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北海道文学を中心にした文学についての研究や批評、コラム、資料及び各種雑録を掲載しています

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見逃しミーハーシネマ館  1999〜2003
 なんというか、映画に嵌まっていた頃に、ビデオも借りまくっていた。

 ビデオ・グラフィティ・ノート 2000-3   33~48  

*<33>「フェイク」
マイク・ニューウェル監督。ジョニー・デップ。アル・パチーノ。マイケル・マドセン。アン・ヘッシュ。
 1997年米国。
 マフィア壊滅に功績のあった潜入捜査官ピストーネ。その捜査の実像に迫る。
 ピストーネはドニーの名前でブルックリンのマフィア、レフティの片腕となる。彼は正義を追求しつつも、男の友情を感じている。おや、ジョニー・デップだ。いい男だねえ。「ラスベガスをやっつけろ」は入魂の演技だったことがわかる。
 監督のニューウェルは「狂っちゃいないぜ!」のその人じゃないか。こちらのほうがメリハリが利いた演出だ。なんと言ってもアル・パチーノ。ワル役でも哀愁が漂ってしまう。にせものの悲しみはそれぞれのものだ。

*<34>「フォレスト・ガンプ/一期一会」
ロバート・ゼメキス監督。トム・ハンクス。サリー・フィールド。ロビン・ライト。ゲイリー・シニーズ。
 1994年米国。
 フォレスト・ガンプは少し知能が遅れているが心の真っ直ぐな人間。初恋の相手のジェニーを思い続けているがうまく愛を告げられない。フットボール。ベトナム戦争。ピンポン。エビ漁。マラソン。ぼくとつな彼は最後にはうまくいき成功する。一方、ジェニーは自分勝手な奔放な生き方を続けていた。その愛が実る日は来るのか。
 これは米国人の肖像って映画だな。60年代から70年代の風俗がきっちりと描写されている。たとえば大統領と暗殺がつきまとっているというように。走って走って家族に辿り着く物語。それも悪くはない。JFKやJレノンらとのツーショットも笑える。

*<35>「カラー・オブ・ハート」
ゲリー・ロス監督。トビー・マグワイア。リース・ウィザースプーン。ジョアン・アレン。ウィリアム・H・メイシー。
 1998年米国。
 テレビの「プレザントビル」というおきまり番組のオタクだった兄妹。それがひょんなことからテレビの世界に紛れ込む。だが、そこは白黒の世界だった。
 これは凄い作品です。いろんな見方が出来ると思いますが、恋する人は美しい、と要約しましょうか。というより、規範の世界を現実=自由の世界に変えようとする思想でしょうか。その発想が卓抜な上に、モノクロームからハーフカラーそしてフルカラーへ。恋心とともに変わっていく映像が新鮮です。
 色のない世界は安定しているかもしれないが、つまらないぜ。ファシズムよりも混沌の民主主義の方がいい。おきまりの生き方よりも、新しい生き方を。そんなラディカルなメッセージがいっぱいの傑作です。

*<36>「時計じかけのオレンジ」
スタンリー・キューブリック監督。マルコム・マクダウェル。パトリック・マギー。ウォーレンス・クラーク。
 1971年英国。
 アレックスを中心とした非行グループは暴力とセックスで夜ごと暴れ回っていた。しかし、ある時、仲間の裏切りでアレックスは殺人犯として捕まる。そして攻撃性を断つ洗脳の実験台にされ、今度は暴力の犠牲者となっていく。彼は自殺を試みることで、その去勢された状態から脱出する。
 犯罪者の洗脳も更生も政治とメディアに利用されていく。近未来の管理社会のイメージが60年代のポップな雰囲気と一緒に描かれる。モダンアートのオブジェ、そして音楽がどれも素晴らしい。キューブリックの才能が見事に光る。

*<37>「ハード・ボイルド 新・男たちの挽歌」
ジョン・ウー監督。チョウ・ユンファ。トニー・レオン。テレサ・モー。ウォン・チョウサン。
 1992年香港。
 「男たちの挽歌」のJ・ウーとチョウ・ユンファが今回はトニー・レオンを入れて大活劇。武器ブローカー組織と闘う刑事ユン。そして潜入捜査官のトニー。2人は兵器庫となった病院で死闘を繰り広げる。
 いやあ、撃つわ撃つわ。まあ、ほとんどが鉄砲撃ちまくりーの、爆弾破裂しそーのだ。それでいて男たちの哀愁がどわっと響く。敵も味方も。ヤクザ映画のテイストがあふれた逸品だ。

*<38>「プラクティカル・マジック」
グリフィン・ダン監督。サンドラ・ブロック。ニコール・キッドマン。ストッカード・チャニング。
 1998年米国。
 魔法遣いのサリーとジリアンの姉妹。姉は奥手で、妹は奔放。その2人が繰り広げる恋のドタバタ。
 いやあ、薄い。物語はどうでもいいわな。サンドラ・ブロックが好きか、ニコール・キッドマンが好きかどっちかじゃなきゃ持たない。もちろんニコール・キッドマンが好きだから私は持ちましたが。
 妹がとんでもない男に引っかかって大騒ぎ。でも最後はめでたしめでたし。しかし、魔女は怖いが、結構、身近にもいるぞ。嘘だと思ったら後ろを見てごらん。ほら。ね。

*<39>「われに撃つ用意あり」
若松孝二監督。原田芳雄。桃井かおり。石橋蓮司。山口美也子。蟹江敬三。ルー・シュウリン。小倉一郎。佐野史郎。西岡徳馬。室田日出男。斉藤洋介。山谷初男。
 90年松竹=若松プロ。
 郷田克彦は新宿で20年間バーを開いてきた。その店を閉めようとした最後の夜にかつての仲間たちがやってきた。彼は全共闘の活動家であり、新宿騒乱デーの闘士であった。節を貫き、医者の道を断念し新宿でひっそり生きていたのである。その夜、もう一人、ヤクザの組長を殺して逃げてきたベトナム女性も匿うことになった。ヤクザたちは店に押し入り、親友を銃殺し彼女を見つけ連れ去った。義侠に生きる郷田の心に怒りの火が点いた。彼は女友達とともに銃を手に監禁現場へと向かう。
 ハード・ボイルドだ。というより全共闘ロマンティズムが横溢している。原田芳雄、桃井かおりコンビは勿論、全員の顔ぶれが懐かしい。山口美也子さん。闘う女はおばさんになっても健在です。石橋蓮司。小劇場時代から相変わらずアジっている。蟹江敬三。攻守ところを変えて刑事役だが、筋だけは通している。佐野史郎。後に続く世代の心が近作「カラオケ」でも脈打っている。ETC.
 名作「怒りをうたえ!」からのビデオが随所に挿入されているのも効いている。これは一種の「お仲間映画」「同志結集映画」なのである。別の意味ではプロパガンダででもある。きらいな人はきらいだろう。でも感じる人にはひどく重い。新宿の香りと全共闘の心が伝わる傑作である。
 「ARE YOU READY TO SHOOT TO ?」

*<40>「キャメロット・ガーデンの少女」
ジョン・デュイガン監督。サム・ロックウェル。ミーシャ・バートン。キャスリーン・クィンラン。
 1997年英国・米国。
 郊外の絵本のような町キャメロット・ガーデンに暮らしているデヴォン。彼女はある日、芝刈りの青年トレントに出会う。重い心臓病で手術をした彼女は同じ年の友達もいない。彼女は青年の中にピュアなものを感じ、いつしか親友となっていく。だが青年は持たざるものとしてプチブルたちの冷たい視線にさらされていた。そして、不良たちの犬を殺してしまったことから破局が訪れる。
 おとぎ話のような映画である。でも随所に残酷なまでの現実認識があふれていて心を打つ。偽善を許さない少女のひたむきさが見事に美しい。

*<41>「シックス・ストリング・サムライ」
ランス・マンギア監督。ジェフリー・ファルコン脚本・主演・アクション。ジャスティン・マックワイア。
 核戦争によってソビエトに支配された世界。唯一の自由都市ロスト・ベガス。そこではキング・エルヴィス亡き後の新たなロックンロールの王を求めていた。ギターに刀を背負ったメガネのバディはそうした王道を目指す男だった。彼を慕って言葉を失った少年キッズが同行した。どこまでも続く砂漠では武装したライバルたちが刺客となって現れた。特にヘビメタ帝王のデスが最後までつきまとい死闘が続くのだった。
 音楽ありカンフーあり、徹底的にオタッキーな映像。まあ、ちょっと期待しましたけれど、やっぱりね、という出来でした。

*<42>「萌の朱雀」
河瀬直美監督。尾野真千子。柴田清太郎。神村泰代。和泉幸子。
 1996年日本。
 97年カンヌ映画祭で新人監督賞を受けている。
 奈良の山村に嫁いだ女性を主人公に周りの人々の移り変わりを淡々と描く。農家のおばあちゃん。クラシックと8ミリが好きな実直な夫。やさしい義理の弟。そして中学生の娘。2人の淡い思い。鉄道が来ないまま残されたトンネル。高齢となり村を去る人。自分も稼ぎのために町の旅館で働くことになるが、風邪で倒れてしまう。そして突然に訪れる夫の死。カメラは自然に穏やかに叙情的に回っていく。物語のやさしさもあるが、人々の表情がとても印象的だ。

*<43>「めぐり逢えたら」
ノーラ・エフロン監督。トム・ハンクス。メグ・ライアン。ビル・プルマン。ロス・マリンガー。
 1993年米国。
 1年半前に妻を失ってから「眠れない夜」を重ねているシアトルの建築家サム。一人息子のジョナがラジオ番組でそのことを相談した。それを聞いていたボルチモアの新聞記者アニーは「運命」に興味を覚えた。
 なんかいかにも古い恋愛映画を見ているような物語。ケリー・グラントとデボラ・カーの「めぐり逢い」をモチーフに恋が進展。ニューヨークのエンパイアステートビルでクライマックスとなる。映画中の男どもの言葉によれば「女性の映画だな」というのが適評か。

*<44>「バンディッツ」
カーチャ・フォン・ガルニエ監督。カーチャ・リーマン。ヤスミン・タバタバイ。ニコレッテ・クレビッツ。
 これで3回目です。
 まず1回目の感想です。
 >見終わったら、イカシタゼって拍手したくなること請け合い。ピカレスク・ロードムービーっていうのかムジーク・キネマというのか。4人の女囚が刑務所バンド「バンディッツ」(悪党たち)をつくり、ひょんなことから脱走。獄中から送ったテープがいつのまにか大ヒット。逃走中の4人はスターに。追われているうちに、ブラッド・ピットのようなにいちゃんを人質にしちゃったり。もうイケイケの逃亡劇になってしまうのです。ルナの男まさり?の可愛さ。エンジェルの色っぽさ。マリーとエマのきりりとした姿。痛快で、本当に気持ちが良くなります。スーザン・サランドンとジーナ・デイビス、それにブラッド・ピットが絡んだ「テルマ&ルイーズ」を連想しますね。映画の色がよく似ています。橋の上でいつのまにかコンサートが始まり、みんなが踊りだしてしまうシーンなんかちょっと「踊るマハラジャ」というか「ウェストサイドストーリー」のノリでもあります。追いつめられて海へダイビングするシーンはヤッタって感じ。ファイナル・コンサートをやって船に向かって走るシーンもカッコイイ。女の子もたぶん共感すると思いますが、男のワタシもこの4人は最高です。

 さて2回目です。
 >なんど見ても、いい映画です。それぞれのシーンがとっても印象的なのです。セリフも素敵です。マリーがハーモニカを吹きながら、橋の上で絶命するシーン。悲しみを乗り越えて、車に油をかけて「火葬」にするシーン。残った3人が肩を組みながら、川に向かってダイビングするシーン。空からの俯瞰の美しさ。ラストの船に向かって走って行く姿。幻のマリーと3人の手が一つになる瞬間のフィナーレ。「FUR M」って誰? ちなみに、サントラ盤を2548円で購入してしまいました。4人が女っぽいと同時に、フィジカルな部分で男っぽいのにはちょっと圧倒されました。これからは女の時代だな。やっぱり。

 それじゃあ、3回目を。
 いっやあ、飽きません。いいな。女たちが女らしく同時に男っぽい。いうならば人間的な魅力いっぱいなんです。信頼と友情。そして困難に対して日和らないところがいい。楽天的向日的な生き方。勇気づけられます。刑事の女性もよく見ると、かっこよくてセクシーで、いいですね。印象的なのはやはり、橋の上のクライマックスシーンです。死も生も乗り越えて進む決意が本当に美しくドラマチックに描かれています。強引なストーリー展開も感じますが、すべて許せる気がしました。とにかく、見てない人は見るべし、と言いたい。

*<45>「イレイザー」
チャールズ・ラッセル監督。アーノルッド・シュワルツェネッガー。ジェームズ・カーン。ヴァネッサ・ウィリアムズ。ジェームズ・コバーン。
 1996年米国。
 シュワルツェネッガー主演のアクション娯楽大作。
 FBIの秘密捜査員として「消し屋」(イレイザー)をしているジョン・クルーガー。ある時、軍事産業が武器商人に最新兵器を密輸しているのを告発しようとするリ・カレンという女性の保護を命じられた。しかし、軍需産業はFBI内部と癒着しており、ジョンは内外の敵と孤立した戦いを強いられる。彼を助けるのはかつて彼が救った証人たちだけだった。
 ノンストップで濃縮されたアクションが続き飽きさせません。ストーリーも敵と味方が上手に絡み合ってキレ味が冴えています。飛行機からの脱出やら見せ場もいっぱい。ヴァネッサ・ウィリアムズも凄い美人というわけでわないですが、目がきれいです。
 
*<46>「サブウェイ」
リュック・ベッソン監督。イザベル・アジャーニ。クリストファー・ランバート。ジャン・レノ。
 1984年フランス。
 パリのパーティーで青年フレッドが重要書類を盗んだ。彼は持ち主の女性ヘレナが好きだった。追っ手に迫られた青年は地下鉄から地下道に逃げ込む。そこで暮らすローラー男らパンクな若者たちと親しくなりロック・コンサートを計画するのだ。一方、ヘレナも地下道にやってくる。次第に心を通わし合う2人だが、虚栄の世界に生きている彼女の夫らが立ちはだかる。警察も捜査を強化。絶体絶命の中でコンサートは始まり、2人は見つめ合う。
 主演じゃないが、ジャン・レノも謎のドラマーとして結構な長髪で出ています。若い。冒頭のカーチェイスの軽快なテンポから始まって、音楽と映像が快感です。「人間よ殺し合うな」とのロックが流れる中での死がとても印象的です。リュック・ベッソンの才能が溢れた傑作ですね。

*<47>「コン・エアー」
サイモン・ウエスト監督。ニコラス・ケイジ。ジョン・キューザック。ジョン・マルコヴィッチ。スティーブ・ブセミ。モニカ・ポッター。
 1997年米国。
 妻を暴漢から守るために殺人を犯してしまったポー。正当防衛が認められず、刑務所に送られたが、仮釈放となった。輸送機「コン・エアー」には重大犯罪人サイラスらがズラリ。彼らはコン・エアーを乗っ取り、逃亡しようとしていた。
 悪虐な彼らを前に男の正義の闘いが始まった。飛行場での銃撃戦、ラスベガスの町での死闘。とにかく見どころがいっぱい。
 スティーブ・ブセミは恐怖の殺人鬼役で危ない感じを見せています。ニコラス・ケイジの長髪はなんか妙ですね。奥さんはモニカ・ポッターだあ。「マーサ・ミーツ・ボーイズ」のほうがいいなあ。

*<48>「無能の人」
竹中直人監督・主演。風吹ジュン。大杉蓮。山口美也子。三浦友和。神戸浩。
 つげ義春原作。
 売れない漫画家が石拾いを始めた。無為の日々の中で出会う不思議な人々。時代に取り残されても節を曲げない。みじめだけれど、それに耐えていける。墜ちていく快感、まだ人生を捨てないという意志。それをやさしく見守っている家族。私小説の世界を鮮やかにえぐり取った。

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