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北海道文学を中心にした文学についての研究や批評、コラム、資料及び各種雑録を掲載しています

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 見逃しミーハーシネマ館  1999〜2003
  なんというか、映画に嵌まっていた頃があり、雑文を書きまくっていた。

 シネマ・グラフィティ・ノート 2001年 その1  

*1<375>「ゴジラ×メガギラス G消滅作戦」
手塚昌明監督。田中美里。谷原昌介。伊武雅刀。星由里子。
 日本をたびたび襲うゴジラ。東海村の原子炉を破壊された政府は首都を大阪に移転した。しかし、プラズマ兵器の開発の途上、大阪も襲われた。G対策組織はついにミニ・ブラックホールを作り出し、ゴジラを葬り去ることを考えた。姿を現したゴジラ。一方で、ブラックホール実験で歪んだ時空から巨大昆虫メガギラスが飛び出し、渋谷を廃墟とし、ゴジラに迫る。G対策組織と三つどもえの戦いが繰り広げられ、勝つのは誰か。
 こう書くと、なんともすごいあらすじではある。特撮はそれなりによくできているが、この内容ではパラレル日本もリアリティがない。

*2<376>「コヨーテ・アグリー」
デヴィッド・マクナリー監督。パイパー・ペラーポ。アダム・ガルシア。マリア・ペロ。
 ニューヨークはショウビジネスの本場。そこには田舎から才能溢れた若者たちが、スターを夢見てやってくる。彼女らがひとときシェルターとするのがクラブ「コヨーテ・アグリー」。バーのカウンターを舞台に女の子たちがダンス・パフォーマンスを繰り広げる。
 そんな一人にヴァネットがいた。彼女はソングライターを目指しながら人前で歌うのが苦手だった。彼女は夢に向かって飛べるか?
 なんか全体に暗くて不潔っぽい感じがして私にはいけてません。

*3<377>「バトル・ロワイアル」
深作欣二監督。藤原竜也。前田亜季。山本太郎。栗山千明。ビートたけし。
 高見広春の原作を映画化。少年たちが殺し合うということで、R15指定。国会でも議論を呼んだ。
 物語は日本社会は秩序が崩壊。荒れる学校対策として新教育基本法のBR法が成立。全国から選ばれた子供たちは無人島で生き残りゲームを強制される。首に爆破装置を付けられ、最後の一人になるまで殺し合わねばならない。
 この映画には毀誉褒貶がまとわりついている。だが、これはなんともすがすがしいいい作品ではないか。殺し合いなど単なる比喩でしかない。大人の身勝手で競争社会に追いやられた少年たち。彼らが競争社会で傷つき傷つけあいながら、いかに希望を回復するか。そりゃ、愛を信じ自立する以外にないんだぜ、と作品は言っている。
 まさに現在そのものへの痛烈なマニフェストだ。ハッカーの少年は懐かしの「腹々時計」で爆弾を作る。そこにちょっと反体制の匂いがするが、それは素材でしかない。傷つけ合いながらも、生き抜こうとする意志。見事な結末だが、僕は本当はもう少し悲観的である。
 
*4<378>「13デイズ」
ロジャー・ドナルドソン監督。ケビン・コスナー。ブルース・グリーンウッド。スティーブン・カルプ。
 1962年のキューバ危機。ソ連がキューバにミサイル基地を建設したもんだから米帝は一大事。他国には核を平気で向けているのに、自国に向けられると怒る。そのテンヤワンヤの米国政治の舞台裏を描いた。
 主役はジョン・F・ケネディと弟のロバート、首席補佐官のオドネル。彼らは政治的外交的対応で危機突破を考えている。功罪半ばのマクナマラ国防長官もケネディ派だ。それに対して、軍部は空爆、キューバ侵攻をしたくて仕方がない。そのつばぜりあいをソ連や国連を絡めて浮き彫りにする。
 なかなかスリリングで、作品としてはよくできています。政治の力をダイナミックに傳えてくれます。一方で本当に戦争が起こっていたら、ゾッとします。もっともその後、ケネディは暗殺され米国はベトナムに深入りします。それらの犯人は軍産複合体ということになるのでしょうか。

*5<379>「追撃者」
スティーブン・ケイ監督。シルベスター・スタローン。ミランダ・リチャードソン。レイチェル・リー・クック。
 弟が謀殺されたらしい。それに気づいた兄貴は真相を探るべく動き出す。するといるわいるわ。インチキ経営者やら青年実業家やら本ワルのポルノ屋たち。一方、兄貴自身はベガスで取立屋、ボスの女房に手を出す荒れた生活。
 弟の一人娘に「シーズ・オール・ザット」のレイチェル・リー・クック。花にピアスなんかをして、不良っぽいけど純情な娘をさらりと演じています。彼女とスタローンの触れ合いが一つの目玉なのでしょうが、なんともぎこちなくぱっとしません。一種の狂気と義侠みたいのがうまく出せればよかったのでしょうが、なんともぴりっとこない出来上がりです。
 
*6<380>「シベリア超特急2」
MIKE MIZNO監督。水野晴郎。草笛光子。淡島千景。寺島しのぶ。長門裕之。
 第二次大戦前夜の中国・満州。ヨーロッパ情勢を視察した山下奉文陸軍大将は佐伯大尉とともにシベリア鉄道で帰国の途上にあった。
 二.二六事件の青年将校の理解者であった山下には処刑された青年の遺族らから脅迫文が寄せられていた。だが、爆破事件のためにホテルに足止めを食らうことになってしまう。客人は武器ブローカーから女優、名家の婦人、置屋の女将、女医、外交官まで。嵐の一夜、ブローカーは鋭利なナイフで殺された。密室での殺人事件。犯人は誰か?
 監督は語り手に挑戦状を突きつけさせる。犯人を当てて見よ、と。うーむ。この結末は凄い。下手な推理、休むに似たりだ。そりゃ、ないぜ。と思いつつ許してしまう。
 「映画って、いいですね」という水野のメッセージが溢れているからか。脇役の達者ぶりと、主人公のぎこちなさの落差がいい。銀座シネパトス。映画が終わってから拍手と快哉の声が響く作品は、そうない。

*7<381>「弟切草」
下山天監督。奥菜恵。斉藤陽一郎。大倉孝二。松本れい子。minoru。
 長坂秀佳原作。もともとはスーパーファミコンのソフトだったとか。
 本当の父親が死んだことから、突然遺産を引き継ぐことになった女性。彼女と元恋人が残された屋敷を訪ねることに。そこには、花言葉は「復讐」という弟切草が咲いていた。天才画家の父親の秘密に触れていくうちに、二人は恐怖を体験する。
 荒い粒子の映像とコンピュータの駆使が今風か。ただ、フィルターをかけすぎた画面はやや趣味が悪い。結末もオプションありだが、物足りない。二役で頑張る奥菜恵ちゃん。プロモーションビデオを見る感じ。結構可愛いから、そこが観客には救いか。

*8<382>「狗神」
原田真人監督。天海祐希。渡部篤郎。藤村志保。淡路恵子。山路和弘。
 「四国」の坂東真砂子原作。
 こちらも同じような山里を舞台にイヌガミの血を引く女と紛れ込んだ男の恋物語。女は40歳を過ぎ、一人で和紙作りをしている。そこに小学校の教師の青年がやってきたことから、風が騒ぎ出す。二人が恋仲になるに連れて、不審な事故死が相次ぐ。村人たちは呪われた血の一族を追いつめていく。
 時を超えている女は母であり、恋人であり、すべてである。これは共同幻想が疎外した<禁忌>の復讐劇である。坊之宮美希が別存在に変わる瞬間が怖い。この人は本当は死んでいたということに、やっと気が付くわけだ。
 なかなかによくできている。そして共同幻想が死なない限り<禁忌>も死なないという結末もいい。さて、愛する天海祐希である。今回も熱演しながら、どうもエロスが匂い立ってこない。惜しい。

*9<383>「BROTHER」
北野武監督。ビートたけし。オマー・エプス。真木蔵人。寺島進。大杉漣。渡哲也。
 「HANA−BI」でベネチアを制した北野組が日英合作で世界進出。
 組同士の抗争でやむなく殺されたことにして海を渡ったヤクザ山本。米国にいる弟は今はしがない麻薬の売人になっていた。ひょんなことから彼らを子分にし、闇世界に地盤を作ることになる。しかし、かねてからシマを持っているギャングや中国人グループ、イタリア・マフィア。彼らと逃げ場のない激闘に突き進んでいく。まるで死に場所を求めているかのように。
 これは幻想の<家族>の物語である。血のつながった家族ではない、血の薄いものたちの希求する愛である。<兄貴>はさまざまなバリエーションで登場するが、それが本当は関係への飢えであることは誰もが知っている。そこがせつない。寺島進の自決はちょっと象徴的すぎる。
 この映画で、北野武はまたも日本を描いてみせた。それは世界に通用しなくとも刺激的である。だが、私たちにはアジア的過ぎる影絵の世界である。

*10<384>「クリムゾン・リバー」
マチュー・カソヴィッツ監督。ジャン・レノ。ヴァンサン・カッセル。ナディア・ファレス。
 サブタイトルは「深紅の衝撃」だそう。だが、なんだか消化不良だった。
 アルプス山脈の欧州最古の大学村で残虐なリンチを受けた変死体が見つかった。一方、近くの町では20年前に死んだ少女の墓が荒らされ、学校の書類が盗まれた。無関係と思われる2つの事件。その真相を追っていたベテラン警視と新米デカの点と点がつながった。
 犠牲者は加害者でもあったらしい。犯人が示す手掛かりを追っていくうちに、ナチスの優生思想が大学を覆っていることが明らかになる。ジャン・レノとヴァンサン・カッセルのコンビは今一つ。謎解きもなんだか、しっくり落ちない。

*11<385>「ハート・オブ・ウーマン」
ナンシー・メイヤーズ監督。メル・ギブソン。ヘレン・ハント。ローレン・ホリー。マリサ・トメイ。
 ベガスのショーガールの息子としておんなどもに甘やかされて育ったニック。広告会社のやり手だが、マッチョな性格が時代にあわなくなってきた。折も折、彼の上司にはスーパーガールのダーシーがヘッドハンティングでやってきた。焦るニックだったが、ひょんなことから女性の心の声が聞こえるようになった。そこで、女心を聞きながら、逆襲に転じる。だが、おかしなもので、いつしか弱い人間の思いがわかるイイ人になっていく。
 楽しい作品です。でも男にしろ女にしろ何かむず痒い感じがします。こんなに単純にはいかんぜよ、ということでしょうか。
 メル・ギブソンがパンスト穿いて、無駄毛を抜くというのには笑えますが。アステア風に帽子掛けで踊るのもしゃれています。でも、女たちとこんなに簡単にはいかないでしょう。勉強にはなりますが。

*12<386>「ペイ・フォワード 可能の王国」
ミミ・レダー監督。ケビン・スペイシー。ヘレン・ハント。ヘイリー・ジョエル・オズメント。
 ある日、少年は初めての中学校の先生から、「世界を変えること」というテーマを与えられる。父親は行方不明、母親は一生懸命だがアルコール依存症だ。課題を考えるうちに、少年はクソのような社会を変える方法を思いつく。
 すなわち、1人が3人に親切にする。3人はそれぞれ3人に親切にする・・・・というもの。言ってみれば、愛のネズミ講作戦だ。それは失敗したかにみえるが、実は静かに広がっていく。その話題がマスコミに取り上げられたとき、少年を不運が襲う。
 「シックス・センス」の天才子役にアカデミー賞の2人が絡む。監督は「ディープインパクト」 「ピース・メーカー」のミミだ。期待は大きかったのだけれど、このネズミ講物語は大失敗。なんで? というくらい演出がつまらない。世界救済運動なんて、やっぱりいかがわしいカルトだからだ。
 
*13<387>「回路」
黒沢清監督。麻生久美子。加藤晴彦。小雪。役所広司。風吹じゅん。
 ネットワーク社会に於ける人間という情報の戯画。黒沢監督のいつもながらの自意識が目立つ。
 「助けて」「あかずの間」という言葉を残して次々消えていく人たち。あの世がこちらに沁みだしてくるというイメージ。人間なんてコミュニケーション不能なのさ、という懐疑。いっぱい詰め込んで、世界が終わる?
 貧乏くさい怪談だと思う。テーマはいいが、手法が酷く、あまりに日本的光景だろう。
 「ニンゲン合格」「CURE」「カリスマ」と見てきたが、どうも苦手だ。

*14<388>「アンブレイカブル」
M・ナイト・シャマラン監督。ブルース・ウィリス。サミュエル・L・ジャクソン。
 人はいかにしてアメリカン・コミック・ヒーローとなるか? 人はいかにしてアメリカン・コミック・ヒールとなるか? それは自分の居心地の悪さに気づくことによってである。
 「シックス・センス」 のシャマラン監督が再び、観客をあっといわせようとした。而してどうだろう。多分、八割以上の人はそりゃあないぜ、というだろう。これはどんでん返しのないも同然の結末だろう。むしろ同義反復に近い。鉄人がヒーローになるのは当然ではないか。あれだけの緊迫感を持って、このラストはない。

*15<389>「背信の行方」
マシュー・ワーカス監督。ニック・ノルティ。ジェフ・ブリッジス。シャロン・ストーン。
 サム・シェパード原作。
 今は大牧場のオーナーになっている夫妻。いかがわしい私立探偵もどきで、アル中の「ストーカー」中年男。この3人は若いとき、競馬詐欺を働いていた。その重荷がじわーっと効いてきて、アル中男には彼らが陥れた人物への贖罪の気持ちが沸いてくる。
 そこで、一騒動。美人のウェートレスも絡んで、期待を持たせるが。しかし、残念ながら、全くパッとしません。せめて、シャロン・ストーンの肉体美を。だが、こちらも恐ろしいほどに裏切られます。だらりとした結末、なんともガキのままでありゃりゃです。

*16<390>「ふたりの男とひとりの女」
ボビー・ファレリー&ピーター・ファレリー監督。ジム・キャリー。レニー・ゼルウィガー。
 「メリーに首ったけ」のコンビが作ったドタバタ劇。相変わらず差別ネタがいっぱいですが、幼児性も目立ちます。ウンチネタですか。
 18年前に結婚に失敗したことがスティグマになって多人格症になった警察官。いいときはチャーリー。でもある時は性格の悪いマッチョ男ハンクに。そんな彼がアイリーンをニューヨークに送り届けることになった。ところが彼女はなにやら悪徳警官やワルの実業家に狙われていた。追ってを逃れ、ハチャメチャな「ロード・ムービー」が繰り広げられる。
 それにしても、ジム・キャリーは忙しすぎて笑いが追いつかない。性格の分裂にも途中で飽きちゃうのが失敗ですか。相手役のレニー・ゼルウィガー。「プロポーズ」なんかに出ていますね。ナチュラルな感じがいいですね。名前が覚えられないけれど。

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