見逃しミーハーシネマ館 1999〜2003
なんというか、映画に嵌まっていた頃に、ビデオも借りまくっていた。
ビデオ・グラフィティ・ノート 2000-5 65~80
*<65>「フィラデルフィア」
ジョナサン・デミ監督。トム・ハンクス。デンゼル・ワシントン。ジェイソン・ロバーズ。アントニオ・バンデラス。
1993年米国。トム・ハンクスがアカデミー賞主演男優賞受賞。監督のジョナサン・デミは「羊たちの沈黙」を制作した人だ。
フィラデルフィアの弁護士アンディはエイズを宣告されてしまった。会社に解雇された彼は差別と闘おうとする。しかし、弁護を引き受ける者はなく、やむなくかつての敵のミラーに依頼する。多くの困難の中でしかし着実に反撃が進む−。
同性愛者へのいわれなき差別、そして病者へのいわれなき差別。これに対して、映画は成熟した市民社会の論理と法の下の正義を提示する。トム・ハンクスとデンゼル・ワシントンの抑制された演技。ミゲール役でトム・ハンクスの看病をするバンデラスのやさしさ。マリア・カラスのアリアの下での心情吐露。胸を打つ。エイズをもエンターテインメントとして感動とともに伝える米国のしぶとさに脱帽する。
*<66>「ゴースト ニューヨークの幻」
ジェリー・ザッカー監督。パトリック・スウェイジ。デミ・ムーア。ウーピー・ゴールドバーグ。
1990年米国。
銀行員のサムは恋人モりーと一緒に暮らし始めるが、襲われて幽霊に。犯人は元同僚カールに操られていた。彼は資金の不正操作をサムに知られたと思い殺したのだ。霊媒師オダ・メイの力を借りて、サムはモリーを守ろうとする。
なかなかにぎやかな映画です。米国っていうか、キリスト教ってのは結構、幽霊が好きだなあ。デミ・ムーアはこの辺まではかわいい。「素顔のままで」で、大胆に。「G.I.ジェーン」は体育会だし。
*<67>「フレンチ・キス」
ローレンス・カスダン監督。メグ・ライアン。ケビン・クライン。ジャン・レノ。ティモシー・ハットン。
1995年米国。
結婚するはずが婚約者の男はフランスで美人にビビビッ。残された女はリベンジを賭けてパリ乗り込んだが。有り金からパスポートまで盗まれてスッカラカン。彼女を利用しようとして近づいてきた男と妙な旅行を始める羽目になる。
メグ・ライアン。カナダ移住申請中の役だが、ヤンキー娘を演じて嵌っている。フランスといえばジャン・レノ。でも、ちょっと好い人間過ぎる感じだな。今回は。「スピード」でサンドラ・ブロックが異常な状態での恋は長く続かないと言ってましたね。このハッピーエンドはちょっと、甘いなあ。
*<68>「戦場のメリークリスマス」
大島渚監督。デビッド・ボウイ。坂本龍一。ビートたけし。トム・コンチ。内田裕也。
日本の侵攻下にあった1942年のジャワ。イギリス軍兵士らの捕虜収容所ではヨノイ大尉、ハラ軍曹らが厳しい仕打ちを続けていた。知日派のローレンスは捕虜と日本軍の間を結ぶ通訳だった。彼はヨノイらの厳しさに違和感を覚えながらも、理解しようと努めていた。その時、心に傷を持った不思議な魅力の捕虜セリアズがやってくる。敵愾心と奇妙な親愛感が流れる。ローレンスも処刑直前まで追い込まれる。だが、なぜかハラがファーザー・クリスマス(サンタクロース)となって救ったのだった。セリアズは結局、処刑されたが、ヨノイはその金髪を持ち帰った。そして日本敗北。1946年、処刑を前にハラ軍曹は「メリークリスマス、ミスターローレンス」と最後の言葉を残すのだった。
あの名作を改めて見直すとビートたけしの存在感が大きいのに驚く。このお笑い崩れの男の才能を見抜いた大島渚は確かにただ者ではない。しかし、男の道を「御法度」で描いた大島だが、やはりぎこちないのは本作でも同じであった。
*<69>「キッチン」
森田芳光監督。川原亜矢子。松田ケイジ。橋爪功。四谷シモン。浜美枝。
1989年日本。
ご存じ、吉本ばななの原作の映画化。
みかげ、雄一、えり子さんの3人の奇妙な共同生活。みんな心に小さな空洞を抱えている。その空洞に乱雑に立ち入ることなく、静かに傷を癒していく。
ばななの愛を乞う物語を森田芳光が見事に映像化した。主演の2人はさっぱり知らない。たどたどしい演技は、雰囲気を伝えているとしかいいようがないが。ちざきバラ園、函館の街など出てきて、いろんな意味で懐かしいが。さて、本当に心に沁みたかというと、ワシはノーだな。
*<70>「ア・フュー・グッドメン」
ロブ・ライナー監督。トム・クルーズ。ジャック・ニコルソン。デミ・ムーア。ケビン・ベーコン。
1992年米国。
キューバの米軍基地で殺人事件が起こった。2人の兵士が逮捕され、若い士官弁護士のキャフィーが担当することに。だが、犯行には海兵隊の組織的な「コードR」という命令が絡んでいた。軍人だけによる法廷という厳しい状況の中で、真実をあぶりだしていく。
法廷ドラマです。そこに軍隊のドグマや人間の尊厳を巧みに織り込んでいます。トム・クルーズはいい役者なのでしょうが、なんか背伸びしているように感じるのはなぜ? チビのはずはないのに、なんか大きく見えない。ちょっとイライラ。ジャック・ニコルソンは軍人の狂信を演じて、見事ですね。
*<71>「カジノ」
マーチン・スコセッシ監督。ロバート・デ・ニーロ。シャロン・ストーン。ジョー・ペシ。ジェームズ・ウッズ。
1995年米国。
「タクシー・ドライバー」「ケープ・フィアー」コンビの傑作のひとつ。
腕利きが認められカジノのボスになったエース。チップ詐欺の常習でエースの愛人になったジンジャー。気が短いヒットマンのニッキー。3人を軸にカジノを取り巻く人間模様が浮かび出る。
それぞれのシーンがスピーディーに流れ、そこにモノローグが重なりあう。金、女、欲望、策謀が渦巻く世界を重くならず、かといって軽くならず描いた。なんというか、女は失敗の元だろうが、それはなかなかに難しい。
*<72>「ガープの世界」
ジョージ・ロイ・ヒル監督。ロビン・ウィリアムズ。メアリー・ベス・ハート。グレン・クローズ。ジョン・リスゴー。
1982年米国。
ジョン・アーヴィングの自伝的小説の映画化。
戦争中に、ただ子供が欲しいだけで負傷兵士と交わって妊娠した看護婦の母ジェニー。その父をも知らぬガープの波乱に富んだ人生模様を描くはず。レスリング、恋、小説にのめり込むガープだが、母親のほうがもっと凄い。自分の半生を小説にして、たちまち女性解放運動のリーダーに。母の邸宅にはレイプに抗議する女性たちや傷を負った女性たちが集まる。一方、ガープは妻の浮気やら、作品が女性解放運動家の物議を醸したり。必ずしも順風満帆とはいかない。どう見てもガープというよりは、凶弾に倒れるまでの母親の人生記という感じか。
で、グレン・クローズ。最近、「クッキー・フォーチュン」でもいい味だしてましたね。看護婦ルックで、頑張って最高でした。ロビン・ウィリアムズは、どうも自意識過剰なのが好きになれませんでした。
*<73>「フューネラル」
アベル・フラーラ監督。クリストファー・ウォーケン。クリス・ペン。ヴィンセント・ギャロ。ベニチオ・デル・トロ。
1996年米国。
ニューヨーク近郊のマフィア・テンピオ一家。3男のジョニーが棺に入れられて戻ってきた。残された長男レイ、2男チェズ。レイの怒りの犯人探しが始まったが。
兄弟、家族ってえものへの徹底的なこだわりと、それへの反発と。それが悲劇的なラストへと続く。
マフィア映画であるが、それは結局、家族映画なのであるが、これは徹底的にそうなっている。いきなり屍役のヴィンセント・ギャロ。ここではコミュニストです。なんかぴったりだなあ。
*<74>「月とキャベツ」
篠原哲雄監督。山崎まさよし。真田麻垂美。ダンカン。中村久美。鶴見辰吾。
1996年日本。
噂には聞いていたが、純文学小説を読んだ後のような、カタルシスがある。行き詰まった音楽家に訪れた奇跡。主人公のミュージシャン・花火はグループを抜け新しい音楽に悩んでいる。田舎にこもり月を見ながらキャベツを作って暮らしている日々。そこにフラリとやってきたバレーをしている娘ヒバナ。最初、追い返した花火だったが、なんとなく引き留め、奇妙な同居生活が始まった。
明るいヒバナだったが、なぜか恐水症のけはいがあった。それでも花火の曲で踊りたいというヒバナの願いに、次第に花火も音楽作りに戻っていく。だが、ヒバナには重大な秘密があった。
なんともすてきな青春映画だ。山崎まさよし。音楽が本当に哀切で、若い心を歌い上げている。真田麻垂美。「きみのためにできること」よりはるかに表情豊か。踊りは下手だけど。なんか、夢のような時間がいとおしく流れていく。西友が映画を作っていたというのも、夢のようだけど。
*<75>「フェノミナン」
ジョン・タートルトーブ監督。ジョン・トラボルタ。キーラ・セジウィック。フォレスト・ウィティカー。
1996年米国。
カリフォルニア州の田舎町を舞台に突然「天才」になった男の悲哀を描く。ジョージは独身の人気者。彼は、子連れの家具製作家のレイスに思いを寄せているのだが。そんな彼の37歳の誕生日。白い閃光に直撃され、才能が舞い降りてきた。
さあ、大変、ってわけだ。超能力者が現れることの人間の反応の面白さもあるが、彼を暗喩として人間の<共生>を問いかけている。自然と人間と世界と、それらがみんな結びついて生きている。人間の超能力ってのはそうした真実を知る<やさしさ>じゃないのかね、って。ジョージと彼を取り巻く人間たちが戸惑いながらも優しさを失わないのがいい。トラボルタのちょっと曲がった口元がひどく印象的だ。
*<76>「コンタクト」
ロバート・ゼメキス監督。ジョディ・フォスター。マシュー・マコノヒー。ジョン・ハート。ジェームズ・ウッズ。
1997年米国。
カール・セーガンの原作を「フォレスト・ガンプ/一期一会」のゼメキスが映画化。
幼い時から父の影響もあり、地球外生命を信じてきたエリー。宇宙からのメッセージを解析する。だが、政府機関の科学者らは冷たい。理解してくれているのは、対立するはずの宗教学者だけだった。
ジョディ・フォスターが頑張っています。宇宙の物語というよりもなんだかエコロジストやら宗教的な臭いがしました。宇宙出発装置のバックアップが北海道の知床半島沖にあったというのは「へえ」という感じです。
期待していたよりはまじめですね。「地球人だけではスペース(宇宙=場所)がもったいない」と言われてもなあ。まあ考えさせられましたけど。
*<77>「マーズ・アタック!」
ティム・バートン監督。ジャック・ニコルソン。グレン・クローズ。アネット・ベニング。ピアース・ブロスナン。
1996年米国。
火星人が地球に来襲、危うし米国。おなじみのばかばかしいテーマを、全く新鮮なタッチで描いた傑作。97年12月に初めて見たときはわからなかったことが結構わかって楽しい。こんなところにパム・グリアーとか、なつかしいなマイケル・J・フォックスとか。ゴジラが暴れているぞとか。
これだけ凝って作られると、この映画の本当の面白さを理解するには僕にはまだ無理かな、ってことがよくわかった。
*<78>「可愛いだけじゃダメかしら」
フィロメーヌ・エスポジト監督。イザベル・アジャーニ。イポリッド・ジラルド。ファブリス・ルキーニ。
1993年フランス。
モデルのペネロープは恋人ジョルジュと別れてしまった。精神科医に通っているが、さっぱり。友達のソフィーに支えられているが、自殺願望に囚われている。
いい女はとかく男運が悪い。よくあるパターンだが、これは本当だ。どうしてろくでもない男に騙されるのだろうか。それにひきかえ、オイラはいい人だから。トホホ。可愛いだけじゃ、ダメでしょう。でもイザベル・アジャーニは可愛いから許す。そんな映画。
*<79>「ブレイブ・ハート」
メル・ギブソン製作・監督・主演。ソフィー・マルソー。ブレンダン・グリーソン。キャサリン・マコーマック。
1995年米国。
13世紀のスコットランド。そこは冷酷なイングランドの支配下にあった。家族を殺されたウイリアム・ウォレスは長い旅の果てに故郷に戻った。そこで幼なじみのミューロンと結婚するが、彼女はイングランド兵に殺されてしまう。彼は悪代官を懲らしめた後、スコットランドのゲリラを組織して闘いを開始する。
メル・ギブソンがじっくりと渋く情熱的に暴れます。大作の時代劇です。それにしてもスコットランド貴族の腐敗にもあきれます。ミューロン役のキャサリン・マコーマックは「娼婦ベロニカ」の彼女ですね。メル・ギブソンを助ける皇太子妃のソフィー・マルソーはしっとり。いいねえ。
戦争の問題はいろいろ考えさせますが、最後の処刑シーンを一番楽しみにしているのがいたいけな顔をした子供たちだということが象徴的でした。
*<80>「青春デンデケデケデケ」
大林宣彦監督。林泰文。浅野忠信。岸部一徳。根岸季衣。佐野史郎。
芦原すなお原作の映画化。
大林さんの映画だ。いつもの過剰なロマンティシズムがエレキギターの軽快なテンポによっていやみに感じられない。
ベンチャーズのパイプラインのデンデケデケデケにしびれた高校生。そういう時代もあったということが懐かしさ以上に見事に青春像として描かれている。いいと思う。ちょっとジーンときた。傑作でしょう。
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