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北海道文学を中心にした文学についての研究や批評、コラム、資料及び各種雑録を掲載しています

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シネマミーハーらくがき帳 1999〜2003
 なんというか、映画に嵌まっていた頃があり、雑文を書きまくっていた。

 シネマ・グラフィティ・ノート 2002年 その5  

*61<531>「釣りバカ日誌13 ハマちゃん危機一髪!
本木克英監督。西田敏行。浅田美代子。三国連太郎。鈴木京香。丹波哲郎。
 おなじみのシリーズ。
 さて今回は富山の薬問屋の会長が美術館建設を計画。デザインをめぐるトラブルで設計士のミス・鈴木建設とハマちゃんが現地へ。会長がミスを息子の嫁にしようと企らんだことから思わぬ事態に。煮え切らないハマちゃんは窮地に追い込まれる。
 釣りバカの映画にしては、なんだか物足りない。おなじみの釣り仲間の活躍も至って少ない。なんかなあ。ミスも落ち着きすぎておもしろみに欠ける。

*62<532>「ウインドトーカーズ」
ジョン・ウー監督。ニコラス・ケイジ。アダム・ビーチ。クリスチャン・スレーダー。フランシス・オコーナー。
 第二次大戦中の激戦地・サイパン島。米国は日本軍をたたき本土・東京攻撃を狙っている。そのためには日本軍の戦力を正しく把握しなければならない。そこで担ぎ出されたのがナバホ族の若者たち。彼らの言葉で日本軍に解読できぬ暗号を使い、攻撃に役立てようとする。暗号兵を守り、彼らが捕まるのならその前に殺す使命を海兵隊員が帯びた。その数奇な運命を担わされた二人の信頼をかち取るまでのドラマ。
 戦闘シーンはプライベート・ライアン以降のレベルを必ずしも保っていない。人間ドラマも本当の友情が芽生えたか、疑問だ。ついでながら、インディアンと白人の和解を引き合いに出して、日本と米国は五〇年もしたら同盟を結んでいるか、なんてせりふもつまらぬ冗談だ。馬齢を重ねてきたせいか日本人がいかに悪役とはいえ殺されるのを見るのはつらい。日本以上に悪役のドイツ人なんかは米国戦争映画をどう考えているのかなあ。ちょっと悩ましい。

*63<533>「ピンポン」
曽利文彦監督。宮藤官九郎脚本。窪塚洋介。ARATA。サム・リー。中村獅童。大倉孝二。竹中直人。夏木マリ。
 人気漫画の映画化とか。卓球オタクの少年コンビがライバルたちと戦いながら成長する。内向的な少年が実は才能を秘めていたり、丸刈りファイターが実はすがすがしかったり。どれもキャラが予想の範囲内で動いている。
 結局、ヒーロー漫画だな、って感じだ。先日、ひょんなことからナマの中村獅童さんを見たが、意外とかわいい。映画では強面演技だったので、ちょっとびっくりしたね。

*64<534>「オースティン・パワーズ ゴールドメンバー」
ジェイ・ローチ監督。マイク・マイヤーズ。ビヨンセ。マイケル・ケイン。トム・クルーズ。
 おなじみ007になりきおバカさんのスパイ・オースティン・パワーズ。今回も極彩色のストライプ・スーツで2002年と1975年、そして英国・米国・日本を走り回る。で、ゴールドメンバーってのは、金のタマキンを持つ男ってメチャクチャ。
 ドクター・イーブルが地球を壊そうとするのを阻止するため、オースティン親子が秘密捜査官のフォクシー・クレオパトラのビヨンセと大暴れ? これにトムやグイネス・パルトロウやケビン・スペイシーやスイルバーグも友情出演。
 で、テーマは親子の愛は地球を救うか。イーブルとオースティンが実は兄弟であることが明かされる。いっっやあ。オランダ人の下手くそ英語を茶化しながら、たぶん日本人を笑っている。東京にいきなり富士山、きたない相撲レスラー、ボーナス好きの社長、叶ならぬファックミー姉妹。とにかくあほらしく笑える。

*65<535>「リターナー」
山崎貴監督。金城武。鈴木杏。岸谷五朗。樹木希林。
 2002年横浜。って言っても、やたら北京語が飛び交い無国籍状態の日本。そこで闇の取引に介入してぶブラックマネーを取り返してくる男・リターナーのミヤモトがいた。彼は幼い友を臓器売買で連れ去ったミゾグチを闇の組織に見つける。決着を付けようとしたときに、どこからかガキがやってくる。
 それがミリだった。彼女は82年後の未来から、宇宙人との戦争の歴史を変えようと志願してきた小さな戦士だった。猶予は3日間。侵略者の宇宙人とのファーストコンタクトを阻み、宇宙人を始末すること。その任務にミヤモトを誘い込むが、2人の前にミゾグチたちが立ち塞がる。宇宙人のパワーを悪用せんとするミゾグチたちとの死闘が繰り広げられる。
 日本映画にしてはよくできています。CGは凄いし、樹木希林の漢方薬屋のばあさんもいけてます。でも、このストーリーって基本的にはターミネーターでしょうし、宇宙人とのシーンは「E.T.」だし、ハイパーリアルな戦いはマトリックスだしなあ。困ってしまいます。

*66<536>「バイオハザード」
ポール・アンダーソン監督。ミシェル・ロドリゲス。エリック・メビウス。ジェイムズ・ピュアフォイ。
 米国の独占企業が秘密裏に細菌兵器の研究をしていた。それを何者かが盗もうとして、そのTウィルスが漏れてしまう。このため研究所の人間はウイルスに感染してゾンビになってしまう。クイーンコンピュータによって遮断された施設へ特殊部隊とともに記憶を失った主人公の女性も入ることに。
 次々と襲いかかるゾンビとコンピュータの悪意から彼女は逃げ延びることができるか? まさにゲーム感覚でストーリーは展開していく。ありふれた設定に臨場感を与えているのはその画像だ。コンピュータから見る感じがよくでている。もっとも音響は過剰で、この音がなければ−という感じもある。
 主役のミラ・ジョヴォヴィッチは全力投球だが、もう少し別の魅力がだせたような気がするのだが。「ガールファイト」のミシェル・ロドリゲスは、だんだん実力が認められつつあるようだ。

*67<537>「スパイキッズ2 失われた夢の島」
ロバート・ロドリゲス監督。アントニオ・バンデラス。カーラ・グギノ。スティーブ・ブシェミ。
 前作「スパイキッズ」でスパイの両親を助けるために立ち上がった姉弟コンビがキッズ・スパイとして大活躍。トランスムッカーという武器の能力を奪ってしまう秘密兵器を取り戻すために立ち上がる。立ち塞がるのはライバルのキッズとスパイ組織の局長。そして探し求める秘密兵器があるのは、ヘンテコ怪獣が跋扈する謎の島。姉弟は今回も新兵器を駆使して暴れ回る。
 仲良し家族は今回も健在、おまけに祖父母まで出てくる。家族そろって見ろよ、っていう意味か。謎の島でヨレヨレで暮らしている科学者がスティーブ・ブシェミ。相変わらずいい味だしてます。

*68<538>「インソムニア」
クリストファー・ノーラン監督。アル・パチーノ。ロビン・ウィリアムズ。ヒラリー・スワンク。
 始まりは髪を洗われ爪を切られた17歳の少女の死体だった。
 キャッチフレーズはいいよ。小型機が氷山の続く海を飛び白夜のアラスカに入っていくシーンもいいイントロ。でも後はつまらない。長すぎるというくらいに退屈だ。犯人探しはすぐわかるし、どんでん返しもパンチ不足。悪徳刑事はやっぱりいい人なんだって、ラストもいただけない。こんなんで不眠症だなんて、おかしいぜ、って感じだ。

*69<539>「アバウト・ア・ボーイ」
ポール・ウェイツ&クリス・ウェイツ監督。ヒュー・グラント。トニ・コレット。レイチェル・ワイズ。ニコラス・ホルト。
 ウィルは38歳。一曲ヒット作曲家の父親の印税で暮らしている気楽な独身無職男。マーカスは12歳。情緒不安定なシングル・マザーに育てられ悩み多き孤独な少年。ウィルがシングル・マザーはねらい目と子持ち男を装ったことから、2人は出会う。無視しあいながらも、次第に理解しあう二人。そこに、さまざまな女性たちが絡む。
 人間一人じゃ生きられないってのが結論。コミカルな中にしんみりするのがいい。「ブリジット・ジョーンズの日記」の男性版との触れ込み。ヒュー・グラントは「ノッティング・ヒルの恋人」で好演していたね。

*70<540>「チョコレート」
マーク・フォスター監督。ビリー・ボブ・ソーントン。ハル・ベリー。ヒース・レジャー。ピーター・ボイル。
 男は州立刑務所の看守。しかも親子三代の。しかも人種差別主義者。元看守の老父は白人が敷地に入ることすら嫌い、男はその意を受けて銃を持ち出す。息子はそんな父と祖父に似ず、黒人にも優しい青年。絵の好きな死刑囚の刑を執行する日、息子は吐いて勤務を放棄してしまう。そのことを責めた男に対して、息子は「あなたは僕を嫌っていたが、僕は愛していた」と言い残して自殺してしてしまう。
 女はその死刑囚の子持ち妻。雨の夜、肥満児の息子が車に轢かれ死にそうになり、叫んでいるところを男が車で通りかかる。その不幸な二人が心を寄せ合っていく。老父は「ニガーとやらなきゃ男じゃない」と差別意識を丸出しに女を虐める。だが、彼は所詮、半身不随・呼吸困難に襲われ死にいく身だ。男は老父を施設に入れ、女を自宅に迎え入れる。そこで、女は男が自分の夫を死刑にした看守と知る。
 なんかできすぎの物語だが、抑えた色調の映像とカメラワーク、そしてビリー・ボブ・ソーントンがうまい。頑固な差別主義は基本的に個人の問題ではなく環境の問題だと思うのだ。そこは甘い。ラストシーンの二人はうまくいきそうだ、という言葉に危うさを感じた。
 原題は死刑前夜に気の重くなる看守らがする空騒ぎ(モンスターズボール)の意味。邦題は女の皮膚の色と男の大好きなアイスクリームの種類から。ビリー・ボブ・ソーントンは「バーバー」でも不条理な運命に翻弄される男を好演。ハル・ベリーは「ソード・フィッシュ」で悩殺美人を好演していたが。アカデミー賞を取ったが、ビリー・ボブ・ソーントンの演技がなければ無理だったろう。

*71<541>「イン・ザ・ベッドルーム」
トッド・フィールド監督。トム・ウィルキンソン。シシー・スペイセク。マリサ・トメイ。ニック・スタール。
 メイン州に住む医師のファウラー夫妻を襲った悲劇。一人息子の大学生フランクが人妻に恋して凶暴な元夫に銃殺されてしまう。犯行現場を誰も見ていないために、暴力夫は保釈され、判決も殺人罪には問われない軽いものになりそうだ。夫婦は感情を押し殺し、重い痼りとなって息子の死がわだかまっている。その重苦しさを映像はじっくりと長く続ける。長い!
 そして夫婦が心を開きあった後、夫は友人の協力を得て暴力男を拉致して殺害する。朝方、家に戻ると、ベッドでは何も知らぬはずの妻が起きてタバコをふかして待っているのだ。晴れ晴れとした妻に対して夫は、暴力男の家にあった人妻との楽しそうな写真を複雑に思い出している。
 人間の罪と救いのなさが見事に浮かび上がる。でも疲れた。結構、苦痛だ。監督の狙いどおりだろうが、純文学は重い。

*72<542>「サイン」
M・ナイト・シャマラン監督。メル・ギブソン。ホアキン・フェニックス。ローリー・カルキン。アビゲイル・ブレスリン。
 ある朝、目覚めると、家の周りのトウモロコシ畑に巨大なミステリー・サークルが出現していた。それをきっかけに、男の周りでは奇妙な出来事が続いておこりだす。怯える息子と娘、そして弟。調査にやってきた女警官は言う。「この家にはいろんなことがあったから」と。すなわち、男の妻は居眠り運転の車に轢かれ、死んでいた。彼女は夫に「見て」、弟には「打って」と言い残していた。
 本編のテーマは、偶然は存在するのか。すべては何かの<サイン>じゃないか、ということ。で、死んだ妻の予言は成就され、男は農夫から神の使いに戻るのだけれど。それにしても、ミステリー・サークルはあっさり宇宙人によるものとなってしまう。宇宙人が水に弱いなんて、あほらしいコントだなああ。
 監督は「シックス・センス」で驚かせたが、「アンブレイカブル」で彼が無敵なのはアメコミのヒーローだからってオチで観客を呆れさせた。

*73<543>「ブレッド&ローズ」
ケン・ローチ監督。ピラール・パディージャ。エルピディア・カリージョ。
 ケン・ローチ監督はいつも凄い。労働者を信頼して、国家や組織を超えた存在の大切さを描き出す。一見、形式的イデオロギー的でありそうで、人間を浮き彫りにしてみせる手腕が凄い。今回は不法入国したために最底辺に無権利状態で置かれている中南米からの米国内の移民たち。
 メキシコから姉ローサを頼ってやってきたマヤ。姉のコネでロサンゼルスの最近代ビルの清掃員となる。だが、まともな賃金は払ってもらえず、健康保険すら加入できない。解雇すら、棒頭の勝手でまかりとおってしまう。それが最近代ビル・最先端企業の裏側である。そこに学生上がりの労働運動活動家がオルグにやってくる。打ち解けない人たちが多い中で、マヤは彼に関心を持つ。
 清掃労働者たちは解雇者が出る中で、集会に参加し、次第に団結を強めていく。もちろん脱落者もいれば、裏切り者もいる。とりわけ裏切り者には、誰にも言えない辛酸としかいいようのない苦しみもあった。そして、人のために泥棒を働いたマヤは強制送還されてしまう。
 だが、最後には絶望というより生きていることの希望が示されている。中南米の移民たちの中にはエルサルバドルの移民の農民や学生と戦ったエピソードも紹介される。
 タイトルはパンを要求するが、バラもまた。という人間の尊厳を意味するスローガン。「カルラの歌」や「大地と自由」「ケス」「マイ・ネーム・イズ・ジョー」。監督は一貫している。

*74<544>「ジャスティス」
グレゴリー・ホブリット監督。ブルース・ウィリス。コリン・ファレル。テレンス・ハワード。
 極限の捕虜収容所で起こった殺人事件。その真相に挑む中尉で、法学生のハート。孤立無援の彼の戦いの行方は。
 テーマはおもしろいが実際は、できすぎの教訓映画になってしまった。なにしろ、ドイツ軍の捕虜収容所では米国とロシアの捕虜で待遇に差があったり。古株の上級士官が我が物顔で君臨している。看守と抜け荷の取引も横行している。黒人の捕虜には白人があからさまな差別意識をむき出しにしている。
 そんな中で、部隊の秘密を自白させられ、罪の意識を背負った青年中尉が送られてくる。まもなく起こるぬれぎぬを着せられた黒人士官の処刑。そして、復讐するかのように起きた白人兵の死亡と、黒人兵士の容疑者浮上。古株の大佐は彼を軍法会議の弁護役に命じるがすべては茶番劇かのうよう。それを救うのはドイツ軍将校。彼は米国のイェール大学のOBだった。判決の日、収容所では大規模な脱走計画が進められていた。最後に責任をとるのは誰か。
 それにしても、ドイツ軍将校が立派に描かれすぎていないか? ナチズムの収容所で、ジャズが流れてのんびりBBCを聞いていて、弁護のアドバイスをしたり。35人も脱走して、軍事工場が爆破されても責任者1人の銃殺で済ますなんて、悪魔の第3帝国らしくない。称えるべきは古株の大佐なんかより、ドイツ軍将校の開明さだろう。コリン・ファレルは「タイガーランド」でも好演していた。

*75<545>「THE RING」
ゴア・ヴァービンスキー監督。ナオミ・ワッツ。マーティン・ヘンダーソン。ブライアン・コックス。
 鈴木光司の原作をハリウッドがリメイクした。呪いのビデオが引き起こす不可解な死とその謎に挑む2人の男女、霊感を持った子供。井戸の中に落ちると命は7日間か。それで7日後に死ぬのかあ。など、日本版(中田秀夫監督)で見ていながら忘れていたことが、すっきりわかる。
 怖いけれど、愛を乞う亡霊娘や、息子を助けるためには呪いのコピーをしてしまう母親の姿はせつない。

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