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北海道文学を中心にした文学についての研究や批評、コラム、資料及び各種雑録を掲載しています

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シネマミーハーらくがき帳 1999〜2003
 なんというか、映画に嵌まっていた頃があり、雑文を書きまくっていた。

 シネマ・グラフィティ・ノート 2000年 その8  

*101<314>「スティグマータ/聖痕
ルパート・ウェインライト監督。パトリシア・アークエット。ガブリエル・バーン。ジョナサン・プライス。
 ワシはキリスト教徒でもないし、知ってのとおり信仰心もない。だから、ね。キリストの傷を再現するスティグマータなんてケケケだ。でもね、スティグマという言葉は好きで、今風のトラウマなんかより使っているのだ。どうでもいいか。だいたい信仰をめぐる映画ってのは、裏に別のシナリオがある。
 こちらは、誰が見ても文句なしにパトリシア・アークエットのセクシーショーだね。匂い立つような裸身、誘う唇。そして痛みが絶頂に変わっていくエクスタシー。言葉を伝える者なんかに憑依されて、なんか言ってはいけない***を口にする。禁忌を超えてエロスが立つって、わけさ。それにしても 「グッバイ・ラバー」 にしても目立つなあ。これはオカルトでも信仰映画でもない。アークエットを楽しむ映画なのだろう。

*102<315>「ピンチランナー」 
那須博之監督。モーニング娘。=中澤裕子。安倍なつみ。飯田圭織。保田圭。矢口真里。市井紗耶香。後藤真希=。押尾学。松坂慶子。
 アイドル映画なんだろうな。「モーニング娘。」主演の駅伝に挑戦する少女たちの物語。学校や家庭などに問題を抱えながら、走ることを通じて成長していく。
 ここでは、かつてのスポ根モノにありがちな、がむしゃらな鍛錬はない。淡々とやって、結果的には参加することに意義あり、というレベルで終わる。クライマックスの駅伝シーンも迫力なく、むしろギャラリーの追っかけ小僧がにぎやか。まあ、旬だからいただきます。でも時期を外れたら、まずいな、きっと。


*103<316>「インサイダー」
マイケル・マン監督。アル・パチーノ。ラッセル・クロウ。クリストファー・プラマー。
 米国CBSの人気ニュース番組「60分」のディレクターにアル・パチーノ。米国大手たばこ会社の元幹部の科学者にラッセル・クロウ。その2人ががっちりとぶつかり合う。
 たばこ会社の健康被害を省みない姿勢に怒りを覚えた元幹部は内部告発を決意する。それに対して、内外からの膨大な圧力が加わるが、2人は時にはくじけそうになりながら
 真実を伝えようと進んでいく。
 うーむ。米国ってのはわからん。こんな告発ものが映画化されるとは、商業主義は侮れない。告発者と報道者との人間ドラマが見事だが、なんとも男の生き様がカッコイイ。とりわけアル・パチーノは背が低いのに最高だね。ワシらも、ちょっと日和すぎの毎日かなあ。過去を振り返るおじじキャスターになっちゃ、おしまいだね。

*104<317>「ナインスゲート」
ロマン・ポランスキー監督。ジョニー・デップ。エマニュエル・セイナー。ジェームズ・ルッソ。
 本の探偵が悪魔の祈祷書の謎を追って、ヨーロッパを旅する。コルソはコレクターから「ナインスゲート」と題された希覯本を見せられる。それは世界に3冊しかない悪魔の書だが、その真贋を調べて欲しいと頼まれる。だが、訪れた蔵書家は次々と謎の死を遂げる。周囲には怪しげなヒットマンがうろつき、また正体不明の美女が彼を助けるのだった。
 なんというか、本の世界のフェティシズムがよく伝わります。でも物語はつまらないす。ミイラ盗りがミイラになる。っていうとネタバレかしら。もう少しエロスの香りが濃厚なほうがうれしいのだが。むしろ死を臭わせているのだが、それがなんとも中途半端でした。

*105<318>「プロポーズ」 
ゲイリー・シニョール監督。クリス・オドネル。レニー・ゼルウィガー。ジェームズ・クロムウェル。
 男はみんな野生馬だって。足かせされて生きるなんてまっぴらだ。んん? なんか違わない? 最近の女権時代にそんなアホなこと言ってていいのか。うむ。これはそうした時代に背を向けた男のしたい放題のコメディである。一応、最後に女にオマージュを捧げるのですが。
 それにしても、これだけの脳天気な映画が成立したのは奇跡だな。ブルック・シールズにしてもマライア・キャリーにしてもキョーレツですが、困るな。レニー・ゼルウィガー嬢、「母の眠り」で頑張っていましたね。本作はつまらない男と、よく結婚する気になったのが不思議です。


*106<319>「ジェネックス・コップ」
ベニー・チャン監督。ニコラス・ツェー。スティーブン・フォン。サム・リー。グレース・イップ。仲村トオル。
 武器の横流しと香港の黒社会の抗争。その裏には日本人ヤクザが絡んでいるらしい。犯人探しの特別任務に就いたのは、ちょっと精神の不安定な刑事と3人の新人類デカ。殺された潜入刑事の妹も加わり、激しい戦いに突入する。
 香港のニューウェーブらしいのですが、今ひとつこなれていません。なんか安っぽいアイドル映画っぽさもあって、いけません。でも俳優はよかったなあ。
 「メイド・イン・ホンコン」のサム・リーはすっかり印象が変わっています。Y2Kという名前のグレース・イップちゃんは内田有紀ちゃん似です。仲村トオルもニヒルなヤクザを演じています。それにしても日本人って、人殺しの末裔ですね。そのことが痛い。ジャッキー・チェンは無理して顔を出さなくてもよかったのに。

*107<320>「エニイ・ギブン・サンデー」 
オリバー・ストーン監督。アル・パチーノ。キャメロン・ディアス。デニス・クエイド。ジェイミー・フォックス。
 アメラグに生きる男たちの美学を熱く熱く。「無駄に生きるな、熱く死ね」って、か。
 個人プレーに生きる若い選手に、チームの生き方を説くコーチ。勝った、負けたと騒ぐじゃないよ、男にはもっと大切なものがある。プライドって奴だな、きっと。
 オリバー・ストーン監督はこんなにストレートだったかしら。とにかく賑やかにテンポ速くたたみかけます。飽きませんが、ちょっと疲れます。それにしてもアル・パチーノ。語りまくっています。エライ! あっつ、ワシは体育会系ダメなのね。で、熱くなれませんでしたね。

*108<321>「ノー・ルッキング・バック」
エドワード・バーンズ監督・脚本・主演。ローレン・ホリー。ジョン・ボン・ジョビ。ブライス・ダナー。
 ウェートレスをしながら、同棲している女性が一人。でも夢は町を出てはばたくこと。そこに昔の彼氏が戻ってきて、心乱されながら本当の自分を探していく。
 アメリカ映画のようですが、ちっともそうでない。寂れた町の風景や冷厳な海辺などは、どうみてもイギリスかアイルランドのノリ。
 シンプルですが、結構、ハートにきます。
 製作総指揮はロバート・レッドフォードさん。うーん。個人的には対幻想が好きなのですが、時代はやっぱり女の自立なんですかねえ。

*109<322>「マン・オン・ザ・ムーン」
ミロシュ・フォアマン監督。ジム・キャリー。コートニー・ラブ。ダニー・デビート。
 ローレン・ホリーを見た後に元夫のジム・キャリーだ。うーむ。札幌・帝国座の地下と地上で「インサイダー」と「エニイ・ギブン・サンデー」やっているのと同じようなつながりか。
 アメリカのエンターテイナーのアンディ・カフマンを知らないのでなんとも仕方がない。でも面白かったし、泣けましたね。世間に対して笑いを武器に生きていく変人がたどる自己悲劇のような。痛み。作用があれば反作用があるというわけだけど。この人のパフォーマンスが先駆的だったかどうかはよくわからない。そうありたかったことだけは、ジム・キャリーの熱演で伝わった。
 ジム・キャリーって、凄い役者だ。「トゥルーマン・ショー」や「マスク」ではわからなかったけど。笑ったのは分身のトニー・クリフトンの芸って? だけど! って感じだね。

*110<323>「クロスファイア」
金子修介監督。矢田亜希子。伊藤英明。桃井かおり。原田龍二。吉沢悠。
 宮部みゆき原作の映画化。
 超能力パイロキネシス(念力発火能力)を持つ女性、青木淳子。恋人の妹を殺されたことから復讐に立ち上がる。刑事と別の超能力者に挟まれ戦い抜いていくが。事件の裏にはさらに複雑な陰謀が渦巻いていた。
 あたしゃ、超能力など信じていませんから、あんだけ火が燃え上がるとなあ。
 主演の矢田亜希子さん。超能力者の暗い感じをうまく出していたか。顔は今ひとつなんですが、スタイルがカッコイイのですよ。警官役の永島敏行や石橋蓮司が「過激派」なんていうと「お前だろ」って突っ込みたくなります。でも破壊願望みたいのは、よく分かる気がしますので、気分は悪くない映画です。

*111<324>「グラディエーター」
リドリー・スコット監督。ラッセル・クロウ。フォアキン・フェニックス。コニー・ニールセン。
 グラディエーターとはローマ帝国の剣闘士のこと。市民のための享楽の道具となったコロセウムで命をかけて闘う戦士たちだ。
 将軍マキシマスは皇帝アウレリウスの後を継いだコモドゥスに厭われる。妻子は殺され、本人も危うく逃げ延びたが、奴隷とされ最後はグラディエーターに。次第に人望を集めながらローマへと入城。ついに残虐な皇帝と対決することになる。
 壮大なスペクタクルというやつだ。物語はわかりやすいし、結末も想定される限度というレベルだ。NHKの大河ドラマを見た後のようなものか。金かけたね、凄いね、勉強になる。

*112<325>「鬼教師ミセス・ティングル」
ケビン・ウィリアムスン監督・脚本。ヘレン・ミレン。ケイテイ・ホームズ。バリー・ワトスン。
 「スクリーム」「ラストサマー」の青春サスペンスの鬼才が初メガホン。
 奨学金をもらいたい秀才の女生徒がふとした弾みで試験問題泥棒に。相手は誰もが恐れる歴史の鬼女教師。クラスメート2人と頭と体を使っての戦いが始まる。
 これは舞台劇か何かにすれば面白かったのだろうが。映画としてはなんとも散漫で、つまらないな。本当は辛辣なディベートが隠蔽したがる常識を砕いていくのだろうが。そのラディカルさが出ていない。友情やら優等生やら、鬼教師のインチキぶりがもっと徹底的に暴露できただろうに。

*113<326>「NAGISA」
小沼勝監督。松田まどか。稲坂亜里沙。片桐夕子。根岸季衣。芦川よしみ。
 村上もとか原作漫画の映画化。
 12歳の少女が過ごす江ノ島の一夏の経験。レコードプレーヤーが欲しくて始めた海の家でのバイト。入り江での水泳と、漂着物を集める少年との出会い。不良の兄さん姉さんたちとの背伸びしたパーティー。居酒屋を営む母とのこころの触れあいと揺れ。バックに流れるのは60年代のポップス。「恋のバカンス」である。
 いい映画だけど、風俗だな。もっと、女の子の心をざらっと描き出せたのに、浮力がついている。これはないものねだりだけど。

*114<327>「2番目に幸せなこと」
ジョン・シュレジンジャー監督。ルパート・エベレット。マドンナ。ベンジャミン・ブラット。
 どうもなあ。シングルマザーのマドンナ。ゲイ系のルパート・エベレット。2人が自分の適性を出しながら、そんな2人の幸せの形を求める。男と女はセックスなしにも一緒になれるよね。でも、心の嫉妬は止められない。そこだな、問題は。
 だから、結構、面白いドラマなんだけど。子供がキーワードになっているのは、つまらないな。これじゃ、家族戦争だもんな、最終的には。最初に子供ありき、で、失敗かな。結局、1番の解決策なんてないのを描いたのは正解だと思うけど。

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