シネマミーハーらくがき帳 1999〜2003
なんというか、映画に嵌まっていた頃があり、雑文を書きまくっていた。
シネマ・グラフィティ・ノート 2000年 その5
*58<271>「守ってあげたい!」
錦織良成監督・脚本。菅野美穂。宮村優子。杉山彩子。白川みなみ。宮下順子。古尾谷雅人。
くじらいいく子の人気コミックの映画化。自衛隊に入ったオチこぼれ娘たちの青春群像。
いや、アタシは菅野美穂ちゃんのファンですからねえ。作品がどんなにつまらなくても、自衛隊のプロパガンダであろうと見ますよ。盛り上がらないんだなあ。
この種の物語って、ダメな人間がいかに再生していくかがテーマですよね。でもそれを見事に裏切って、人間的に成長するのかしないのか。わからんのだ。「自衛隊はこれで大丈夫か」って? いやあ、だめでしょう。それがせめてもの救いか。観客にはやはりその筋の制服系も見え、防衛庁の協力ぶりがわかります。
天才・菅野美穂。全く天真爛漫にやっています。菅野ファンのオタクにはたまりませんね。
*59<272>「スクリーム3」
ウェス・クレイブン監督。ネブ・キャンベル。デイビッド・アークェット。コートニー・コックス。
例によって騒がしいホラーの完結編?です。
シドニーはウッズボロー事件を忘れるべく山中に暮らしているのですが、ハリウッドがマネッコ映画を作りはじめたところに、またしても連続殺人事件が発生。ロスに降りてきた彼女は再び事件の標的にされるというわけです。
今回のテーマは人間は過去に復讐される−です。怖いことは怖いのですが、大したことはありません。できれば、もう少しお色気場面を増やすとかしなければもちませんね。もともと青春映画なのですから、「ワイルド・シングス」的にしなければだめでしょう。トリックもホラー度も中途半端で、寂しいものがありますね。
*60<273>「U.M.A/レイク・プラシッド」
スティーブ・マイナー監督。ビル・プルマン。ブリジッド・フォンダ。オリバー・プラット。
メイン州の湖に不思議な生物が住んでいました。それを知っているのは、湖畔で暮らすおばあさんだけだったとさ。ところがある時、湖底を調査していた人間が襲われたことから警察や学者や森林監督官やら変な男やらがやってきて大騒動になりました。そして、そこに集まった人たちは謎の生物を探しながらお互いに心をうち解けあっていくのでした。めでたしめでたし。そんな物語です。
監督官には惚れるニューヨークの博物館の学者にブリジッド・フォンダ。変な男にオリバー・プラットが扮しています。これはホラーなのか、アドベンチャーなのか、ラブコメディーなのか。なんかホームドラマみたいと言ったら誉め過ぎか。
*61<274>「奇人たちの晩餐会」
フランシス・ヴェベール監督。ジャック・ヴィルレ。ティエリー・レルミット。フランシス・ユステール。
おバカさんの中のおバカさんを晩餐会に集めて、おバカぶりを笑ってやろう。上流階級のお遊びに、フランスの大蔵省に勤めるマッチ棒細工男が招かれることになった。招待主のピエールは大喜びだったが、ゴルフのスイング中にギックリ腰に。晩餐会は断念したが、家にやってきたピニヨンと話をしているうちに、大騒ぎに。
バカを笑っている人間が次第にバカになっていく。ここに真実を知る恐ろしさ。でも大バカはやっぱり大バカ? とにかく笑えてしまいます。見ているうちに次の笑いが沸いてきます。
人間喜劇にして、こりゃ、舞台劇ですね。ピエールのリビングで繰り広げられるネバーエンディング・トラブル。不幸のメビウスの輪っていう奴でしょうか。そして、大団円と思えた瞬間の大どんでん返し。脚本も役者も本当にいいですね。もう少し女優陣も暴れて欲しいのですが、ともかくバカの主人とバカの掛け合いが最高です。
*62<275>「NYPD15分署」
ジェームズ・フォーリー監督。チョウ・ユンファ。マーク・ウォルバーグ。
ニューヨーク市警15分署で、チャイナタウンの事件を担当するチョウ・ユンファ。そこに新人の白人刑事としてマーク・ウォルバーグがやってくる。ユンファのチェン刑事はチャイナタウンのボスとつきあいがあり、裏も表も知り尽くしている。だが、それはFBIもにらむ黒い交際らしかった。
友情と疑念の間を、非情な銃弾が飛び交うハード・ボイルド。なかなか期待して見たのですが、なんか締まらないな。この2人の刑事に本当の友情は芽生えたのか。なんか疑わしいんだな。説得力が足りないっていうか。
香港映画なら、男たちの友情と非情をもっとうまく描くだろうなあ、って気がした。
*63<276>「スリー・キングス」
デイビッド・O・ラッセル監督。ジョージ・クルーニー。マーク・ウォルバーグ。アイス・キューブ。
1991年湾岸戦争。あれってなんだったんだ? 我々もそう思ったが、兵士もメディアもそう思った、らしい。
そこで、最後の戦いを始めたのが特殊部隊のゲイツ少佐。狙うはフセインがクェートから強奪した金塊の山。それに3人の兵士が従って、本部に内緒で独自作戦を敢行した。
彼らがそこで見るのは、イメージではない本当の生身の戦争だった。これは戦争映画らしくない。くそリアリズムを振っ切っている。でも、それでいて戦争の真実をたぶん描いている。
それにしてもアメリカをはじめ、フセイン、ルイ・ヴィトン、ベンツ、トヨタ、日産などすべてのブランドを茶化しているのが画期的だ。結局はアメリカ万歳となるのは仕方がないが、戦争の批評としては異色だ。
*64<277>「真夏の夜の夢」
マイケル・ホフマン監督。ルパート・エベレット。キャリスタ・フロックハート。ソフィー・マルソー。
うーむ。これはおとぎ話だな。なんとも美術も音楽が素晴らしいし、映像がとってもしっとりしている。そして、豪華なキャスト。ソフィー・マルソーはいいしミシェル・ファイファーも。それでいて、なんでこんなに退屈なのか。恋のから騒ぎも、この程度ではなんとも魅力不足なのだろうか。いろいろ勉強にはなるけれど。
*65<278>「ロルカ、暗殺の丘」
マルコス・スリナガ監督・脚本。アンディ・ガルシア。イーサイ・モラレス。ジェローン・クラッペ。
スペインの革命詩人ロルカは内戦のスペインで殺された。誰が彼を殺したのか。
スペインからプエルトリコに脱出した青年リカルドがその真相を探るため故郷グラナダに戻る。しかし彼を待ち受けていたものは、フランコ独裁の政治的な影たちであった。
再会した人たちは誰もがロルカを崇拝するか畏敬していた。その一方で、誰もが手を汚していた。真実に最も深く傷つくのはリカルド自身だった。
この映画はロルカの物語というより、人間が全体主義に囚われた時の怖さを鮮やかに映し出している。そして体制が変わったときの人間の変節をも。絶対の悪も善もない。だからこそ人間は自分を、個を失ってはならないのだ。作品以上に、その思想的メッセージが心に響いた。
*66<279>「コヨーテ」
ジョン・G・アビルドセン監督。ジャン・クロード・ヴァン・ダム。パット・モリタ。
これは誰が見ても西部劇である。しかも映画の中でもサムライ映画の「用心棒」が出てくるほどだから。言ってみれば「荒野の用心棒」である。
元戦士だったエディが先住民の血を引く旧友のジョニーに赤いバイクを届けに行った。しかし、そこで見たものは無法者が我が物顔で支配する荒廃する町だった。エディは2つのグループを対立させて、町に平和を取り戻そうとする。
ヴァン・ダムは頑張っていますが、今ひとつ脚本にアクというか粘りが足りません。娯楽作であることは間違いありませんが、盛り上がりません。
*67<280>「はつ恋」
篠原哲雄監督。田中麗奈。原田美枝子。平田満。真田広之。佐藤允。
母親が25年前に書いたまま出されなかった一通のラブレター。それを見つけた娘が、母親の初恋の相手を探す冒険を始める。そして見つけた男に母親との再会を勧める。
うーむ。もう少し頑張れば面白い作品になったのだと思うな。
17歳の娘は恋に破れて、母親の初恋に興味を持ち始めるのだが。もっぱら探偵ごっこに熱中してしまう。母親の初恋とパラレルに、娘の恋愛を転がすとテーマが重なり合っていくはず。それが冒頭のシーンで娘のすべてが終わってしまうからなあ。母親と同じ相手を好きになるというわけでもなさそうだし。
田中麗奈ちゃん。きれいでも可愛くもないけど、いいぞ。佐藤允さんも田舎の白タクおじさんを好演しています。失敗といえば真田広之さん。背景を捨象したのでしょうが正体不明でした。
*68<281>「ボーン・コレクター」
フィリップ・ノイス監督。デンゼル・ワシントン・アンジェリーナ・ジョリー。クイーン・ラティファ。
ジェフリー・ディーヴァー原作の映画化。事件捜査中に事故に遭い寝たきりの警官ライム。彼が科学捜査をリードしてNY市警の堅物の掣肘を超えて真実に迫る。
奇妙な連続殺人。骨を抜かれた犠牲者たち。古びた証拠に残された犯人からのメッセージ。これをいかに解き明かすか。
もちろん動けぬライムを助ける人間が必要で、手足となるのはアメリアという女性警官。彼女がいいんだなあ。アシュレイ・ジャッドに似ているし。ジョン・ボイトの娘さんでアカデミー助演女優賞を「17歳のカルテ」でもらったそうです。デンゼル・ワシントンも皮肉屋の作家にして警官役を見事に演じています。
犯人がなあ、ちょっと意外だったというか。困る感じがしました。もっと殺人にのめり込んでいる人物でいて欲しかったのですが。
*69<282>「グリーンマイル」
フランク・ダラボン監督。トム・ハンクス。デヴィッド・モース。マイケル・クラーク・ダンカン。
スティーヴン・キング原作。
死刑囚が通る最後の緑色の廊下が通称グリーンマイル。そこで看守主任として勤めていたポール・エッジコム。彼は多くの人間を電気椅子に送ってきた。だが、いつまでも心に残っているのが1935年のこと。
ひどい尿路感染症に悩んでいた年。一人の黒人の大男の死刑囚ジョン・コーフィがやってきた。彼は2人の女の子をレイプし、殺したという。だが、暗いところが怖いというコーフィは優しく、不思議な癒しの力を持っていた。ポールはコーフィの冤罪を信じていたが、処刑を避けることはできなかった。
いい映画ですが、長い映画です。癒されるようですが、私は見終わって熱が出て寝込んでしまいました。トホホ。人間は愛を利用して人を殺し合っている。それが訴えているポイントです。そして差別問題が色濃く出ています。黒いからってぶち込まれ、フランスだからっていじめられ、先住民だからってからかわれます。その痛みが伝わってきます。人間の仕方なさ。その上で、人間はどこかで捨てたもんじゃない、そういっている気がします。
いずれにしてもよくできたお話でしょうか。もちろん、「ショーシャンクの空に」のほうが傑作です。
*70<283>「マーシャル・ロー」
エドワード・ズウィック監督。デンゼル・ワシントン。アネット・ベニング。ブルース・ウィリス。
アラブ人テロリストによって、爆破事件が相次ぐニューヨーク。FBI捜査官のハバードはその対策の先頭に立っている。そこにアラブと通じているらしいCIA工作員のエリース、軍を動かすタヴロー将軍が現れる。
彼らに振り回されながら、ハバードはいかに事件を解決するか。カメラは戒厳令下のアラブ人狩りを非情なまでに描きだす。ここには軍事国家に対する批判が徹底的に込められている。その意気やよし、というべきだが、作品の出来はよくない。
ニューヨークに下された戒厳令が、今ひとつピンとこない。なんか締まらないのだ。果たして戒厳令を指揮する将軍に、FBIやCIAが簡単に逢えるものか。どうもうまくかみ合わないのだ。残念である。
*71<284>「フェリシアの旅」
アトム・エゴヤン監督・脚本。ボブ・ホスキンズ。エレイン・キャシディ。アルシネ・カーンジャン。
フェリシアはイギリスに行くと行ったまま消息を絶った恋人を追ってやってきた。だが、バーミンガムの町には男の姿はなかった。工場の近くで親切にしてくれたチビデブの中年男に親切にされた。彼の案内でフェリシアの旅の旅は続くが、次第に危険な匂いが漂いはじめていた。アイルランド娘の運命は?
主演のボブ・ホスキンズがいいです。つまり、人生失敗しちゃった男を見事に魅せます。そして、その人生がいかにきれいに見えても砂糖菓子のような壊れ物であることを。
フェリシアはどうだろう。彼女はアイルランドの持つ運命に、すなわち彼女自身に無頓着すぎるように見える。その無垢さがついに男の狂った人生に終止符を打たせるのだが。面白いとは思わないが、不思議な気持ちになった作品だ。
*72<285>「スペーストラベラーズ」
本広克行監督。金城武。深津絵里。安藤正信。渡辺謙。大杉蓮。浜田雅功。中山仁。
閉店間際のコスモ銀行に3人組が強盗に入った。幼なじみの3人はいつの日か、パラダイスのビーチに行くことを夢見ていた。銀行で人質を取ったが、中にいたのは結婚直前の女子行員やらテロリストたち。彼らをまとめてスペーストラベラーズをデッチあげ警察との戦いが始まった。3人はパラダイスを掴むことができるか。
ご存じ「踊る大捜査線 THE MOVIE」の本広監督がメガホンを取った。「踊る」同様に小さな部分に徹底的にこだわっている。小話やらエピソードが機関銃のように繰り出す。そのリズムが次第に心地よくなってきたら、作品は成功か。
ソバカス顔の深津絵里が可愛らしく感じる自分って何なのか、困った。テロリストの渡辺謙に、ひと暴れしてもらいたかったのだが。
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