしていた。因果は回る物語になっていくのは、わかっていても面白い。そして、雄大な山々とにぎやかな雪崩、爆発シーン。楽しめるわ。これは。
傑作かどうかわかりませんが。期待に十分応えてくれる作品です。
*159<372>「ホワット・ライズ・ビニース」
ロバート・ゼメキス監督。ハリソン・フォード。ミシェル・ファイファー。ダイアナ・スカーウィッド。
正月映画の目玉で公開だそうが、なんか季節外れの幽霊映画か。サスペンスなんだろうが、見ていて疲れたんだなあ。全米ナンバーワンヒットなんて書いてあるが、アメリカ人って変だぞ。台本がつまらないからか、ハリソン・フォードも冴えない。
生物学の博士の夫と元チェリストの妻。娘は大学の寄宿舎に。妻は1年前に自殺未遂を起こしていた。2人きりになったら次々に起こる怪奇現象。なんだかよくわからん。隣はなんだったんだ? 結論は若い娘には気を付けよう。妻を大切に。ってことか。
*160<373>「シックス・デイ」
ロジャー・スポティスウッド監督。アーノルド・シュワルツェネッガー。ロバート・デュパル。
近未来。人間のクローンを禁ずる「6d法」が秩序維持のために施行されていた。だが、科学者の研究と再生技術を商売にする企業が暴走を始めていた。表ではペットを再生するリペットを。裏では既にクローン人間を作っていた、ひょんなことからもう一人の自分を見つけるアダム。彼の壮絶で孤独な戦いを描く。
この映画の面白いところは、主人公が実は本物じゃなくクローンだったことですか。あっ、これはネタバレかなあ。このページはマイナーだからいいか。僕らは早くからシミュラークルは現実を超える、といってきました。たぶん、本物だクローンだってことは次第に意味を無くする気がします。なんかそこで倫理だけじゃ済まないものがあると思います。
考えさせられる作品だと思います。成功していないにしても。シュワルツェネッガーですが、やはりアクション・スターとしては死んでいて、クローンがいればよかったのに、というレベルです。
*161<374>「ダンサー・イン・ザ・ダーク」
ラース・フォン・トリアー監督。ビヨーク。カトリーヌ・ドヌーブ。デビッド・モース。
2000年カンヌ映画祭パルムドール賞。ビヨークは主演女優賞。
主人公はチェコからの移民のセルマ。彼女は一人で男の子ジーンを育て工場で働いている。隣人の警察官夫妻は親切で、良き先輩もいる。仕事の後は、ミュージカルの舞台にも挑戦している。だが、彼女には人に言えぬ悩みがあった。
彼女は遺伝的に失明に至る病を抱えており、我が子を手術で救いたいと考えている。だが、善意がひょんなことから裏返るとき、彼女の運命も変わる。ぬれぎぬの窃盗そして殺人。彼女は息子をとるか自分をとるかの決断で、死刑を選ぶのだ。
ミュージカルは素敵だ。哀しいことがない。そう信じているセルマ。だが、この作品は、ミュージカルで悲しみを描き、甘い救いはない。肉体労働の工場での歌踊、盲目になり列車で「もう全てを見た」と歌うシーン。すばらしく印象的だ。ビヨークの音楽は必ずしもよいとは思わないが心に響いた。
カトリーヌ・ドヌーブも「ヴァンドーム広場」「ポーラX」以上に熱演している。
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