見逃しミーハーシネマ館 1999〜2003
なんというか、映画に嵌まっていた頃に、ビデオも借りまくっていた。
ビデオ・グラフィティ・ノート 1999−4 49~64
*<49>「インデペンデンス・デイ」
ローランド・エメリッヒ監督。ビル・プルマン。ウィル・スミス。ジェフ・ゴールドブラム。メアリー・マクドネル。
1996年米国。
もちろん劇場で見ました。でも感動がなかった。で今回ビデオで再挑戦。
ある日、巨大なUFOが世界中にやってくる。彼らは地球を侵略に来た。NY、ロス、ワシントンDCなどが次々と壊滅させられていく。これと闘うのが元戦闘機乗りのホイットモア大統領。そして天才プログラマのデビッド。さらに海兵隊のパイロット、ヒラー大尉。エイリアンの弱点を見つけた彼らはそれぞれに勇気を持って立ち向かっていく。
スケールはでかい。とにかく大きなものが好きだったのだな。ってことがよく分かる。そして、今回もやっぱり地球の侵略者への「独立記念日」がアメリカの独立記念日にダブっているのが鼻につく。そして、いかにものようにユダヤ教徒を救済の導き手にしちゃっているのもどうかだな。
こんなにイデオロギー丸出しの映画を作っていいのかな。シーンシーンの感激はあったが、底に流れている意図のようなものが最後までひっかかった。
*<50>「ディープインパクト」
ミミ・レダー監督。イライジャ・ウッド。ロバート・デュパル。モーガン・フリーマン。
ミミ・レダーさんは「ピースメーカー」の監督か。これも映画館で見ました。感動しました。
で、今回。やっぱり泣けますね。が、ドリームワークスの作品見慣れてくると、少し臭いんですね。最後の審判だもんな。ノアの箱船とメサイアとくれば、こちらもユダヤ教的ですかね。もちろん、そんな宗派的イデオロギーに関係なく感動するところはいっぱいあります。家族愛が国家レベルを超えている部分がぐっと来ます。
*<51>「絆<きずな>」
根岸吉太郎監督。役所広司。渡辺謙。麻生祐未。中村嘉葎雄。川井郁子。萩尾みどり。
白川道の原作を根岸が映画化。
絆を生きるやくざの孤独な戦いを、ジャーナリスト殺人事件を追う警部の姿を補助線にしながら描く力作。実の父と義理の父への愛憎、父親の違う妹への愛。泣ける映画だ。しかも、人間の切なさがひしひしと伝わってくる。ひとりの人間はさまざまな人間の愛で生かされている。その構造が切ない。だが、そのために人を殺める悲しさ。「人生に『もし』はない」という刑事の言葉が重く響く。
*<52>「サイコ」
アルフレッド・ヒチコック監督。アンソニー・パーキンス。ジャネット・リー。ジョン・ギャビン。ヴェラ・マイトルズ。
1960年米国。
先日、ガス・ヴァン・サント監督のリメイク版を見たばかり。そこでオリジナルを見てみようとした次第。それにしてもリメイク版は本当に原作をなぞっている。おかげで、オリジナルを見てもリメイク版のシーンが思い浮かぶという次第。
改めて思ったことはヒチコックは隙がない見事な作品を作り上げているということ。だからといって、そのままコピーしたって、いい作品にはならない。
*<53>「世界中がアイ・ラブ・ユー」
ウディ・アレン監督。アラン・アルダ。ウディ・アレン。ドリュー・バリモア。ルーカス・ハース。ゴールディ・ホーン。
1996年米国。
ウディ・アレンのミュージカル・ラブコメディー。いつもながら神経症の中年役をウディが演じて家族たちのそれぞれの愛を描く。なんとも楽しいのだが、こちらの体調がよろしくないのか。ノリきれない。それなりにはよくできているとだけ。
*<54>「誘う女」
ガス・ヴァン・サント監督。ニコール・キッドマン。マット・ディロン。フォアキン・フェニックス。
1995年米国。
上昇志向の強い女が自ら招いた悲劇を描く。クールな美人・スーザン。彼女は目的のためなら手段を選ばない。冴えない居酒屋の店主を夫にしたが、地方ケーブル局のお天気キャスターになる。そして自らの企画で高校生のドキュメントを作成して中央への売り込みを狙う。しかし、彼女の試みを邪魔する者は夫だった。そこで、彼女は高校生に夫殺しを頼んだが・・・。
ニコール・キッドマン。いやあ、セクシーでしかも押しが強く頭もよさそうな女性を演じてくれます。いましたね。こういう人たち。困ったことに自己実現に対する客観性への配慮が足りません。
ドキュメント・タッチの演出がマスコミ人間への批評になっています。うまいなあ、と思いました。マット・ディロンはおいしいようで、いつも損な役が多いような気もしました。
*<55>「プリーチング」
スチュワート・アーバン監督。ギネビア・ターナー。トム・ベル。クリスチャン・アンホルト。
1997年英国。
アメリカのレズビアン・クィーンのフェティシュな世界。タニヤは女王様としてSMショーを主催している。これを快く思わない保守派国会議員が風紀粛正に乗り出す。そのための鉄砲玉に選ばれたのがピーター。潜入してそのカルトな世界を暴いていくうちに、いつしか2人にノーマルな恋が芽生えて・・・。
あたしはフェチが苦手だ。それから「ペニスなんかいらん」というラジカルなフェミニストも。この映画はたぶん自覚的ではないにしろ愛に飢えた者たちの物語です。それが逸脱を通じて日常的なものの価値を再発見するように。めくるめくボンデージの登場する映像に圧倒されますが、
基本的には愛の物語。タニヤとピーターを軸に、国会議員と秘書に変奏されます。なんか、英国映画のやる気を感じさせる変態映画でした。
*<56>「川のうつろい」
ベルナール・ジロドー監督・脚本・主演。リシャール・ポーランジェ。アンナ・ガリエナ。アイサトゥ・ソー。
1995年フランス。
18世紀、北アフリカのフランス植民地。かの地に渡ってきた貴族の男の現地の恋人や奴隷の少女との愛情生活を描く。
「地の果て」に来た人間のニヒリズム、自問。本国の政情に揺れる思い。そして争い。黄色い川と砂漠の色、それを主調色とした映像が印象的だ。なんとも言えぬエロチシズムとリリシズムが溢れている。
*<57>「大地と自由 ランド・アンド・フリーダム」
ケン・ローチ監督。イアン・ハート。ロサナ・パストゥール。イシャール・ボジャイン。トム・ギルロイ。
1995年。イギリス・スペイン・ドイツ。
この映画を見た者は誰もがジョージ・オーウェルの「カタロニア讃歌」を思い出すだろう。スペイン共和国の死守のために闘う義勇軍民兵たち。その組織的表現たるPOUM(マルクス主義統一労働者党)。彼らは弾丸も心許ない中で、ファシストとの戦いの前線に立ち民主主義陣地を守り抜いた。
しかし、彼らを後ろから狙う者たちがいた。言うまでもなくスターリン主義者たちであり、その手先の共産党=PSCU(カタロニア統一社会党)である。POUMのみならずアナキストたちもまたスターリニストによる犠牲者となった。一国社会主義・帝国主義者との妥協を通じて、世界の社会主義革命を圧殺した者が共産党であることを忘れてはならない。
そのことをこの映画は教えてくれる。この国でも共産党と名乗る勢力がスターリン主義者であり、数々の粛清と自発的な大衆の運動を破壊してきた。ケン・ローチは静かに怒りを込めて「革命を圧殺した者」が誰であったか明確に示している。
デイヴィッドは英国共産党員として義勇兵となる。たまたまPOUMに参加するが決してトロッキストでもアナキストでもなかった。一時は共産党の防衛隊に加わる。しかし、その腐敗した姿にあきれ、再びPOUMに戻る。ここにはイデオロギー的な共産党批判ではない、現場で闘ったものの目による共産党批判の重みがある。
もし、心が弱くなって共産党的組織に妥協しそうな時代がきたらこの映画を見るが良い。そして自らの退路を断ち、屹立していかねばならない。
*<58>「東京日和」
竹中直人監督・主演。中山美穂。松たか子。中島みゆき。
荒木経惟・陽子夫妻の愛情物語。
才能がありながら恵まれない写真家と彼を支え天真爛漫に生きる妻。しかし、彼女は次第に精神と肉体が蝕まれつつある。そのことを知っているがゆえに夫は彼女との時を大切に生きようとする。もちろん葛藤もあれば諍いめいたものもある。だが、変わらないものは信頼だろうか。
竹中がアラーキーを、中山美穂が陽子を演じている。竹中の躁鬱性と、中山の分裂性が妙な言い方だが極めて自然である。つまりはいい演技をしている。正直言ってやすらぎよりいささか疲れを感じた。こうした献身に素直に感動できなくなったためだろうか。
*<59>「ダークシティ」
アレックス・プロイヤス監督。ルーファス・シーウェル。ジェニファー・コネリー。キーファー・サザーランド。ウィリアム・ハート。
太陽のない<闇の都市>。そこに、この世界の人間は生きている。娼婦殺しの連続殺人の犯人にされたマードックは、しかし、その世界が謎の生命体に記憶を操られていることを知る。「チューン」と呼ばれる超能力を身につけたジョン・マードックは1人、彼らと闘い始める。
メタモルフォーゼする建物。壮大な宇宙と虚無の空間。マードックと異星人たちとの超能力対決。そして太陽と愛の回復。近未来映画。「ブレードランナー」に代表される酸性雨の降る暗黒社会。「マトリックス」に代表されるコンピュートピア的なメカニカルな空間装置。それらを超えるカルトな面白さとヒューマンなテーマがあふれている。
*<60>「シュリーカー」
ビクトリア・スローン監督。タニヤ・デンプシー。ジェイミー・ギャノン。パリー・アレン。
朽ちかけた病院の跡地の寮に紛れ込んだ5人の学生たち。しかし、そこは過去に殺人鬼「シュリーカー」が事件を起こした場所だった。古い聖書の文字を調べていくうちに、5人は生け贄に選ばれたことがわかる。
てなわけで、おきまりの学生寮ホラーとなるわけです。「スクリーム」「ラストサマー」系の華やかさを期待したのですが。残念ながら予算が少なかったのか、狭い学生寮の中だけのおいかけごっこで終わってしまいます。若干のどんでん返しもありますが、ちょっとつなぎに見るホラーという感じです。
*<61>「カルラの歌」
ケン・ローチ監督。ロバート・カーライル。オヤンカ・カベサス。スコット・グレン。
1996年英国。
87年ニカララグアでの右派ゲリラ・コントラの暴虐は記憶に新しい。この映画はサンディニスタの側、すなわち暴虐に抗する側から民衆の姿を描いた。主演は「トレイン・スポッティング」「フル・モンティ」のロバート・カーライル。
ジョージとカルラの出会いから、イギリス・グラスゴーからニカラグアへと物語は展開していく。彼女は昔の恋人のことが忘れられない。だが、周囲はその彼のことを隠している。村をコントラが襲った後、恋人の行方を知ったカルラは1人でかけていく。ジョージは後を追うが。
ケン・ローチの「ランド・アンド・フリーダム」を見てこの作品を見た。監督の目の位置の低さがよくわかる。監督は気負うことなく人の良いイギリス人を内戦ニカラグアの泥沼に放り込んでいく。その普通の感覚が自然に民衆のいきいきとした姿や米国CIAの非道を映し出す。この世界の不条理を描いて哀切なり。
*<62>「女優マルキーズ」
ベラ・ベルモン監督。ソフィー・マルソー。ランベール・ウィルソン。ベルナール・ジロドー。
1997年仏伊ほか。
劇作家のモリエール、ラシーヌ、そして国王ルイ14世も登場する歴史物語。
ソフィー・マルソーが女優を目指してパリへ出て、その気品ある美しさと色気で国王を魅了して活躍するまでを描く。相変わらずソフィー・マルソーはなんともいえないかわいらしさと稟とした美しさがあっていい。
ストーリーも演出も、いささか落ちつきなく結局、ソフィー・マルソー映画でした。
*<63>「真夜中のサバナ」
クリント・イーストウッド監督。ケビン・スペイシー。ジョン・キューザック。ジュード・ロウ。
米国深南部の美しい街・サバナに紛れ込んだ記者が遭遇する不思議な世界。殺人事件が起きたが、その犯行をめぐる奇妙な葛藤。ホモセクシャルやドラッグ・クィーンの登場。幻想を生きているような空間感覚。深く濃い世界に魅せられていく人々。時間が止まっているかのようなイメージ。だが、しっかり因果応報。味わいたっぷりの作品である。
*<64>「ユニバーサル・ソルジャー3」
ジェフ・ウールナフ監督。マット・バッタグリア。チャンドラ・ウエスト。バート・レイノルズ。
ユニバーサル・ソルジャー計画を悪用している黒幕を捜しているリュックとテレビレポーターとの闘いが続く。劇場で「ザ・リターン」を見たばかりなので、よく分かったが。ちょっとスケールでもキャストの力量でも落ちる。シリーズだから仕方がないか。
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