見逃しミーハーシネマ館 1999〜2003
なんというか、映画に嵌まっていた頃に、ビデオも借りまくっていた。
ビデオ・グラフィティ・ノート 1999−3 33~48
*<33>「沈黙のジェラシー」
ジョナサン・ダービー監督。ジェシカ・ラング。グウィネス・パルトロウ。ジョナサン・シェック。
姑と嫁とのいじめ物語。いやいや男がマザコン。ママはとっても怖い人だったのです。ニューヨークからケンタッキーの牧場へ場面が変わって、のどかになるほど怖くなっていく。でも、義理のばあさんが登場してから謎はすべて解けてしまう。だから、筋書きが見えてしまう。それに男も単純すぎて困る。
パルトロウは魅力的に見えることもあるが、まだストライクゾーンに入ってこない。でも売れっこだ。本当に。
*<34>「クロスゲージ」
デイヴィッド・グレン・ホーガン監督。キーネン・アイヴォリー・ウェイアンズ。ジョン・ボイト。ジル・ヘネシー。
大物実業家の狙撃を依頼された死刑囚のダン。しかし標的と一緒にいた大統領夫人が暗殺されてしまった。極秘任務を依頼した軍人から逆に追われることに。そう「MOST WANTED」にされてしまったのだ。錯綜したからくりの中で、戦いが続く。
とりあえずチェーンアクションが続きます。見どころがいっぱいです。しかし、今ひとつ華がない。なんでかなあ。たぶん色気がどこかで足りないんだなあ。
*<35>「パルメット」
ヴォルカー・ショロンドルフ監督。ウディ・ハレルソン。エリザベス・シュー。ジーナ・ガーション。ロルフ・ホップ。
98年米独作品。ハリーは「主張のない作家」。賄賂をもらわなかったばっかりに汚職の冤罪を着せられ2年間を刑務所で過ごした。その人生を取り戻したいと思っているところに大富豪のマルルー夫人が現れ義理の娘を誘拐して50万ドルを手に入れようと持ちかけてくる。しかし、そこには裏があり、誘拐殺人犯にされてしまう。逃げ道はあるのか。どんでん返しの連続でハッピーエンドになってめでたしめでたしか。
エリザベス・シューのお色気が売りでしょうか。個人的にはジーナ・ガーションに期待してのだが、思ったほど動きなし。もっと大立ち回りがあってもよかったのですよね。
<36>「ガタカ」
アンドリュー・ニコル監督。イーサン・ホーク。ユマ・サーマン。アラン・アーキン。
近未来社会。そこでは遺伝子操作によって徹底的に差別された子供が生まれる。ビンセントは不幸にして劣等遺伝子を抱えており、「適正者」とは認められず。宇宙飛行士の夢も拒まれていた。そこで、闇ルートでエリートの遺伝子を利用、別人になりすましてチャレンジを試みるが。振って沸いて起こった殺人事件で正体が見破られそうになる。
映画はそれほど面白くはない。でも。これって近未来には必ず起きる騒動のように見える。そこがこわい。ワシのように劣等遺伝子の塊にはシンドイ。未来はファシズムしかないぜ。民主主義の崩壊を思うに付け、気分は暗澹となるのだ。
*<37>「タイタニック」
ジェームズ・キャメロン監督。レオナルド・ディカプリオ。ケイト・ウィンスレット。キャシー・ベイツ。ビリー・ゼイン。
タイタニック号の悲劇を題材に、J・キャメロンが愛と運命のドラマを見事に描き出す。もちろん劇場では見ているが、今回はビデオ2巻セットで拝見しました。189分という大作も前編・後編と分けてみると結構楽です。
あらためて見て感じたのはレオナルド・ディカプリオがいいですね。ひ弱な二枚目と思ってみていると、だんだんたくましくなってくるのね。それにケイト・ウィンスレットも表情が豊かでいいですわ。なによりもスケールの大きさ、アドヴェンチャー映画顔負けのスリルの連続。映像の迫力と美しさ、ストーリー展開の隙のなさ。どれを取っても文句ありません。見て損はない映画といえましょう。
たぶんこの映画のラディカルなところは一種の階級性を見事に描き出していることだと思います。まあ、それはどうでもいいことですが。ワシは泣きませんが、2度見ても感動しました。「今を生きる」「どんなことがあっても生き抜くんだ」っていうディカプリオの台詞は胸に残りました。
*<38>「アルビノ・アリゲーター」
ケビン・スペイシー監督。マット・デイロン。フェイ・ダナウェイ。ゲーリー・シニーズ。
ひょんなことから警察に追われてしまった3人組。入った地下の居酒屋で5人の人質を抱えて包囲されてしまう。出口は1つしかない。脱出する道はあるのか? ってなわけで、スリルに満ちた密室劇が展開される。
ネタばらしはだめだろうが、ここでいわれているのは「アルビノ・アリゲーター」。つまり白いワニ。この白いワニは縄張りと自分を守るための生け贄という意味。そこで、白いワニを使った人は「誰もヒーローじゃない」のだ。
小粒な映画。きっと低予算なんだろうな。それでも芝居的な面白さだけは十分。人間ってのは罪深い生き物だと、考えさせられる作品です。
*<39>「ビヨンド・サイレンス」
カロリーヌ・リンク監督。タチアーナ・トゥリープ。シルビー・テステュー。
聾者を両親に持つ女の子が音楽の才能に目覚め成長していく姿を描く。音のない世界とそうでない世界をまたぐ少女の二重性。父親と娘の葛藤。兄と妹の葛藤の再現。愛と別れ、出会い。音楽への情熱。なんとも見事に人生を描き出した。
この少女と父親のやさしさを見て泣かない者はいないだろう。これをメーンテーマとして、それぞれのサブテーマが変奏曲を奏で最後に心温まる交響曲となると言えばいささか大袈裟か。強いて言えば登場する人物がみんな善人であることが、やや気に入らないくらいか。世の中にはもう少し雑音や障害物がある。本当はそこまで踏み込むべきだろうが、それはまた別のテーマである。少女存在の危うさをこれだけ的確に捉え前向きに描き出したことに感動した。
*<40>「アミスタッド」
スティーブン・スピルバーグ監督。モーガン・フリーマン。マシュー・マコノヒー。アンソニー・ホプキンス。
奴隷船「アミスタッド号」から逃げ出したアフリカ人たちの運命の物語。アメリカの国内、スペインなど諸外国の利害がからむ中で勇気ある弁護士たちの闘いを描く。
が、しかし、なんかつまらない。テーマが先にあるのだろうが、肝心のドラマが盛り上がらないのだ。それが2時間半の大作。疲れた。スピルバーグも失敗するのだな。
*<41>「中国の鳥人」
三池崇史監督。本木雅弘。石橋蓮司。マコ・イワマツ。
椎名誠の原作を三池監督が映画化。
ひょんんことから中国・雲南省にいくことになったワダ。すると現地には借金を返してもらいたいヤクザのイワマツが待っていた。その弥次喜多コンビがボロ車に揺られ、徒歩で深山幽谷を超え、イカダに流されてついたところは鳥人伝説の残る村だった。
その鳥人の学校の娘の美しい歌声(アニー・ローリー)に惹かれ、自然な生活ぶりに次第に心を洗われていく2人。そして、自然を守るために鳥人の姿を見せようとするが。
なんということのない物語。しかし、中国の奥地・日本文化の源流ともいえる地域の人々の表情が印象的だ。人間は価値観を変えてしまう瞬間があるような気がしてくる。
*<42>「スフィア」
バリー・レビンソン監督。ダスティン・ホフマン。シャロン・ストーン。サミュエル・L・ジャクソン。
これは、分かり易いおとぎ話だな。むかしむかし、海の底に不思議な家がありました。そこで、なかのいいお友達らが探検に行きました。すると、そこには心に願ったことをなんでも叶える金の玉がありました。みんな素晴らしいと思ったのですが、次々と不幸なことが起こっていきます。その時、気づきました。人間には金の玉はまだ使いこなせないのだ、と。ってなわけだ。
その程度の話をするには、ちょっと長く重苦しい。
*<43>「クロウ 飛翔伝説」
アレクス・プロヤス監督。ブランドン・リー。アニー・ハドソン。マイケル・ウィンコット。
1994年米国。
アメリカン・コミックのヒーローをブルース・リーの息子が演じた。ブランドン・リーも撮影中に死亡したという曰く付きの映画だ。
物語は悪党一味に恋人と一緒に惨殺されたエリックというミュージシャンの復讐劇。彼はクロウ(カラス)の力を借りて冥界から戻ってくる。しかも超人として。そして、虐殺に加担した者たちに返礼していく。
カラスの目と人間の目が交叉している映像が新鮮だ。
*<44>「アンダーグラウンド」
エミール・クストリッツア監督。ミキ・マイノロビチ。ラザル・リストコフスキー。ミリャナ・ヤコビチ。
「黒猫・白猫」でも達者なところを見せたクストリッツア監督の代表作。
1995年、仏・独・ハンガリー合作。
第2次大戦下のベオグラード。ドイツ軍の侵攻に対して、武器商人マルコは地下室に避難民をかくまう。しかし戦争が終わってもマルコはそれを告げず武器づくりを続けさせる。
20年もの戦争! それが信じられようか。だが、スターリン共産主義は70年も続いた。この設定が途方もないことだとは口が裂けても言えまい。なにしろユーゴは国を割り今なお戦争を続けているのだから。
マルコには舞台女優ナタリア、パルチザンの闘士クロが絡む。二重生活の嘘と真実。人間は制度がどうなろうと生きている。制度や体制があるから人間があるのではなく、まず人間ありき。人間こそ価値だ。人間万歳だ。このあほらしいほど、にぎやかな戦争喜劇をそれでも僕らは少し悲しい気分で見ざるを得ないのは、僕たちが依然としてあほらしい現実を生きているからなのかもしれない。
監督の天才的手腕に圧倒された。
*<45>「ブレードランナー」
リドリー・スコット監督。ハリソン・フォード。ショーン・ヤング。ルトガー・ハウアー。ダリル・ハンナ。
1982年米国。
2020年のロサンゼルス。地上には酸性雨が降り、ビルは数百階、その間を空中パトカーが走り回っている。人造人間=レプリカントは地球では使用禁止だが、4人が脱走してきた。デッカードはそのレウリカントを識別して始末する殺し屋=ブレードランナー。悲しくも壮絶なレプリカントとブレードランナーの闘いが始まる。
なんとも近未来の暗さ、管理社会と逸脱者のアナキーぶりが印象的だ。日本語やら中国語やら正体不明の言語が飛び交うのはアジアがアメリカを追いつめた80年代の産物だからか。いや、この未来都市のイメージはちっとも古びていない。どこかで見たことあるぞ、というシーンは実はこの作品がオリジナルなのだ。本当に素晴らしい映像美にしばし言葉を失った。
*<46>「シャイン」
スコット・ヒックス監督。ジェフリー・ラッシュ。ノア・テイラー。アレックス・ラファロウイッツ。
1995年オーストラリア。オーストラリア出身の実在のピアニスト、デイビッド・ヘルフゴットの半生をモデルに描く。
子供の頃から頑固な父親の指導で天才的なピアニストの才能を見せていたデイビッド。コンクールでの活躍が認められ、英国に留学。順調に音楽家の道を歩み出そうとする。しかし、繊細な神経が冒され、精神病院に入ることになった。10数年のブランクを経て、ワインバーでの演奏をきっかけに再起を果たしていく。
これはユダヤ人のスティグマのようなものだ。厳格な父親の家族主義のくびきを脱して自立していく物語でもある。音楽の力の凄さを見事に表現して見せた。「輝けるデイビッド」が精神を病む過程がさりげなく、しかしリアルだ。そして再び輝く瞬間の充実感。少しのムダのないテーマも明確な傑作であった。
*<47>「メン・イン・ブラック」
バリー・ソネンフェルド監督。トミー・リー・ジョーンズ。ウィル・スミス。リンダ・フォレンティーノ。
1997年米国。製作総指揮・スティーブン・スピルバーグ。
エイリアンの地球移住が始まって30年。1500種ものエイリアンが人間になって暮らしている。彼らを監視するのがMIBだ。ある時、「銀河」を狙って、ゴキブリ系のエイリアンがやってくる。容赦なく殺戮を繰り返すゴキブリ男の登場でみんな大騒ぎ。JとKのMIBの2人が漫才コンビさながらのおしゃれな会話を繰り返しながらゴキブリ男を追いつめていく。
スピルバーグさんの趣味そのものか。とにかく、面白い。エイリアン諸君が本当に地球人になってしまっているし、ちょっとしたやりとりが笑わせる。そしてSFXが楽しい。娯楽作そのものだ。
*<48>「ボルケーノ」
ミック・ジャクソン監督。トミー・リー・ジョンズ。アン・ヘシュ。ギャビー・ホフマン。ドン・チードル。ジャクリーン・キム。
1997年米国。
ロスの観光名所ラ・ブレアのタール池から、ある日突然マグマが噴出。溶岩は市街地に流れ込み、さらに地下水路を通って避難所に迫る。ロス郡危機管理局のローク局長は被害を食い止めるべく最前線で指揮を執る。
なんともマグマの姿がなんともリアルである。パニック映画にありがちな葛藤や確執そして和解、英雄的=犠牲的精神。それらがこの作品では嫌みなく描かれているところがいい。黒人住民と白人消防士の対立と敵意、協力と和解くらいがいささか強調されているくらいか。
それにしても休みなくエピソードが見事に続いていく。映画の魅力が満開の傑作といえる。
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