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北海道文学を中心にした文学についての研究や批評、コラム、資料及び各種雑録を掲載しています

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シネマミーハーらくがき帳 1999〜2003
 なんというか、映画に嵌まっていた頃があり、雑文を書きまくっていた。

 シネマ・グラフィティ・ノート 2000年 その2  

*15<228>「アナとオットー」
フリオ・メデム監督・脚本。ナイワ・ニムリ。フェレ・マルティネス。
 8歳の時、僕は人生で一度だけ運命の人に出会った。OTTOとANA。パリンドローム(回文)を名前に持つ2人の恋。監督は偶然を繰り返し繰り返し描くことで運命(必然)を浮かび上がらせる。2人は物理学の定理のように、経験を共有しながら実は別のものを見ていたことがわかる。
 舞台はスペインというが2人はどこかクールな印象がする。案の定、白夜の国フィンランドで終わりを迎える。恋は成就したのかしなかったのか。2つの結末が示される。監督が求めた<輪廻>のイメージがとても見事であった。

*16<229>「ラスベガスをやっつけろ」
テリー・ギリアム監督。ジョニー・デップ。ベニチオ・デル・トロ。クリスティーナ・リッチ。
 原作はハンター・S・トンプソンだが、かの「未来世紀ブラジル」「12モンキーズ」の変人監督の大傑作であろう。
 1971年ボロボロの米国。アメリカン・ドリームを追って作家と弁護士がやってきたのはラスベガス。当地で行われるバイクレースを取材することである。しかし2人はあらゆるドラッグをトランクいっぱいに詰めて完全武装。ラリパッパで豪華ホテルに乗り込み大暴れ。
 凄いのだ。酒場は爬虫類だらけの動物園になるし、妄想の大洪水。ベトナム戦争はテレビを飛び出して眼前のものとなる。「クスリなしにはやってられない」。そんな気持ちがよく分かる。もちろんオレはやらんが。
 確かに体制なんて権威なんて糞食らえ! ジョニー・デップ。横山やすしのようで、完全に飛んじゃって最高の禿頭俳優ぶりです。

*17<230>「狂っちゃいないぜ!」
マイク・ニューウェル監督。ジョン・キューザック。ビリー・ボブ・ソーントン。ケイト・ブランシェット。
 NYの空の安全を守る管制官たちのスリルに満ちた日々。そして人間関係をドラマチックに描く。似たような作品にキーファー・サザーランドの「グランド・コントロール」があったか。
 なんでも一番のニック。先住民の血を引くラッセル。美人妻のコニーとメリー。4人のライバル意識が炸裂するところが面白い。
 個人的にはエリザベスのケイト・ブランシェットよりもメリー役のアンジェリーナ・ジョリーさんが好きですね。無意識に濃厚な妻と悟った哲学者のような2人の組み合わせがいい感じでした。

*18<231>「リング0 バースデイ」
鶴田法男監督。高橋洋脚本。仲間由紀恵。田辺誠一。麻生久美子。田中好子。
 井戸に突き落とされた山村貞子。だが、彼女はなぜそうなったのか。そのナゾを解くのがこの「リング0」である。
 時は昭和43年に遡る。山村貞子18歳。彼女はとある劇団の研修生だった。そこで、彼女はいつしか主役を勝ち取り、記録係の青年と恋仲になる。だが、その周辺では奇妙な死が相次いでいた。そして、山村静子の超能力実験で死亡した記者の恋人の女性記者が真相究明に動いていた。恨みを買った貞子はいったん殺されるが・・。
 「学校の怪談」「シックス・センス」そして「キャリー」なんかを思わず思い出す。超能力少女が社会に容れられないという意味では「キャリー」が一番近い。
 これは持論であるが、超能力者は子供時代をこそ生きられるが、大人にはなれない。大人の超能力者はいないし、死すべきものとして存在している。それがなおも生き残った場合、それは怨念のような形にしかならない。「リング」はようやくそのことを明らかにしたような気がする。
 仲間由紀恵は演劇少女の貞子を透明感たっぷりに演じていていい。そして田辺誠一も豊川悦司と佐藤浩市の約数のような感じでオーラがある。その2人のひたむきな愛だから、主人公が疎外される青春映画らしい魅力もある。
 それにしても怖い。恐怖とは反復であるとのテーゼを実践している。リングは本作で本当に終わったのか? いや・・・

*19<232>「迷宮のレンブラント」
ジョン・バダム監督。ジェイソン・パトリック。イレーヌ・ジャコブ。イアン・リチャードソン。
 よくできたラブ・ミステリーです。NYの贋作画家の青年がある時、日本人画商らにレンブラントの絵を頼まれる。韓国人のコレクターに売りたいのだという。青年はヨーロッパで作品を研究しているうちに美術教授の女性に出会い恋に落ちる。描き上げたレンブラントは父親をモチーフにした見事なものだったが、欲に目がくらんだ画商らは特注の約束を変えて競売にかけようとする。青年は絵を奪い、女性を道連れに逃走するが。画廊オーナーらによって殺人犯にされる謀略にはまっていく。
 美術映画はいつも結構凝っていて勉強になるが、贋作づくりがリアリティがある。そして腐れ切った画商の世界を痛烈に批判しつつそれへのしっぺ返しのオチも見事に決まっている。それぞれ名前=肩書きを隠した2人が恋するところがミソか。
 ハッピーエンドってのがいかにもアメリカ映画的なのが、減点か。
 
*20<233>「コンフェッション」
ローディ・ヘリントン監督。キューバ・グッディングJr。トム・ベレンジャー。マリアンヌ・ジャン・バチスト。
 オレは弁護士。時に依頼人に対して不信を抱いてしまうときがある。本当にワルの犯罪者と分かっていながら弁護するときだ。そんな気の迷いから弁護士資格を失ってしまった男が小説で一発逆転を狙う。
 しかし、さっぱり筆が進まない。悩んでいるところにじいさんがやってきて、「カラス殺人事件」なる小説を残してぽっくり。そこで盗作したところ小説は大ヒット。だが、それは連続殺人のシナリオだった。
 しゃれた出来上がりだが、いささか物語が浅薄で緊迫感が盛り上がらない。登場人物が中途半端なのがいけない。でも弁護士に対する不信みたいなものは米国にもあるのかなと感じた。

*21<234>「007 ワールド・イズ・ノット・イナフ」
マイケル・アプテッド監督。ピアース・ブロスナン。ソフィー・マルソー。ロバート・カーライル。デニス・リチャーズ。
 旧ソ連で開発を進める石油王の娘エレクトラ、頭の中に銃弾が残り感覚が麻痺したテロリストのレナード。核兵器の解体を進めているドクター・クリスマス。それにボンドが加わり、パイプライン利権をめぐる陰謀と攻防が続く。
 昔の007の敵役のソ連や悪の組織が倒れたこともあって、今回の攻防はいささか人間ドラマくさい。でもロバート・カーライルには今ひとついつものオーラがない。ソフィー・マルソーも気品ある美しさが活かされていない。半面、ヤンキー娘なのにドクターのデニス・リチャーズだけブイブイ言わせてしまって。それって結局、ブロスナンと演出が問題なのかって思ってしまう。
 もちろん見どころ十分たっぷり楽しめましたけど。

*22<235>「あ、春」
相米慎二監督。佐藤浩市。斉藤由貴。山崎努。富司純子。三浦友和。藤村志保。
 証券会社に勤める夫。家付き母付きの妻。かわいい男の子。そんな家庭にある日、夫の父親という男が紛れ込んできた。トリックスターのような男の登場で家庭は静かに変わり始める。
 いい映画ですね。なにがって縁側と庭のある家がいい。ああ、あの日差しの優しさ。
 典型的な小市民映画ってことだけど。それを揺さぶるのが自由人の山崎努。勝手放題に生きてだれにも好かれてしまう。ルンプロのガイストって奴が存在の根を揺するってわけさ。一番反応するのが妻の斉藤由貴。いいな、少し太って。いい感じだ。夫とのコミュニケーション不全で不眠症と発作が続いていたが、精神がやわらいでいく。藤村志保と富司純子、三林京子。この3人のおばさんが凄い。うぶな=やりて婆。それに山崎努がからみ、佐藤浩市がおろおろする。
 当然ながらトリックスターは消えていくが何かが残る。ひよこだ。いや、生きることの中にある<コク>のようなものだ。それを夫婦がしみじみと感じながらジ・エンド。
 ああ、渋いお茶が飲みたいって気分か。

*23<236>「母の眠り」
カール・フランクリン監督。メリル・ストリープ。ウィリアム・ハート。レニー・ゼルウィガー。
 このところ見るべき映画がなくて、なんとなく避けていた作品だけど、劇場にゴー。やっぱりというべきか、いけない。
 何がって、病妻の孤立がいらだたしいからだ。みんなこの母の気持ちが最後まで分からない。新聞記者をしているキャリアウーマンの娘も、大学で文学を教えている夫も。落第生のくせにコンサーバティブな息子も。
 このコミュニケーション不全の中で母は自ら死を選ぶ。救いがあるか? ない。
 単調な物語。単調な死。それがなんともやるせない。

*24<237>「ストーリー・オブ・ラブ」
ロブ・ライナー監督。ブルース・ウィリス。ミシェル・ファイファー。ティム・マシソン。
 離婚寸前の夫婦。過去の15年を振り返ると喜びもあるが、意見の食い違いばかりが目立つ。結婚はロマンスの抑圧装置となっている中で別居を始めた2人だったが。
 いやあ、これはなあ、って映画です。結局は「子はかすがい」ってところが結論のような気がします。あたしゃ嫌いです。
 それなのに「私たちの物語」だなんて。こだわらず離婚してもいいだろうが。時にブルース・ウィリス。長髪も見せます。でもそれがいかさない。前髪のないロングヘアーってダサイぜ。

*25<238>「釣りバカ日誌イレブン」
本木克英監督。西田敏行。三国連太郎。浅田美代子。桜井幸子。村田雄浩。余貴美子。谷啓。
 おなじみハマちゃん、スーさんコンビ。
 今回は沖縄に行って愛を見つける物語。ハマちゃんはウサギを縁に若い会社員同士のキューピッド役に。スーさんは戦争経験を反芻しながら女タクシー会社社長を通じてやさしさを実感する。グローバルスタンダードを名目にリストラを迫る外人コンサルタントに対して、自分は終身雇用を守り社員を守るとスーさんは宣言する。
 ありゃ、これって反米愛国・自主独立じゃん。でも、オレは反対じゃない。社員を信じられない経営者ってのは金の亡者だな。経済過程の世界性に対して1国主義は反動である。そのためには政治のヘゲモニーこそ必要である。小ブルジョア的な路線は反動である。しかしそこに囲い込まれる精神を、労働過程の世界性を通じて、資本の世界性に対抗する路線が問われているだろう。

*26<239>「季節の中で」
トニー・ブイ監督。ハーヴィ・カイテル。ドン・ズオン。ゾーイ・ブイ。グエン・ゴック・ヒエップ。
 ベトナム戦争も遠い過去の出来事になりつつあるホーチミン市。病に冒された詩人の元に、蓮売りの少女がいた。高級娼婦に恋した輪タク(シクロ)の青年がいた。缶拾いの少女と物売りのストリート・キッズがいた。自分の娘を捜す元米国兵がいた。
 これらの4組のエピソードを転がしながら、映画は最後に大きな流れのように合流する。
 きれいな映画である。惜しむらくは癖がない。ベトナムってやっぱりもっと毒がないと。世界の反動たる米帝国主義に勝利したにもかかわらず、そのツケを背負った国。そのやりきれなさってあるだろうに。
 欠けてしまった悲しみを<蓮>と<火炎樹>で象徴したのだろうが。弱い!

*27<240>「アンナと王様」
アンディ・テナント監督。チョウ・ユンファ。ジョディ・フォスター。バイ・リン。
 シャムのモンクット国王の元に一人の家庭教師がやってきた。英国人の軍人の夫を亡くしたアンナ・レオノーウェンズ夫人だ。彼女はインドから子供を連れてやってきた。そして、慣れない風習に戸惑いながら、献身的に国王の子供たちの教育に当たる。
 さて、とはいえ彼女はイギリス人である。バックには大英帝国と、東インド会社が付いている。一方、タイはフランスを加えた列強に囲まれ、いかに独立を守り近代化するかの岐路にある。そうした歴史の緊迫感が残念ながら、この作品からは感じられない。
 むしろ男と女の物語にポイントが置かれている。その流れで言えば、チョウ・ユンファは圧倒的な存在感がある。でもね、一人の女性がシャムの近代化を進め、王をも動かしたってのはどうかなあ。やっぱりイギリス(米国=西欧)が一番っていう感覚が隠しようがない。いやだね。
 たださえ、アジアはグローバルスタンダード=IMF体制の押しつけに苦しんでいるのに。実在の国じゃなくておとぎ話にすればよかったのに、と思うのだが。

*28<241>「トイ・ストーリー2」
ジョン・ラセター監督。声:トム・ハンクス。ティム・ロス。ジョン・キューザック。
 「トイ・ストーリー」の第2弾。例によって3DCGが冴える。主役のカウボーイ人形・ウッディと宇宙戦士のバズのコンビが繰り広げる友情の冒険ファンタジー。ウッディはご主人のアンディ坊やに、ちょっと見放され気味になり、ひょんなことから変態オモチャ屋の元に。そこで、かつての仲間たちに出合う。一方、バズたちはウッディを取り返すべき冒険の旅を開始する。
 物語としてもよくできているうえ、やはり3Dが素晴らしい。やっぱりコンピュータの力と人間の想像力ってのは凄い。いかにもディズニー的な映画ではあるが。

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