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北海道文学を中心にした文学についての研究や批評、コラム、資料及び各種雑録を掲載しています

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シネマミーハーらくがき帳 1999〜2003
 なんというか、映画に嵌まっていた頃があり、雑文を書きまくっていた。

 シネマ・グラフィティ・ノート 2000年 その10  

*123<336>「シャンハイ・ヌーン」
トム・ダイ監督。ジャッキー・チェン。オーウェン・ウィlソン。ルーシー・リュウ。
 ジャッキー・チェンはハリウッドが似合わない。彼の個性はたぶん、演歌の地方巡業の座長の趣がある。バタ臭くて、あくが強いのだが、たっぷり楽しめる。
 今回は中国(清)から米国に騙されて渡った姫君を助けるために大活躍。アメリカ・インディアン娘あり、ギャング崩れとの友情あり、お決まりのカンフーあり。盛りだくさんでしみじみ笑える。でも、やっぱり場違いの印象を覚えるのだなあ。

*124<337>「サイダー・ハウス・ルール」
ラッセ・ハルストレム監督。トビー・マグワイア。シャーリーズ・セロン。マイケル・ケイン。
 原作・脚本は「ガープの世界」のジョン・アーヴィング。監督は「ギルバート・グレイプ」を作っている。
 物語はホーマーつまりホメロスが、孤児院を出てリンゴ農園で人間の生き様を見、そして成長して戻ってくるまでを描く。なによりも印象的なのは、やはりリンゴ園か。
 黒人労働者たちに示される意味のないルール。それに対して、ルールは自分たちが作る、という宣言。ホーマーはそこから自らを律する道を選んでいく。孤児院の少年たちの姿も、実に鮮やかに個々の思いまで拾い上げている。世の中、不条理でも生きる道はあるのだ、と勇気づけられる。
 トビー・マグワイアは柳に腕押しの不思議な魅力がある。「カラー・オブ・ハート」のにいちゃんだな。シャーリーズ・セロンは「レインデア・ゲーム」と打って変わって好演している。心にさわやかな風が立った、というとキザだろうか。

*125<338>「ヴァージン・スーサイズ」
ソフィア・コッポラ監督。ジェームズ・ウッズ。キャスリー・ターナー。
 これは怒るぞ。期待してみただけに、がっかりだな。5人の乙女の自殺。これをどうさばくか。でも、結局、曖昧な雰囲気が残るだけ。なにもない。いいのか、もっと社会でも自我でも時代でも、何かをきちんと描かなくて。単にコンサーバティブな母親と現実離れした父親の錯誤が浮かぶだけだ。
 別にわかりやすい理由が欲しいだけじゃない。監督が描こうとする悲劇が全く示されない気がするのだ。

*126<339>「パーフェクト・ストーム」
ウォルフガング・ペーターゼン監督。ジョージ・クルーニー。マーク・ウォルバーグ。ダイアン・レイン。
 北大西洋に発生したハリケーンなど三つの大あらし。その最中にメカジキマグロ漁船が突き進むことになった。想像を絶する大波の中、海の男たちの必死の操船が繰り広げられる。
 確かに、大波に翻弄される漁船の姿は良くできている。だが、人間ドラマとしてはなんとも陳腐だなあ。船長さんは判断を誤っているし、それぞれ訳ありの漁師たちも煮え切らない。そして、ヨットやらコーストガードの奮闘やらが意味もなく続く。
 海難は無知とヒロイズムのために起こる。そういうことなのだろうか。監督は「Uボート」でのほうが運命をうまく描いていただろう。

*127<340>「TAXi2」
ジェラール・クラヴジック監督。サアミー・ナセリ。フレデリック・ディーファンタル。マリオン・コティヤール。エマ・シェーベルイ。
 ご存じリュック・ベッソン製作の痛快カーアクションの第2弾。
 今回は日本の防衛庁長官がマルセイユにやってくる。そこに日本ヤクザの誘拐団=三菱ランサーが現れ、警察とドンパチ。いつもながら、タクシー運転手ダニエルが大活躍、事件を解決する。
 面白さはもちろんパワーアップしているんだが。なんだが今ひとつ。「TAXi」のほうが面白かったなあ。それもこれも「ニンジャ作戦」や「コンニショワー」と言った怪しげなジャポニスムのせいだ。どうも日本人はアホそのもので、見てられません。
 ペトラ=エマ・シェーベルイのパンチラ空手が加わったのがせめてもの救いか。

*128<341>「タイタンA.E.」
ドン・ブルース&ゲイリー・オールドマン製作・監督。声:マット・デイモン。ビル・プルマン。
 21世紀。地球はエネルギー体のエイリアンのドレッジによって壊滅させられた。宇宙を放浪する人類。希望の鍵を託されていた青年ケールはその宇宙船タイタンを探しに出る。
 いうならばスペースオペラ。これをCGによる実写もどきではなく、アニメとして描ききった。壮大な爆発シーン、水素ガスの浮かぶ惑星、氷のバリア。ダイナミックで息をのむ美しさが展開される。映像美としては素晴らしいレベルにあると思う。
 惜しむらくはアメコミ的なチャチなストーリーがダサイ。

*129<342>「ソフィーの世界」
エリック・グスタブソン監督。シルエ・ストルスティン。トーマス・ヴォン・ブロムセン。
 ヨーステン・ゴルデルのベストセラーの映画化。99年ノルウェー映画。期待通りって、言葉があるけれど、まさしくぴったり。「こんなものだろう」というレベルの期待がばっちり当たってしまった。

*130<343>「スチュアート・リトル」
ロブ・ミンコフ監督。ジーナ・デイビス。ヒュー・ローリー。声:マイケル・J・フォックス。
 NYセントラル・パークの近くのリトル家に弟がもらわれてきた。その名はスチュアート。でも彼はネズミだった。コロンビア映画が作り出したニューアイドルだそうだ。
 でも、オレはあまり好きじゃないな。どうも可愛くないのだ。とはいえ、テーマは鮮明で、<擬似家族>時代の<愛>だ。言いたいことはよくわかるし、それなりに良くできている。子供映画だな。

*131<344>「ホワイトアウト」
若松節朗監督。織田裕二。松嶋菜々子。佐藤浩市。吹越満。真保裕一原作。
 日本最大の貯水量を誇る奥遠和ダム。雪に覆われた厳冬そのダムをテロリスト集団が占拠。人質をとって立て篭もった。巨大な要塞と化したダム。それに立ち向かうのは山男のダム運転員の一人の青年だった。彼は自分のダム知識を生かしながら仲間と、親友の恋人を救うため勇気を奮い起こす。
 「逃げちゃいけない」「約束を果たせ」
 日本版「ダイ・ハード」「沈黙の要塞」ってところか。ブルース・ウィリスやスティーブン・セガールのようにはいかない。だが、織田君は「踊る大捜査線」同様に八面六臂の活躍をする。日本警察の官僚制へのピリカラ批評も相変わらずだ。だれることない面白さ。楽しめたなあ。

*132<345>「さくや妖怪伝」
原口智生原案・監督。安藤希。山内秀一。嶋田久作。松坂慶子。丹波哲郎。
 江戸時代。富士山は大噴火。世の中は乱れ、神々の力は地に落ち、悪霊たちがはびこってしまった。そこで、妖怪討伐士の出番に。だが、使うは妖刀・村正。その刀をふるえばふるうほど命は短くなるという。その過酷な運命に立ち向かい、17歳の少女・さくやが土蜘蛛との戦いに動き出した。
 なかなか魅力的な設定ですが、惜しむらくはちぐはぐです。物語の高揚感がないのです。この種の映画はフェチの部分が必要なのですが、ちょっと甘い。松坂慶子も、もっと妖艶な味を出して欲しかった。

*133<346>「リプリー」 
アンソニー・ミンゲラ監督。マット・デイモン。グウィネス・パルトロウ。ジュード・ロウ。ケイト・ブランシェット。
 「太陽がいっぱい」のリメイクだそうです。ルネ・クレマンとアラン・ドロンのやつは青年の上昇志向みたいなものをキラキラと描いてました。そして、ラストの栄光が崩れ落ちるサスペンスも。でも、こちらはむしろ同性愛映画になっています。
 ジュード・ロウに恋した貧しい青年マッド・デイモンの犯罪衝動はエロスです。でも、どうもマッド・デイモンには、その感じがないんだなあ。だから、なんだかしょうもない犯罪に見えてしまう。
 いかにも自分って何って、問うのはエセ・インテリ的だったなあ。ジャズやオペラが楽しかったし、ジュード・ロウも良かったけど。

*134<347>「60セカンズ」
ドミニク・セナ監督。ニコラス・ケイジ。アンジェリーナ・ジョリー。ジョバンニ・リビシ。
 車泥棒でドジった弟が、あくどい男のために殺されそうになった。そこで足を洗っていた兄が一肌脱ぐことに。実質的に一日で50台の名車を盗まねばならない。昔取った杵柄。別れ別れになっていた仲間がこの荒業に挑戦する。
 期待度は高かったのですが、どうもいけません。一番の見どころは、車泥棒のテクニックでしょうが、そこがしょぼい。60秒で1台いただく名人芸がきっちりと描かれず、人情ドラマが展開しちゃうんだ。アンジェリーナ・ジョリーもなんか不潔っぽくて、魅力半減だなあ。

*135<348>「ルール」
ジャミー・ブランクス監督。ジャレッド・レト。アリシア・ウィット。レベッカ・ゲイハート。
 「ラスト・サマー」のニール・H・モリッツの製作だそうな。とすれば当然、根底には復讐があるんでしょう。
 今回の仕掛けは「都市伝説」。座席の後ろには殺人鬼が潜んでいる。とか。そうした都市伝説連続殺人にきゃあきゃあ騒ぐのを主眼とし、ストーリーはイマイチ。
 しかも、こうしたホラー・サスペンスの基本は主役の女の子が可愛いことです。残念ながら、なんかメンコクナイのだ。そこが魅力半減です。もう少し、明るく怖がって欲しいのに、なんかその恐怖感が伝わらないのだ。
 それでも、まあ音響を含め、ハラハラドキドキは結構楽しめます。

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