某日 札幌・中島公園の北海道立文学館。「川上澄生の世界」展を見る。
文学館常設展アーカイブ企画。
川上澄生(かわかみ・すみお、1895~1972)は日本を代表する版画家のひとり。横浜に生まれ、3歳の時に東京に移ります。青山学院高等科時代に木版画を知ります。母の死などあって、22歳の時にカナダに渡りますが、さらに北へ流浪、アラスカで鮭缶詰工場で働いたりします。その頃から詩も書いています。1年後に帰国した後、栃木県で英語教員などを務めるようになります。本土空襲が激しくなっていた1945年3月、妻の実家のあった北海道・胆振國安平村(現安平町)に疎開し、さらに白老村(現白老町)に移ります。白老からは東へ20キロほどの隣市にある旧制苫小牧中学校(現北海道苫小牧東高等学校)で嘱託教員として美術指導をしています。1949年に栃木に戻りますが、在道中に多くの美術・文学作品を残しています。夫人同士の縁もあって、「原野の詩人」と言われ、札幌に移ってからは編集者をしていた更科源蔵と関わりが深く、更科が主宰した戦後北海道の伝説の随筆雑誌「北方風物」に「ストーブ」「昔噺・金のたまご」の表紙絵などを描いています。
ちなみに、私は1951年白老村(当時)に生まれ、苫小牧中学校の後身である苫小牧東高校に学んでいます。まったくのすれ違いですが、太平洋と樽前山を見て育っただけに、ちょっとだけ親しみを抱く理由となっています。
会場には川上の作品書籍と解題的なパネルがたくさん並んでいるのですが。詩的な英語センスが伝わる絵入りの「変なリイドル」などが丁寧に紹介されていて、面白いです。
Lesson 1 I am a man. (Yo wa danshi nari.)
Lesson 2 She is a nice girl. (Ano ko wa yoi ko da.)
Lesson 3 I love her. (Watashi wa ano ko ni horeta.)
Lesson13 God damn. (Konchikisho.)
今はあまり使わない表現かもしれませんが、いわゆる耽美的な開化調というのか、「異国情趣・南蛮趣味(エキゾチシズム)」に溢れた味わい深い版画世界にホッコリしながら誘引されることでしょう。展示は6月25日まで。
北海道立文学館「川上澄生の世界」展チラシ https://www.h-bungaku.or.jp/exhibition/archive.html#acv01