シネマミーハーらくがき帳 1999〜2003
なんというか、映画に嵌まっていた頃があり、雑文を書きまくっていた。
シネマ・グラフィティ・ノート 1999年 その3
*42 「バグズライフ」
ジョン・ラセター&アンドリュー・スタントン共同監督。ディズニー&ピクサー制作。
アリのフリックがいつも食べ物を奪いにやってくるバッタたちに立ち向かう。虫たちの世界の愉快な物語。制作のディズニーはともかく、かのピクサーはスティーヴ・ジョブズが役員をやっている会社のはず。さすがにコンピュータの神様の会社らしく3Dのアニメは素晴らしい。今までの平面アニメでは味わえないリアルさを感じさせます。
ただ内容的にはドジだけど元気な主人公がお姫様に励まされ、仲間たちと助け合って、悪役ホッパーをやっつけるという典型的なお話パターン。
それはまあ平均点的だな。でも登場する虫たちがアニメの力で本当に生き生き描かれている。イモ虫クンは本当にイモ虫だし。美しい蛾のジプシーはなかなか華麗です。
*43 「ベイブ 都会へ行く」
ジョージ・ミラー監督。マグダ・ズバンスキー。ジェームズ・クロムウェル。ミッキー・ルーニー。
世界一の牧羊豚「ベイブ」。彼は農場で幸せな日々を送っていたが、不注意から主人のおじさんは大けが。火の車の農場には銀行屋がやってきて、売り飛ばされるピンチに。そこで、おばさんと一稼ぎするために都会に出たものの、さあ大変。
私やぁ、どうせ豚の虚仮威しの物語となめてかかってました。スミマセン。でも面白かった。よくできている。感心しました。いいですよ。豚君。いい味だしてます。それにオランウータンのセロニアスも。これぞ豚の生きる道。人間の浅ましさをさりげなく教えてくれます。
映画のちょっと濃いめの色がいいな。深く、心に染みる味があって。動物をここまでうまく使うとはなあ。ドラマとしてもよくできています。
*44 「天使が見た夢」
エリック・ゾンカ監督。エロディー・ブシェーズ。ナターシャ・レニエ。グレゴワール。コラン。
1998年のカンヌ国際映画祭で二人は主演女優賞をダブルで受賞したとか。物語はフーテン娘のイザベル(エロディー)となんか不機嫌なマリー(ナターシャ)の人生模様。ひょんなことから知り合い一緒に暮らすことになった2人。まともな仕事もせずに気ままに暮らしている。ある時、マリーが金持ちの遊び人の男に助けられ、恋する。次第にぎくしゃくする2人の関係。
いのちの蘇りに賭けるイザベルと自分をとことん追いつめていくマリー。女たちのおかれている一見自由な生き方が本当は極めて孤独で危ういものであることを映画は切々と伝える。2人の笑顔が輝いているようで、とても寂しいのはかなしくも美しい。
*45 「疑惑の幻影」
ランダル・クレイザー監督。メラニー・グリフィス。トム・ベレンジャー。クレイグ・シェイファー。ヒューイ・ルイス。
敏腕女性弁護士が巻き込まれる富豪の娘殺害事件。どうしょうもない歌手が容疑者。これに対して、検察には司法長官をめざす元夫、大統領候補、さらには怪しげなストーカー男までがずらり。絶対不利な状況を助けるのは相棒の元警官のパソコンマニアのみ。
メラニー・グリフィスは結構、いい味出しています。でも物語がいまいちこなれてないのね。最後の犯人にしたって、わかったようでわからない感じがします。素直に大物が犯人でもよかったような気がするのですが。でも、ダレるところもなく、緊張感持って見られました。
それなりに楽しめる娯楽作ということでしょうか。夢がそこにあるというアメリカって国がよく分かります。
*46 「女と女と井戸の中」
サマンサ・ラング監督。パメラ・レイブ。ミランダ・オットー。
濃いドラマです。オーストラリアのど田舎に父親と暮らすヘスター。そこに家政婦と連れてこられた施設出身の娘キャスリン。レズビアンのような女2人は父親の死後、家屋敷を売って欧州旅行を夢見るが。キャスリンが交通事故を起こし、大金が消えてから2人の関係は狂い始める。
いい映画です。「井戸」が女の生理を象徴しています。封印された井戸に男を投げ込んだ時から、若い女の性が揺れ始めます。この辺が大変よくできています。
でも、結局、これって片思いの映画です。身寄りのない娘がたまたま年増女性を頼って見せただけ。騙されるのは仕方のないことのような気がします。結構印象的なカットが多くあったのが好きです。
*47 「鮫肌男と桃尻女」
石井克人監督。浅野忠信。小日向しえ。鶴見辰吾。真行寺君枝。島田洋八。若人あきら=我修院達也。寺島進。岸部一徳。
すごい。カルトでオタッキー。びしびし来ます。ストーリーはまあ組の金1億円をくすねた鮫肌がトシコ=桃尻を連れて大逃走。これに対してタヌキさんやらヤマダさんやらフリークな面々が大追跡。
ストーリーはどうでもいい。要するにひとつひとつのコント、場面、顔ぶれがとにかくシュール。ナイフ男にして大村昆のオロナミンCの宣伝用のほうろう看板のレアもの収集癖のある岸部一徳。ぎんぎらぎんのジッポ男にして、動物並みの嗅覚を持つ鶴見辰吾など。若人あきらと島田洋八コンビの変態ぶりも最高。小日向しえさんもうぶなホテル従業員からの変身ぶりがセクシー。浅野忠信さんは、やや食われ気味とはいえパンツ一枚で頑張ります。寺島進さんも北野映画同様にナイーブなやくざぶり決まってます。
てなことで、どこを切ってもオタクが顔を出す最高のコミック・ムービーでした。
*48 「パーフェクトカップル」
マイク・ニコルズ監督。ジョン・トラボルタ。エマ・トンプソン。キャシー・ベイツ。ビリー・ボブ・ソーントン。
州知事から大統領を目指す夫婦の奮戦記。ひょんなことから、そのスタッフに加わった黒人運動指導者の孫が冷静な目で追っていく。
いうまでもなくクリントン・ヒラリー夫妻のスキャンダルのカリカチュア。政治の理想と現実。表と裏。建前と本音。マスコミと選挙運動などが丁寧に描かれている。
トラボルタもエマ・トンプソンも結構、いい演技。脇役のキャシーおばさんも味がある。
物語は政治の理想が死に現実が勝つ形で終わる。しょうがない。でも、本当のアメリカの政治はクリントン・スキャンダルの例を見るまでもなく現実がフィクションを超えている。理想主義なんかよりロビイストたちの暗躍ぶりを見るにつけ、とうに理想は死んで利権にがんじがらめになっているのがアメリカの政治ではないか。今ひとつパンチ不足なのは仕方ないか。
*49 「セントラル・ステーション」
ヴァルテル・サレス監督。フェルナンダ・モンテネグロ。マリリア・ベーラ。ヴィニシス・デ・オリヴェイラ。
いい映画です。代書屋のドーラ役のフェルナンダ・モンテネグロが圧倒的にいい。表情が深い。こじれてしまった性格が父親探しの旅をするうちに次第にほぐれていくのがすばらしい。
もっとも一番の感動はリオデジャネイロの中央駅とブラジルの荒涼たる風景かな。これって見たことないぞって風景がいっぱい出てくる。父を探してついに父は見つからず。聖性=無垢なるもの=心を発見する。なんか感動した。
*50 「おかしな二人2」
製作・脚本=ニール・サイモン。ハワード・ドイッチ監督。ジャック・レモン。ウオルター・マッソー。
実はこの作品はパート2であるが、私は最初の作品を見ていない。だから、本当はよくわからないのだ。よって印象批評。セリフにしろ動きにしろ神経質なフィリックス(レモン)とずぼらなオスカー(マッソー)のコンビのドタバタ道中劇は面白い。 特にオスカーの動きの鈍さ、それがなんともいえず人柄というか包容力の大きさを感じさせていい。なんか、こういうオヤジいいんだよな、って感じ。
人生って悪くないよ。結婚? 幸せなのは2年間だけだよ。でも野球をやる以上は出るしかない。パパはおりたけど。いいな。「オッド・カップル」って悪くない。
*51 「ボクらはいつも恋してる!」
ピーター・チャン監督。レスリー・チャン。アニタ・ユン。アニタ・ムイ。チャン・シウチョン。テレサ・リー。エリック。ツァン。
「君さえいれば/金枝玉葉」のパート2。例によって私は第1作を見ていない。しばらく映画を見ていなかったツケは大きい。
サムとウィンが晴れて男と女として生活することになったところから物語はスタート。だけど、ウィンはのびやかに生きたいからサムとすれ違い。そこで、また男装スターとして復帰するが、なにやら大御所のフォンが登場して怪しい三角関係に。仮装パーティーやら映画撮影と現実の二重写しやら見どころいろいろあって楽しい。
レスリー・チャンはカッコいい。アニタ・ユンはキュートだ。
*52 「パッチ・アダムス」
トム・シャドヤック監督。ロビン・ウィリアムス。モニカ・ポッター。フィリップ・セイモア・ホフマン。ボブ・ガントン。ダニエル・ロンドン。
ロビン・ウィリアムスの臭い演技が嫌いな私です。しかし。この映画を見ていて、良かったです、結構、感動しました。何しろ涙腺が弱いもので。
お話は簡単です。自殺癖のある男が精神病院で生きることの意味を発見して医者になろうとします。そこで旧来の軍隊的=権威的な医学制度とぶつかります。でもゴーイングマイウエー。自分の道。死を恐れるのではなく生を高める医療の道を目指していきます。
僕も医者の権威主義が大嫌いです。それだけにパッチ(治し屋?)の気持ちがよく分かります。もちろん臭い場面もいっぱいあります。誇張があります。でも、いいな、と思いました。
女医の卵。モニカ・ポッターさんというのでしょうか。いいです。彼女を見ていて若い頃の自分を思い出しました。僕は男ですが、彼女の気持ちがよく分かりました。不幸な最期が残念です。
*53 「キラー・コンドーム」
マルティン・ヴァルツ監督。ウド・ザメール。ペーター・ローマイヤー。イリス・バーベンバルク。ゲルト・バーメリンク。
凄い映画です。コンドームがペニスを食べてしまうという恐ろしい実話をついに映画化した。はずはないか。まあ、そんなコンドームがあったら怖いですよね。
主人公はシチリア島生まれのマカロニ刑事。彼は頽廃都市ニューヨークでなぜかドイツ語を使って刑事をしている。男色家である。ちびででぶで、たばこが好きである。美男子と愛を交わそうとしたとき、悪魔の毒毒コンドームに片玉を奪われてしまう。怒りに燃えた刑事の執念の真相追跡の孤独な闘いが始まった。
まったく。お見事なB級映画ですよね。テーマは<愛>ですし。神はなぜにチンポコを創ったのかという根源的な問いをしつつ、最後には裁くのは神であり人間じゃない、ってわけであらゆる差別を解き放ってジエンド。
マカロニ刑事のモノローグがハードボイルドのパロディーを2回転くらいさせて冴えています。それにしても、キラーコンドームは怖いのだが、かわいくもあるのだ。惜しむらくは少し厚い?
*54 「原色パリ図鑑」
トマ・ジル監督。リシャール・アンコニナ。アミラ・カサール。リシャール・ボーランジェ。オーレ・アッティカ。ヴァンサン・エルバズ。
パリで失職中の青年エディはひょんなことからユダヤ人の同胞にされる。ビジネスセンスに優れた彼は次第に頭角を現し、成功していく。立ちふさがるのはユダヤ教と異教徒の壁。恋人と宗教を超えて結ばれることはできるのか。
結論。愛はすべてに勝つ。あちゃ。まあ、パリのユダヤ人ってのがどんな感じなのかがなんとなくわかります。成り上がりの物語はちょっとできすぎですが。でも登場する男も女も、みんな結構いいんだなあ。ユダヤも捨てたもんじゃない気がしました。
*55 「マイティ・ジョー」
ロン・アンダーウッド監督。シャーリーズ・セロン。ビル・パクストン。レード・セルベッシア。ナビーン・アンドリュース。
母親を邪悪な密猟者に奪われてしまったゴリラと少女の物語。1匹と1人は長じて巨大なゴリラとなり、もう1人は天使のような森の美女になる。心を通わせ合い、仲良しのコンビだったが。迫る新たな密猟者から逃れるためカリフォルニアの動物センターに出てきたが、復讐に燃える悪人の罠にはまって、町をパニックにしてしまう。
かつてのカルト・ムービーのリメーク版だそう。その辺は関係なく面白い。
動物学者の遺児として育ったジル役のシャーリーズ・セロンがいい女なのだ。なんか凄いキリッとした美女でありながら、エッチぽいのだ。物語はアメリカ的で、すったもんだの末、ハッピーエンドになる。やっぱりディズニーだな。
美女が主役なようで、結局、野獣が主役なんだ。男中心思想がじわーっと漂ってくる。だいたいマイティ・ジョーとジルを危機に引きずり込んだ張本人はアメリカ人のグレッグなのに、そこがほっかむりされている。
文明が自然を破壊している。そこを知っていながら、都市から自然への回帰を訴える。マイティ・ジョーは荒ぶる自然ではなく、聖なる自然に戻されてしまう。この映画のイデオロギーはそこまでだ。エコロジスト反動のレベルを超えられない。
*56 「シン・レッド・ライン」
テレンス・マリック監督。ショーン・ペン。ニック・ノルティ。ジム・カヴィーゼル。ジョン・キューザック。
戦争映画でありながら、人間の愛夢とか業とか、自然とかについて哲学者のように問い語る。映像の詩人なんだ。
第2次大戦での太平洋の要衝ガダルカナル島を巡る米国軍と日本軍の攻防。激しい戦闘シーン。挿入される美しい自然。愛する妻とのひとときの思い出。戦争は人間を狂気にする。それでも自分を守るにはどうすればいいのか。青春が人生で一番輝かしい時だなんて言ったのはだれだ。自分はいつのまにか老いてしまっている。それでも自分は自分でありたい。
考える戦争映画である。かのプライベート・ライアンは壮絶な戦争をリアルに再現して見せた。テレンス・マリックは戦争を通じて至高なるものへの渇望を描いたといえる。
*57 「グッドナイトムーン」
クリス・コロンバス監督。ジュリア・ロバーツ。スーザン・サランドン。エド・ハリス。
原題は「STEPMOM」。いわゆる継母だよな。でもこの怪しげなアルファベットの邦題はなんなんだろう。よくわからんぞ。要するに、ステップマザーが前妻や子供たちとどうやってうまくやっていくか物語。
スーザンとジュリアの2人。対照的な2人がうまい味を出している。弁護士のエドもいい。子供たちもいい。キャストは実質5人だけだが、それがみんなぴったりと自分の役を決めて見せた。
先妻は若い恋人(後妻)に抵抗していたが、癌に冒されていると知り、子供たちを任せようとする。私は過去を面倒みてきたが、未来はあなたが、って。いい話? ううん。これって、やっぱり若い者の勝ちってやつかなあ。女の確執も、彼女たちが自立する時代を迎え、今後はこんなふうになるのか。
オレはちょっと甘いと思う。男としてはそうあってもらいたいが。
*58 「コキーユ 貝殻」
中原俊監督。小林薫。風吹ジュン。益岡徹。深水三章。吉村実子。金久美子。
私の耳は貝の殻 海の響きを懐かしむ。−ジャン・コクトーだって。
三〇年ぶりの同窓会で芽生えた直子と浦山の純愛。二人ともまっすぐ。ちょっといない。でもオレは信じる。こういう人がいることを。風吹ジュンって昔不良系だったよな。でもすっかりいい。
でも本当は二人の凡庸な恋なんてどうでもいい。オレが感心したのは、リストラ対象になった黒田課長。組合運動で会社にたてつき、中間管理職になったかと思うとリストラの対象に。飲み屋でゲロ吐き暴れ。岡林信康を懐かしむ。
で、一人じゃなにもできないので一番の子分の浦山を道連れにする。そのうち乱れ乱れ、ついに自殺未遂。で、枕元で語るのは佐世保でのエンタープライズ闘争。そして三里塚闘争。恋人とのすれ違いの思い出。これってオレたちだよな。
団塊の世代に向けた30年ぶりの熱い恋のやり直しへのアジテーション。そうだ。2000年は僕らが大学入学以来ちょうど30年だ。恋をもう一度。
*59 「故郷」
向井寛監督。淡島千景。尾美としのり。三井ゆり。大滝秀治。
いわゆるロードムービーってやつですか。沖縄の76歳のお婆さんが自分の故郷・国後島に向けて、いきなり走り始めてしまう。するとみんなの支援の輪ができちゃって。感動するらしい。うーむ。
いいたいテーマはよくわかる。戦争はいやだってのもよくわかる。
しかし、なんというかハチャメチャな映画だなあ。
*60 「愛のトリートメント」
ジョナサン・ジェムズ監督・脚本。ジュリー・デルビー。ジョージナ・ケイツ。パム・ギドレイ。ダニエル・ボールドウィン。パトリック・デンプシー。
エロチックな映画ですが、実はセックスシーンはなし。娼婦の話なのに、ドロドロってのはなくファンタスティック。
これは凄い映画だなあ。たぶん現在はセックスが幻想であることを見事に描き出している。イメクラとテレクラとか。ワシは行ったことがないが、それに似ている。きっと。
3人の娼婦。コスチュームがいい。それぞれに個性的だし。
最後はハッピーエンド? 旦那に連れ戻される女が旦那に愛を感じるなんて。ちょっと甘いというか女に失礼だな。男はマッチョから遠く離れたところにいるわけで、幻想とセックスして癒されるってのはなんとも哀しいことだ。
*61 「エネミー・オブ・アメリカ」
トニー・スコット監督。ウィル・スミス。ジーン・ハックマン。ジョン・ヴォイト。リサ・ボネット。
人権派の平凡な弁護士がある日突然、NSA(国家安全保障局)のスパイ(あえてゴロツキども、と呼ばせていただこう)に追われる。全く、スパイ権力どもは宇宙から地上から弁護士ディーンのプライバシーをすべて奪い、家族を友人を抹殺破壊していくのだからドウショウモナイ。孤立無援だわな当然。それでも元NSAのおっさんが出てきてかろうじて反撃に成功する。
映画は言ってみれば情報管理社会に対する徹底的な批判のプロバガンダだわな。でも、それを息も切らせぬエンターテインメントに仕上げてしまうのだからアメリカさんは凄い。その意味でアメリカ帝国主義も凄いけど、そこで踏ん張っている左翼ってのは根性が違うな。
これはオタクの世界でもあるな。正面から闘っているおっさんたちはまじめだけど、技術屋どもときたらホントに端末そのもの。これはいけません。何がって、高度情報管理社会ってやつが。
とにかく物語はノンストップで最後まで展開されます。面白い。怖い。文句なしにエンターテインメントでげすね。大作。「シン・レッド・ライン」にしろこのエネミーにしろ凄い。いろいろ考えさせられました
*62 「隣人は静かに笑う」
マーク・ペリントン監督。ジェフ・ブリッジズ。ティム・ロビンス。ジョーン・キューザック。ホープ・デイビス。
大学でテロリズムについて教えているファラディはある日、大けがをした少年を助ける。それが向かいに暮らすオリバーの息子であった。それをきっかけに、近所つきあいの始まる2人だったが、手紙をきっかけにファラディは隣人夫妻が何かを隠していることに感づく。それからが怖い。何せ隣人は全くファラディ以外には隙を見せない。そうこすしているうちに彼女は殺され、我が子は人質に取られてしまう。最期はなんとも悲惨なり。ミイラ捕りがミイラになってしまうのだから。結果的にだけど。
敵はなかなか頭がいいのだ。主人公がいなくなってしまうのだし。もちろんアタシはテロリズムには反対です。反権力ですけど。基本的には階級的な大衆的な暴力以外は認めていないの。この隣人の気持ちはわかるけど、支持はできないわけ。
でも、なんちゅうかイカンなあ。何がってうまく言えないけれど。その意味で気持ち悪いというか、こういう隣人とはお友達になりたくない。権力も怖いが、全く大衆的基盤を持たない反権力怨念というのも怖い。これって中間主義的な総括ではあるけれど。
*63 「バンディッツ」
カーチャ・フォン・ガルニエ監督。カーチャ・リーマン。ヤスミン・タバタバイ。ニコレッテ・クレビッツ。ユッタ・ホフマン。ヴェルナー・シュライヤー。
最高に面白い。見終わったら、イカシタゼって拍手したくなること請け合い。ピカレスク・ロードムービーっていうのかムジーク・キネマというのか。
4人の女囚が刑務所バンド「バンディッツ」(悪党たち)をつくり、ひょんなことから脱走。獄中から送ったテープがいつのまにか大ヒット。逃走中の4人はスターに。追われているうちに、ブラッド・ピットのようなにいちゃんを人質にしちゃったり。もうイケイケの逃亡劇になってしまうのです。
ルナの男まさり?の可愛さ。エンジェルの色っぽさ。マリーとエマのきりりとした姿。痛快で、本当に気持ちが良くなります。
スーザン・サランドンとジーナ・デイビス、それにブラッド・ピットが絡んだ「テルマ&ルイーズ」を連想しますね。映画の色がよく似ています。
橋の上でいつのまにかコンサートが始まり、みんなが踊りだしてしまうシーンなんか、ちょっと「踊るマハラジャ」というか「ウェストサイドストーリー」のノリでもあります。追いつめられて海へダイビングするシーンはヤッタって感じ。ファイナル・コンサートをやって船に向かって走るシーンもカッコイイ。女の子もたぶん共感すると思いますが、男のワタシもこの4人は最高です。
*64 「バンディッツ」
カーチャ・フォン・ガルニエ監督。カーチャ・リーマン。ヤスミン・タバタバイ。ニコレッテ・クレビッツ。ユッタ・ホフマン。ヴェルナー・シュライヤー。
2回目です。なんど見ても、いい映画です。それぞれのシーンがとっても印象的なのです。セリフも素敵です。
マリーがハーモニカを吹きながら、橋の上で絶命するシーン。悲しみを乗り越えて、車に油をかけて「火葬」にするシーン。残った3人が肩を組みながら、川に向かってダイビングするシーン。空からの俯瞰の美しさ。ラストの船に向かって走って行く姿。幻のマリーと3人の手が一つになる瞬間のフィナーレ。「FUR M」って誰?
ちなみに、サントラ盤を2548円で購入してしまいました。4人が女っぽいと同時に、フィジカルな部分で男っぽいのにはちょっと圧倒されました。
これからは女の時代だな。やっぱり。
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