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北海道文学を中心にした文学についての研究や批評、コラム、資料及び各種雑録を掲載しています

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シネマミーハーらくがき帳 1999〜2003
 なんというか、映画に嵌まっていた頃があり、雑文を書きまくっていた。

 シネマ・グラフィティ・ノート 2002年 その2  

*16<486>「マリー・アントワネットの首飾り」
チャールズ・シャイア監督。ヒラリー・スワンク。サイモン・ベーカー。ジョエリー・リチャードソン。クリストファー・ウォーケン。
 18世紀フランスのルイ16世の時代。啓蒙主義に傾いたために領地を王族のために奪われたヴァロア家の娘ジャンヌ。孤児になって育てられたが、なんとか伯爵夫人に収まる。しかし、彼女の夢は領地を取り戻してのお家再興。機会あるごとにマリー・アントワネットに近づこうとするが相手にされない。
 ひょんなことから知り合ったジゴロのルトー。そしてアントワネットに高価な首飾りを売りたい宝石商、宰相になるのが夢の枢機卿。彼らを利用してのジャンヌの陰謀が繰り広げられる。
 この物語のオチはジャンヌが犯罪者として裁かれる以上に、マリー・アントワネットが民衆の怒りを買い、結果的には処刑されてしまうことです。ドラマチックな時代の部分を描くに、この作品は失敗しています。時代の運命に翻弄されるダイナミズムが伝わらないのです。

*17<487>「キリング・ミー・ソフトリー」
チェン・カイコー監督。ヘザー・グラハム。ジョセフ・ファインズ。ナターシャ・マケルホーン。イアン・ハート。
 高名な登山家と交差点で出会い、ビビビ。ウェブ・デザイナーのOLは同棲男を捨てて彼に走る。情熱的なセックスの日々に溺れるが、結婚するとともに脅迫状やら不穏な事件が。登場するのは彼の姉、そして元のカレ、女性記者、登山仲間くらい。それで犯人を捜せと言うのだからネタはバレバレ。
 なにせレイプされた女性がヒントを出しているし。そんなわけでミステリーのおもしろさよりは、前半のセックスシーンが見せ場です。ジョセフ・ファインズは相変わらずモテモテだなあ。ヘザー・グラハムは「フロム・ヘル」に続き、セクシーで絶好調だなあ。

*18<488>「ラットレース」
ジェリー・ザッカー監督。ローワン・アトキンソン。ウーピー・ゴールドバーグ。キューバ・グッディングJr。
 ラスベガスのオーナーの思いつきで金の硬貨が出ると、さあ大変。賞金200万ドルのレースに出されることに。それはルールなし、一番早くニューメキシコの町に着いた者の勝ち。裏では世界の富豪たちが、その参加者たちの誰が勝つか賭けているというわけ。
 予想どおりドタバタの競争が繰り広げられるわけです。ナチスねたなんか笑えます。でもラストが飢えた子供たちを救えるかです。普通の賭けに飽き道楽に走る金持ちたちにも、飢えた子供は救えるよ、というわけ。社会派のオチがいいか悪いかは別にして。監督のアホやりながら、まじめな気持ちがわかりましたね。

*19<489>「アメリカン・スウィートハート」
ジョー・ロス監督。ジュリア・ロバーツ。キャサリン・ジータ・ジョーンズ。ジョン・キューザック。ビリー・クリスタル。
 シネマのベストカップルが別れてしまい、関係者は大弱り。新作のPRのため、2人の仲を元にもどそうと、宣伝屋が大プロジェクトを組む。しかし、女優にはスペイン男の愛人がいるし、男優はひょんなことから女優の妹を好きになってしまったから、さあ大変。
 結局、妹役のジュリア・ロバーツがめでたくゴールインするのですが、なんか芝居ががっているだけに内容がないというか、本当の映画業界ってのは、こんな生やさしいもんじゃないだろうに、って感想です。

*20<490>「ロード・オブ・ザ・リング」
ピーター・ジャクソン監督。イライジャ・ウッド。イアン・マッケラン。リブ・タイラー。ヴィゴ・モーテンセン。ケイト・ブランシェット。
 J・R・R・トールキンの名作「指輪物語」の映画化。いわゆるロールプレイイングゲームの元祖のようなもので、「ドラゴン・クエスト」やら「スター・ウォーズ」などに影響を与えたとされる。だが、それに関する評論は読んでいるが、作品は読んでいない。
 全宇宙を破壊すRほどのエネルギーを持つ指輪。これを多くの種族が争ってきたが、ひょうんなことからホビットという小人族の手に渡る。それを受け継いだ青年フロドが冥王サウロンの手先の邪悪な者たちと戦いながら指輪を遠ざけるために戦い抜く。この息をもつかぬ戦いが、RPGの元となる。
 とはいえ、映画もスケールはでかいが、なんかその壮大さの割に具体的ものが薄い。3時間は疲れた。
 イライジャ・ウッドは「パラサイト」に出ていたのだ。(テレビでパラサイトを見て知ったのだけれど)

*21<491>「エネミー・ライン」
ジョン・ムーア監督。オーウェン・ウィルソン。ジーン・ハックマン。ガブリエル・マクト。
 ボスニア紛争に監視行動を取っている米国軍。停戦の最中に写真撮影中の偵察機が航路を離れたところ、ミサイルで撃墜されてしまう。2人の搭乗者のうち、負傷した乗員の1人は処刑され、もう一人はからくも逃げ出す。
 紛争を拡大したくないNATOと部下を救いたい米軍の葛藤。内乱の国家の敵軍中をいかに脱出するか。見放された乗員を最後は海兵隊が救出に向かう。
 そんな一応のストーリーが戦争と言うよりはプローモーションフィルム、アクション映画として展開される。セルビアは案の定の悪役ですし、米軍は脳天気でいて、結局は英雄です。娯楽映画としては見られますが、これは戦争映画ではありません。戦争映画のこころがありません。

*22<492>「アメリ」♂♂
ジャン・ピエール・ジュネ監督。オドレイ・トトゥ。マチュー・カソヴィッツ。リュフュス。ドミニク・ピノン。
 銀座の小劇場で見ようと思っても、いつも整理券をもらわなければダメという。それが上映館が錦糸町にも拡大され、ようやく見ることができた。
 アメリはフランスの女の子。神経質な父親と情緒不安定な母親に育てられ、世間から隔絶されてしまった。このため、外界との交わりがうまくできない、恋人もいない夢想家。
 ふとしたことから40年前の宝箱を見つけたことから人生を変えようと歩み出す。盲人の手を引き、未亡人に愛の手紙を届け、不器用な八百屋の青年を助ける。駅の証明写真売り場で見かけた変人青年にビビビと来て、恋のうちあけ大作戦が始まる。それが、ほほえましいというか、そう思えたらみんなファンになってしまうわけだ。
 ジャン・ピエール・ジュネ監督は「エイリアン4」を撮った。本作は本当にワンカットワンカットにファンタジーがあふれている。心のどこかには「なんだい、このカマトト映画」という気持ちがないわけではないが、スクリーンを動く個性的な人物たち、それを飾る小物を含め、とっても楽しい。

*23<493>「マルホランド・ドライブ」
デイビッド・リンチ監督。ジャスティン・セロウ。ナオミ・ワッツ。ローラ・エレナ・ハリング。ロバート・フォースター。
 2時間26分。こりゃ、長い、と心配しましたが、そこそこでした。なにしろデイビッド・リンチ監督の世界がストレートに広がり、飽きない飽きない。でも、これってハリウッドの夢魔の世界だわ。謎解きはしてもしょうがない。時間と空間が捩れているうえに、悪魔やら小人やらが出てきて、まったくリンチそのものです。
 ブルネットの美人が殺されかけ記憶喪失に。そこに女優を夢見てブロンド娘がハリウッドにやってくる。奇妙な同棲のなかで身元探しが始まる。るんるんのじいさんばあさん。魔がうごめくファーストフード店。リストをあさる殺し屋。怪しげな映画オーディションと監督の受難。アパートの謎の死体。録音された劇場。浦島太郎の玉手箱。それが封印を解かれたとき、時間が捩れる。
 でもそれってハリウッドそのものじゃん。それにひたれるのが快感の」映画です。

*24<494>「ブラックホーク・ダウン」
リドリー・スコット監督。ジョシュ・ハートネット。ユアン・マクレガー。トム・サイズモア。エリック・バナ。
 リドリー・スコットは「グラディエーター」「ハンニバル」などでおなじみの監督。
 1993年10月、ソマリア内戦に介入したアメリカ軍はてひどい反撃を受ける。首都モガディシオで地元民兵組織の幹部逮捕の強行作戦に挑む。ところが、最新鋭のヘリ「ブラックホーク」は撃墜され、精鋭部隊の兵士たちも孤立してしまう。そこで繰り広げられる戦闘を徹底的に描き出す。
 米国的な世界の警察官の大義も顔を出すが、それ以上に戦争の空しさが伝わってくる。とにかく次々と沸いてくる反米民衆。武装の高度化がもたらす地域紛争の絶望的状況が悩ましい。この行き場の無さは何も変わっておらず、無為のうちに死んでいく命が悲しい。

*25<495>「コラテラル・ダメージ」
アンドリュー・デイビス監督。シュワルツェ・ネッガー。フランチェスカ・ネリー。ジョン・レグイザモ。イライアス・コーティアス。
 「逃亡者」の監督がメガホンを取った。昨年2001年9月11日の米国同時テロで公開が延期されていたいわくつきの作品。でも、なんか内容から見ると、神経質になるほどじゃないなあ。
 これはコロンビアの反米ゲリラがロスやワシントンに爆弾を仕掛けるというもの。CIAと政府軍が解放軍を弾圧したことに対する報復である。そこで妻と息子を失った消防士のシュワちゃんが大活躍するというもの。どう見ても、反政府支配地域の民衆を皆殺しにするCIAのほうが悪でしょう。そこがわかっているのに、そうは描けない米国映画って、なあ。

*26<496>「光の旅人 K−PAX」
イアン・ソフトリー監督。ケビン・スペイシー。ジェフ・ブリッジス。アルフレ・ウッダード。
 ニューヨークにやってきた不思議な男。彼はプロートと名乗るが、K−PAX星からやってきたという。精神病院に入れられるが、彼の不思議な魅力に人々は癒されていく。
 医師のパウエルは胡散臭く思いながらも、彼に惹かれつつトラウマに迫っていく。そこで見つけたのは絶望的な悲劇だった。彼がK−PAX星に帰るという日、新しい悲劇が起こる。
 よくできた寓話ですし、「うそ言うな」というエピソードだらけ。それでも破綻しないのは、ケビン・スペイシーだからか。「鳩の翼」の監督らしいと言えば言えるか。

*27<497>「ビューティフル・マインド」
ロン・ハワード監督。ラッセル・クロウ。ジェニファー・コネリー。エド・ハリス。クリストファー・プラマー。
 米国のノーベル賞学者で「均衡理論」の発見者たるジョン・ナッシュの物語。プリンストン大学で独自に数学を研究して才能が認められる。しかし、米国の暗号解読の秘密任務に就いた頃から精神を病む。
 兆候は大学時代のルームメイトとその姪の女の子にまで遡る。電気ショックと薬物で精神をボロボロにされながらも、妻に支えられて徐々に回復する。そして、最高の栄誉を手にするのだ。
 ラッセル・クロウは過不足なく演じている。でも感動するが、余り残らない。狂気があまりにも美しすぎるからか。

*28<498>「アザース」
アレハンドロ・アメナバール監督。ニコール・キッドマン。フィオヌラ・フラナガン。クリストファー・エクルストン。
 1945年、イギリスの孤島。古い屋敷で一人の女性が目覚めると、家の前には3人が召使いの仕事を求めてやってくる。2人の子供たちは光アレルギーで、家中にカーテンと鍵がかけられている。ところが無人の部屋から声が聞こえたり、足音やピアノの音が聞こえてくる。家の中には家族と使用人以外の何かが存在している!
 それは−。「あんたのほうでしょ」というのがオチだ。それってのは「シックス・センス」でしょ。確かに怖いけれど、ネタは途中からバレバレでしたねえ。
 トム・クルーズが製作だそうで、なにか懐かしいですね。この顔ぶれ。監督は「バニラ・スカイ」のオリジナルの「オープン・ユア・アイズ」の鬼才。

*29<499>「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」♂♂
原恵一監督。臼井儀人・原作。声・矢島晶子。ならはらしみき。藤原啓治。こおろぎさとみ。
 今回は野原信しんのすけ一家が戦国時代にタイムスリップ。春日部の地にあった春日の城の姫・廉、その幼馴染みで家臣の又兵衛を助けて大活躍する。
 前回の「嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲」も凄く良かったが、今作も凄い。思いが通じてタイムスリップという前提、そして役割を果たしての帰還の首尾一貫もよい。
 さらにはしんちゃんの相棒となる又兵衛の姫に寄せる思い、そして武士の宿命。ラストシーンのハッピーエンドが一発の銃弾で引き裂かれるのもいい。
 しんちゃんは世知にまどわされることなく本音で迫る。好きなら好きと言えばいいじゃないか。一番偉い人が逃げるなんて、こんだけの騒ぎを起こしておいて逃げるなんて卑怯だ。もうやっつけたんだから殺さなくてもいいじゃないか。
 しんちゃんの言葉はまさに時間を超えて響いてくる。「千と千尋の神隠し」にしろ宮崎アニメはアニミズム賛歌。でも、クレヨンしんちゃんはヒューマニズム。ヒューマニズムのラディカリズムを見事に突きつけている。
 戦国大合戦というだけに戦闘シーンも手抜きなし。子供向けのアニメでそこまでやるかというくらいに、丁寧に描いている。クレヨンしんちゃんは状況を撃つレベルに達している!

*30<500>「陽だまりのグラウンド」
ブライアン・ロビンス監督。キアヌ・リーブス。ダイアン・レイン。
 ばくちで身を滅ぼしかけた男がひょんなことからシカゴのスラムの少年野球チームのコーチに。週500ドルのための身すぎだが、いつしかそれにはまってしまって。自分の生き甲斐を子供たちを通じて見いだすようになる。
 別に感動作というわけじゃないんだけど。なんかスラムでも明るい日差しの射したグラウンドがいい。野球ってのは、人間を一生懸命にする魅力があふれている。子供たちもいいなあ。キアヌ以上に。監督は「バーシティ・ブルース」でヒット・メーカーになった。

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