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北海道文学を中心にした文学についての研究や批評、コラム、資料及び各種雑録を掲載しています

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シネマミーハーらくがき帳 1999〜2003
 なんというか、映画に嵌まっていた頃があり、雑文を書きまくっていた。

 シネマ・グラフィティ・ノート 2000年 その7  

*87<300>「ロミオ・マスト・ダイ」
アンジェイ・バートコウィアク監督。ジェット・リー。アリーヤ。アイザイア・ワシントン。
 マトリックスのVFXとカンフーがミックスした映画だそうで、期待してみたが、看板に偽りありだな。X−rayバイオレンスなんて、笑ってしまうな。マトリックスには世紀末感覚みたいなものがあった。それがVFXとして生きていたのだが、ここにはただの甘い技巧しかない。物語が今ひとつ、よろしくないのだ。
 チャイナ・マフィアとブラック・アメリカンが縄張りを争っているオークランドの湾岸。そこで、密かに利権再配分の陰謀が進められていた。弟を殺されたハンは身代わりで服役していた香港の刑務所を脱獄。黒人ギャングの娘トリシュと真相に迫っていく。主演のジェット・リー。どうです? あたしゃ、××でしたが。

*88<301>「どら平太」
市川崑監督。役所広司。浅野ゆう子。宇崎竜童。片岡鶴太郎。石倉三郎。
 監督は市川崑だが、脚本は黒沢明、小林正樹、木下恵介という巨匠で作った「四騎の会」の作品。山本周五郎の原作を元に、ある小藩の町奉行になった武士の姿を描く。
 主人公のどら平太は、城内と城下の澱みを省くよう城主に命じられていた。そのために、奉行所には出仕せず、悪場所に入り浸っての捨て身の行動に出ている。それに対して、若い武士たちは怒り、古狸たちは胡散臭く思っている。どら平太を助けるのは2人の旧友。だが、2人の仲はうまくいっていない。孤立無援のどら平太。しかし彼には人間的魅力があふれ、剣の達人でもあった。
 一種の痛快時代劇だろう。役所広司の演技が圧倒的に光る。これに比して、助っ人たちや悪役の動きがやや鈍い。安心してみられるが、何か物足りないのはなぜか。正義と悪の戦いに今ひとつ緊迫感がないからのように思える。

*89<302>「完全犯罪」 
マイク・バーカー監督。アレッサンドロ・ニボラ。リース・ウィザースプーン。ジョシュ・ブローリン。
 友人を罠に掛けたらどうなる? そりゃあ、いかんだろう。だが、自分勝手な人間たちが罠を仕掛け合ったら、そこには隠されていた感情が露呈する。
 ニックとリサ、そしてブロイス。この3人の立場それぞれで映画の見方はずいぶん違ってくる。良くできた脚本といえるだろうが、どうも面白くない。解放感がないためさ、と言っていいのかどうか。それにしてもブロイスの人格ってのはエゴイストにしてもひどすぎるなあ。

*90<303>「遠い空の向こうに」
ジョー・ジョンストン監督。ジェイク・ギレンホール。クリス・クーパー。ローラ・ダーン。
 1957年10月の空はきっと澄んでいたんだ。ソ連の人工衛星スプートニクが飛んだ。いやあ、確かに6歳になる少し前の僕も見たはずだが。その後、スプートニクスという北欧のバンドが奏でるインストルメンタルはよく覚えているが。でも。こちらはアメリカのロケット・ボーイズのお話。
 炭坑町の高校生ホーマーは星の間を飛ぶスプートニクを見て自分たちも世界の一部であると知る。そして、炭坑ではなく宇宙で住みたいと考える。激しい恋愛騒ぎは出てこないが、これは文句なしの青春映画である。父と子、この対立と和解を、妥協することなく描ききった。
 ホーマー役のジェイク・ギレンホールの瞳は本当に未来に向かって輝いている。父ジョン役のクリス・クーパーは誇りに満ちた一徹な炭坑の男のガッツを伝えてくれる。いや、最後はアメリカそのものだけど。
 この映画、生活者の描き方にイギリスっぽい雰囲気もあって、媚びていない。ちょっと泣ける。しばらく心に沁みている。

*91<304>「ニコラ」
クロード・ミレール監督・脚本。クレモン・ヴァン・デン・ベルグ。ロックマン・ナルカカン。
 12歳の少年ニコラはスキー合宿に行くことになった。しかし、両親はバス事故を恐れて、自家用車で200キロの道を送ると言い出す始末。おねしょ癖のあるニコラは夢かうつつか、次第に恐怖の蟻地獄にはまっていく。
 この映画はやはり父親が怖い。彼の病める精神が少年の心に歪みを映しているのだ。そしていつしか死を夢想する。少年の浮遊感をうまく捉えているが、心にはうまく響いてこなかったのは何故か。

*92<305>「アンドリューNDR114」
クリス・コロンバス監督。ロビン・ウィリアムス。サム・ニール。エンベス・デイヴィッツ。オリバー・プラット。
 近未来の家庭にやってきた召使いアンドロイドのNDR114。下の娘のリトル・ミスは訛ってアンドリューと名付け親しくなる。父親はアンドリューのロボット離れした個性に気づき、さまざまな知識を与える。そこで、アンドリューはいつしか人間に恋する感情を持ち自分の体を人間に近づけていくのだが・・。
 アンドロイドが人間になるというのは現実的な問題ではないだろう。いわば異物が共同体に入ってくるときの難しさを提起しているといえる。エイリアンと人間がうまくやっていけるかという問題でもない。異なる文化を持った人間たちが出逢うとき、「飛ぶことが出来るか」どうか。受け入れる側も、飛び込む側も、何かを変えなくてはならないのだ。
 恋愛を通して、さまざまなことを考えさせてくれる娯楽作だ。ロビン・ウィリアムスがしつこくないのもいい。

*93<306>「カリスマ」
黒沢清監督。役所広司。池内博之。大杉蓮。風吹ジュン。洞口依子。
 いやあ、宗教臭い。「世界の法則を回復せよ」だとか。みせかけの対立を超えて、共生を提起して「あるがままに生きよ」という諦念への到達。
 ビートルズのメッセージ、作業療法で知られる森田正馬の世界だぜ。そんなことを言われると鼻白んでしまうのだ。森の中の一本の木は破壊者なのか、生の意志なのか。なんか下手な小劇団のアングラを見せられている感じになるのだ。
 役所広司は熱演しているが、どうもぴりっとしない。「CURE」 も 「ニンゲン合格」 も、今回もオレにはうまく伝わってこないままだ。


*94<307>「ラスト・ハーレム」
フェルザン・オズペテク監督・脚本。マリー・ジラン。アレックス・デスカス。ヴァレリア・ゴリノ。
 オスマン・トルコ帝国が1922年に崩壊する直前の後宮の女模様を描く。
 イタリアの少女サフィエはスルタンのハーレムに売られてきた。彼女は美しさと才気に溢れていた。宦官のナディールは彼女に友情以上のものを見出し、後ろ盾となる。2人の協力で彼女はついにスルタンの寵愛を独占するまでになる。が、次第にハーレムには暗い影が落ち、帝国も崩壊していった。彼女も落ちぶれて、ショーで生きていくことになるのだった。
 ハーレムには愛と権力と恐怖があるとか。でも人間は成長しないのでは。すなわち、歴史の勉強にでもなるか、と思いきや、全く役に立ちません。大河ロマンというよりむしろ、メロドラマのような物語です。音楽がなんか感傷的で。豪華絢爛のハーレムは今ひとつで、ソフトポルノの印象だなあ。美形の裸体を目一杯見させてもらったというありがたさだけ残ります。
  
*95<308>「ウィング・コマンダー」
クリス・ロバーツ監督・脚本。フレディ・プリンゼ・Jr。マシュー・リラード。サフロン・バローズ。
 西暦2654年。そこで繰り広げられる地球連邦軍と宇宙生命体キルラティとの戦い。
 奪われたコンピュータ「ナブコムAI」を取り返さなければ地球は破壊されてしまう。その任務に当たるのは、超能力の故に地球人と対立してしまった冒険者ピルグリムの血を引いた若者だった。
 スペースオペラでおなじみのワープ航法やら宇宙海戦、空中戦などがもりだくさん。決して悪くはないのだけれど、盛り上がらない。ドラマがいささか中途半端で、ゲーム感覚しかないのだなあ。監督はその名も「WING COMMANDER」シリーズのデザイナーとか。なんかせっかくの素材を生かし切れていない不満が残る。

*96<309>「マイ・ハート,マイ・ラブ」
ウィラード・キャロル監督・脚本。ショーン・コネリー。アンジェリーナ・ジョリー。ライアン・フィリップ。
 ちょっと「マグノリア」を思い出します。でも、あの衝撃的なカタルシスは訪れず、ハッピーなエンディングが待っています。それにしても地味な映画の印象。客もあまり入っていません。とはいえ、出演者は豪華です。
 ショーン・コネリーから始まって、「ボーン・コレクター」で人気のアンジェリーナ・ジョリー。ライアン・フィリップ、ジーナ・ローランズ、デニス・クエイド、ジリアン・アンダーソン・・。その他いっぱい。
 あれだけのメンバーが勝手に恋愛して最後に丸く収まる。まあ、昔風に言えば「世話物」って奴でしょうか。だから、どうなんだ。人それぞれ。それだけです。いい映画なんだけど。「ちぇっ」と心の中のどこかで自分が叫んでいます。

*97<310>「発狂する唇」
佐々木浩久監督。三輪ひとみ。阿部寛。大杉漣。鈴木一真。
 少女連続殺人の猟奇事件が発生。犯人の青年の妹たちはマスコミの餌食にされて、晒し者にされている。そこで、妹は霊媒師の力を借りて真犯人探しを始めるが。超能力、スパイ映画もどきのFBI登場、そしてカンフーまで入り乱れる。なにより凄まじいのはエログロでしょうか。何考えているんだろうか、ってな破壊衝動がノンストップで展開します。
 三輪ひとみちゃん。よく知りませんが、将来が心配です。FBIの大佐役の大杉漣さん。レオタードで遊びます。面白いというべきか、アホらしいというべきか。どちらとも言える作品です。意欲作というより、まさにクレージーな一品です。

*98<311>「エリン・ブロコビッチ」
スティーブン・ソダーバーグ監督。ジュリア・ロバーツ。アルバート・フィニー。アーロン・エッカート。
 ついてない女。結婚と離婚2度、子供3人、無職。そんな彼女は交通事故で車をぶつけられても賠償金を取れない。やむなく押し掛けた弁護士事務所で見つけた奇妙な不動産売買。そこからエネルギッシュな活動が始まり、紆余曲折ありラストでめでたしめでたし。
 なんだかんだと言って、これはジュリア・ロバーツ賛歌です。いかに彼女が燃えているか、これでもかこれでもか、と進みます。こんなイケイケ女にかかったら、みんな負けます。そういうイケイケ女の映画になっています。実話だそうです。似てますが、トラボルタの「シビル・アクション」のほうがきっといい映画のはずですが。

*99<312>「現実の続き夢の終わり」
陳以文監督。水野美紀。柏原崇。葵岳動。段釣豪。李立群。
 台湾人マフィアと取引中の日本人ヤクザが襲われた。金を奪われ、1人が殺された。マフィアの中の思惑が交錯して事件が闇に葬られようになったところに女がひとり。殺されたヤクザの愛人・加奈子だった。彼女は日本人フィクサーの高橋に助けられ、銃を手に復讐の戦いへと進む。
 ヤクザ映画らしい。しかし、なんとも盛り上がらない。話がトロトロして、なんともスカッとしないのだ。その原因はたぶん、日本人がどうも風景になじめないのだ。浮いたまま下手な演技をしている。これが台湾マフィア同士の復讐戦なら、もう少し面白くなったろうに。日本人を主役にした企画の失敗だろうか。

*100<313>「ミッション・トゥ・マーズ」
ブライアン・デ・パルマ監督。ゲイリー・シニーズ。ティム・ロビンス。ドン・チードル。コニー・ニールセン。
 2020年火星の旅。しかし、第1陣は謎の砂嵐に巻き込まれて遭難してしまった。そこで、急遽、生き残ったと思われる1人のクルーを救うべくミッションを派遣した。だが、彼らもまた飛行中のトラブルに遭い、犠牲者を出す。それでも火星に到着した彼らは、この星に残されたメッセージを発見するのだ。
 なんとも不思議な映画だ。「未知との遭遇」の火星版というのか「ルーツ」というのか。とにかく火星の雰囲気は出ていましたよ。神聖な気持ちにもなりましたよ。だから? なんというか。反則技のヒールがクリーンファイトのベビーフェイスを演じて見せた。あやしいぞ、ブライアン・デ・パルマ!

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