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北海道文学を中心にした文学についての研究や批評、コラム、資料及び各種雑録を掲載しています

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見逃しミーハーシネマ館  1999〜2003
 なんというか、映画に嵌まっていた頃に、ビデオも借りまくっていた。

 ビデオ・グラフィティ・ノート 1999−5   65~80 

*<65>「ソウル・フード」
ジョージ・ティルマソン・ジュニア監督。ヴァネッサ・ウィリアムズ。ビビカ・A・フォックス。ニア・ロング。マイケル・ビーチ。
 南部の黒人家庭の風習としてあった「サンデー・ディナー」。シカゴに移ってからも、ビッグ・ママのファミリーはそれを続けていた。しかし、ビッグ・ママが病に倒れてから、3人娘を始めとした家族の絆はバラバラに。姉の家庭は夫婦崩壊、下の妹は夫が刑務所に。そこで、ビッグ・ママの遺言を聴いた少年が「隠し財産」をヒントに一計を案じる。
 いわゆる黒人テイストあふれた作品ですね。大家族制度が力を持つことは否定しない。だけど、オレたちはそういうものをぶち壊してきた近代の上に生きているし、そうした残滓としての「家族帝国主義」と闘ってきた世代なわけね。だから、お話としてはおもしろいけど・・で終わってしまう。
 ヴァネッサ・ウィリアムズって目ぱちくりで、凄い。「ダンス・ウィズ・ミー」って良かったけど。この作品では、ちょいと抑え気味の役柄でした。

*<66>「ケス」
ケン・ローチ監督。デビッド・ブラッドレー。コリン・ウェランド。リン・ベリー。フレディ・フレッチャー。
 1969年英国。
 ケン・ローチにはまっている。「ランド・アンド・フリーダム」に続き「カルラの歌」を見て、外れがなかった。そして「ケス」。
 今回はイギリスの炭鉱町を舞台に母親と凶暴な兄と暮らす少年ビリーの物語。新聞配達をしている少年の唯一の生き甲斐はハヤブサ。たまたま見つけて餌付けに成功した。空を自由に威厳を持って飛ぶ姿は少年の見果てぬ夢を象徴する。
 炭鉱町の労働者階級の子弟への学校教員の冷たい視線。暴力と賭事、もめごとにあふれた環境。とりわけ少年は恵まれぬ中心にいた。その彼がハヤブサにひかれていく過程がよく描かれている。そして、草原で少年と一対になって舞うハヤブサの美しさ。少年の心そのままだ。だが、その夢も約束を破ったばかりに兄によって砕かれてしまう。最後にハヤブサを埋める少年。彼は夢を埋めた後、厳しい現実へ戻るのだろうか。
 ケン・ローチのフェイド・アウトさせていく画面はいつもながら印象的だ。四半世紀にわたり、日本未公開だったという。労働者階級を見事に描いた作品に惹かれた。
 
*<67>「ヒロイン!」
三原光尋監督。室井滋。中川安奈。伊原剛志。笑福亭松之助。逢坂じゅん。
 スーパーとライバル・高ピー女の進出・出現に対して、なにわ女のガッツで立ち向かう商店街の女たちの奮闘物語。根性・人情・愛情の三位一体的展開。なにわボンバーズ対ピンク・サファイアのバレーボール対決。家庭婦人は毎日タマ遊びと自己批評しつつ、まあ、にぎやかで楽しい映画です。
 室井滋がなんの躊躇もなく、好き放題暴れまくっています。そして、周囲にはナニワらしい濃いキャラクターが勢揃い。松之助さんはカワイコちゃんのそばで独自の戦い。スポンサーがちょっとうるさい、秋元康そのものの映画でもありました。

*<68>「ミッドナイト・エクスプレス」
アラン・パーカー監督。ブラッド・デイビス。ランディ・クエイド。ジョン・ハート。
 1978年米国。
 トルコを旅行中、麻薬を運んだために、長期の刑期を科された米国青年の物語。彼は最後はひょんなことから脱獄に成功するが。最近「ブロークダウン・パレス」というタイ旅行で泣きを見る米国の小娘2人旅の同工異曲の映画を見ただけに、いやあ確かにそっくり。
 こちらはいわば不条理なものに立ち向かう戸惑いがあるのに対して、「パレス」のほうは不条理なものを甘く見たツケが出ている。
 異国の刑務所が、外国人にとってはいかに過酷か。そのことは、よく考えたほうがいいかもしれない。ただ、それを差し引いても米国人はやはり尊大だ。これは言っておいたほうがいいかもしれない。グローバルスタンダードが米国にあると考えているとすれば、それなりにツケを払うべきときもあることをしるべきだろう。

*<69>「シャロウ・グレイブ」
ダニー・ボイル監督。ケリー・フォックス。クリストファー・エクルストン。ユアン・マクレガー。
 1995年英国。
 新聞記者のアレックス、医者のジュリエット、会計士のデビッド。友情厚い3人だが、そこにルームメイト・ヒューゴがやってきてから関係が狂い始める。ヒューゴは大金を残して死んだのだ。それに魅せられてしまった3人は死体を埋め、金を手にするのだが。
 「トレインスポッティング」の監督のダニー・ボイルのデビュー作。キャラクター重視のミステリーというところでしょうか。大金がからむことで、人間が少しずつ狂っていく。狂いながらも、しっかり計算していたり。最後はアレックス役のユアン・マクレガーがおいしいところを独り占め。映画人生もそうなってしまったようですし。なかなかよくできた「舞台劇」の感じです。

*<70>「鉄男」
*<71>「鉄男U BODY HAMMER」

塚本晋也監督。田口トモロヲ。叶岡伸。塚本晋也。
 第1作は1989年。モノクロ。
 鉄になりたかった男を車でひいてしまったために鉄人間にさせられてしまう男の物語。ひかれた男とひいた男のサイバーバトル。高速のカットバックを多用しています。場面展開も非常にシュール。石橋蓮司もちょい役で顔を出します。なんともエネルギッシュな作品です。
 第2作は92年。カラーになりました。少し予算が増えたようです。今度は人間兵器を目指した父親の子供二人がカルトな能力を試す。例によって鉄が細胞に同化してどんどん増殖してパワーアップします。今回は親子・兄弟の愛情がかなり色濃くでます。
 実は塚本さんのメジャー作品の「双生児」を見たのですが、乱歩を借りてなにか自分のモチーフをつなげたような気もします。
 とにかく鉄くずが人間を侵食していくイメージがフェチというかカルトです。2本見るとさすがに疲れます。

*<72>「ベルリン・天使の詩」
ヴィム・ヴェンダース監督。ブルーノ・ガンツ。ソルベイグ。ドマルタン。オットー・ザンダー。ピーター・フォーク。
 1987年西独・仏。
 傑作です。全編溢れる志高い人間愛のモノローグに心洗われる思いがする。「シティ・オブ・エンジェル」がこの作品から影響を受けたことを知ったが、オリジナルにははるかに及ばないことも知った。
 天使のダミエルはカシエルとベルリンの街を見守り人々の心の声を聞いている。だが、ダミエルはモノトーンの世界にあきていた。人間になりたいと思っていた。そんな時、サーカスの空中ブランコのダンサーのマリオンに一目惚れする。恋した瞬間、モノクロームな世界が豊かな色の世界に変わった。
 天使であることに悩んでいるダミエルの前に俳優のピーター・フォークが現れる。
 彼は言う。「こっちの世界に来い、友よ」と。地上に飛び降りれば、人間になれることを知ったダミエルは決断する。おりしも、サーカスはつぶれ、マリオンはひとり取り残されていた。
 地上に降りた天使は何を見つけられるか。愛だよ、とヴェンダースは言う。
 ベルリンの街を鳥瞰するカメラ。モノローグの心に響く言葉。ポリフォーニーのように広がる英語、ドイツ語、フランス語、日本語。戦争、人間、愛について絶え間ない追究。映像詩の完成度は高く、一寸の揺るぎも見せていない。

*<73>「トゥー・デイズ」
ジョン・ハーツフェルド監督。ダニー・アイエロ。ジェームズ・スペイダー。シャーリーズ・セロン。エリック・ストルツ。
 1996年米国。
 バリーで起きた2日間の出来事。エピソードがそれぞれ勝手に進行してそれが最後に1つになる。バラバラに進んでいるそれぞれが面白いし、よくできている。元五輪選手の部屋に殺し屋が入り込み、元の夫を殺す。それを発端に殺しのクロスワードがスタートする。
 結石に悩む成り上がり美術家とその秘書。元ピザ屋の殺し屋、行き詰まった監督、ベトナム女性に惚れた風俗課刑事。登場人物をていねいに描いていて、誰かに肩入れすると何倍も楽しめる。アメリカ映画らしく最後はハッピーエンド。
 因果応報。それでもしっかりとチャンスの前髪を掴む登場人物たち。娯楽映画の王道を行っています。

*<74>「バックドラフト」
ロン・ハワード監督。カート・ラッセル。ウィリアム・ボールドウィン。ロバート・デ・ニーロ。
 1990年米国。
 消防士たちの物語。消火中の事故で父親を失ったスティーブンとブライアンの兄弟。
 脚本のできがよいことはもちろんだが、炎の燃えさかるシーンがいい。特にすうーっと消えたかに見せて一挙に広がる炎は生き物のようだ。デ・ニーロとドナルド・サザーランドの掛け合いも面白い。
 いずれにしろ炎をこんなにも素晴らしく描いた監督の感性に感心させられた。

*<75>「裸足のトンカ」
ジャン=ユーグ・アングラード監督・主演。パメラ・スー。アレッサンドロ・アベル。
 裏話はいろいろあるのでしょうが、物語は怪我とスランプで自信を失った花形陸上選手が空港で見かけた野生の少女・トンカの天性の素質を発見する。彼女に恋しながら陸上選手として育てているうちに、自らも自分の陥っていた壁を克服して一流のアスリートとして復活する。しかし、肝心のトンカは社会の悪意と狡知に満ちた罠のために最期を遂げる。
 スポ根とメロドラマがミックスして演出もぎこちありません。だから、少しずれています。でも、パメラ・スーがやはり魅力的で野性味がいっぱいなんですよね。
 文明批評を意識した部分がたぶんにあるのでしょうが、コカ・コーラの広告塔の中に暮らし、ファンタ大好きというトンカには単純な文明対自然という枠組みを超えた面白さがあります。幸せな男の物語ではあります。

*<76>「極道の妻たち 赤い殺意」
関本郁夫監督。高島礼子。たかせ梨乃。永島敏行。野村宏伸。野川由美子。中尾彬。
 家田荘子原作の「極道」シリーズの最新作。
 例によって、親分が殺され、組は統率力を喪失。そこに跡目争いが絡み、古参新参の思惑が乱れてドロドロの抗争に。で、夫を殺された極道の妻たちが、立ち上がるという筋立て。
 岩下志麻ねえさんが一世を風靡していましたが、今回は高島礼子さん。でも、追いついてないか。物語はかつての任侠シリーズ的なカタルシスはない。親を大切に。約束は守る。非道は許さない。なんか極道の礼儀を教えるだけの教養映画のような気もした。

*<77>「モノクロームの夜」
ティファニー・デバルトロ監督。イオン・スカイ。ジェニファー・アニストン。マッケンジー・アスティン。
 サンフランシスコのアットホームな喫茶店。フランク・シナトラの崇拝者たちが知的に集っている。そこにデイヴィッドという青年が職を探しにやってくる。オーナーの姪で、女優の卵のフランキーはそこで手伝いをしている。2人は一目会ったときから、2人は恋に落ちる。はたからはハッピーに見えた2人だが、デイヴィッドには深い仲のガールフレンドがいた。フランキーはベストフレンドのアリソンと失意のままロスに移る。
 原題は「ある不眠症患者の夢」。実はフランキーは不眠症に悩んでいた。彼女は現実と夢がうまくおりあいをつけられずにいた。その彼女がはたして、どんな現実をつかまえられるか。物語は結局はハッピーエンドだけど。
 登場人物がみんな個性的で面白い。なんか知的に背伸びをしながらいきている感じがとってもよかった。

*<78>「ミザリー」
ロブ・ライナー監督。ジェームズ・カーン。キャシー・ベイツ。リチャード・ファーンズワース。
 1990年米国。
 「ミザリー」シリーズという小説を書いているポール・シェルダン。彼は作品に嫌気がさして、コロラド山中で酔っぱらって事故を起こしてしまう。それを救ったのが元看護婦のアニー。善意の持ち主かにみえたアニーは実はシェルダンの一番のファン。彼を実質的に監禁して、新しい小説を書かせ始めるのだった。
 アニーのキャシー・ベイツはこのころは若い。だが、迫力はすごい。こんな巨漢のマニアックなストーカーにつかまったら、怖い。本当に。108分だそうな。冗長さが全くなくて、上手な小説を読まされているような手応えがある。次から次に繰り出す荒業。ピタリはまってムダがない。キャシー・ベイツはアカデミー主演女優賞をもらったとか。当然だろうな。

*<79>「黒の天使 vol.1」
石井隆監督。葉月里緒菜。根津甚八。椎名桔平。高島礼子。大杉漣。小野みゆき。
 やくざの娘として生まれたが、組の争いに巻き込まれて両親を殺され、米国にわたっていた葉月が成長して日本に戻り復讐する物語。
 作品のテンポと物語の進行がどうもチグハグ。葉月もどうもいけない。こういう感じではホントに浮ついた本性が丸出しでいかん。セックスとバイオレンスを描き出す監督の気負いが出過ぎて空回りしているように見えた。

*<80>「ゲーム」
デヴィッド・フィンチャー監督。マイケル・ダグラス。ショーン・ペン。デボラ・カーラ・アンガー。
  「セブン」の監督の作品とあって、なかなかにしぶとい。
 投資家のニコラスが48歳の誕生日祝いに弟のコニーから「人生が一変する体験ができる」というCRS社の<ゲーム>の招待状をもらう。これに参加してみたことから、身辺には次々とおかしなことが起きる。そして、最後は丸裸同然でメキシコの墓に埋められてしまう。
 怒りの復讐劇が始まったが。物語は二転三転、そして途中に回想が挟まる。米国映画だから、当然ハッピーエンドだわな、と思っても引っ張って引っ張ってくれる。こんなにばかばかしいゲームをできるのは億万長者ならでは、と呆れる。とはいえ、よくできていることだけは確かだ。

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